アンドロメダ座R星R Andromedae
星座
アンドロメダ座
見かけの等級 (mv )
5.8 - 15.2[ 1]
変光星型
ミラ型 [ 1]
位置元期 :J2000.0
赤経 (RA, α)
00h 24m 01.9473999328s [ 2]
赤緯 (Dec, δ)
+38° 34′ 37.326131071″[ 2]
視線速度 (Rv)
-6.40 km/s[ 2]
固有運動 (μ)
赤経: -17.242 ± 0.491ミリ秒 /年 [ 2] 赤緯: -30.066 ± 0.457 ミリ秒/年[ 2]
年周視差 (π)
4.1281 ± 0.4616ミリ秒[ 2] (誤差11.2%)
距離
1,100 光年 [ 注 1] (350 パーセク [ 3] )
アンドロメダ座R星の位置(丸印)
物理的性質
半径
440 R ☉ [ 4]
質量
1 M ☉ [ 4]
表面重力
0.003 G[ 5] [ 注 2]
スペクトル分類
S3,5e - S8,8e (M7e)[ 1]
光度
6,300 L ☉ [ 3]
表面温度
2,600 K [ 4]
金属量 [Fe/H]
-1.00[ 5]
他のカタログ での名称
BD +37 58, HD 1967, HIP 1901, HR 90, IRC +40009, SAO 53860
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アンドロメダ座R星 (アンドロメダざRせい、R Andromedae、R And)は、アンドロメダ座 にあるミラ型変光星 である。ミラ型変光星の中でも、変光の変動幅が非常に大きいものの一つである。スペクトル型 はS型 に分類され、そのスペクトル には酸化ジルコニウム の吸収帯が目立つ[ 6] 。また、ポール・メリル がS型星のスペクトルからテクネチウム の吸収線を発見した時の観測対象の一つであり、恒星 内部で元素合成 が起こっている証拠と考えられている[ 7] [ 4] 。アンドロメダ座R星は、SH(水素化硫黄)分子 が宇宙 で検出された最初の例でもある[ 8] 。質量放出率は高く、一年当たり8 × 10 −6太陽質量 程度の質量 を失っているとみられる[ 3] 。
発見
アンドロメダ座R星は、1859年 にボン天文台での観測 によって発見されたとみられる[ 9] [ 10] 。アンドロメダ座で最も明るい長周期変光星 である[ 6] 。
変光
AAVSO の実視等級 データに基づく2012年 から2017年 にかけてのアンドロメダ座R星の光度曲線 。
アンドロメダ座R星は、変光星 としてはミラ型に分類され、変光周期は平均で409日であるが、周期には多少の変動がみられ、周期の長さとその次に来る極大時の明るさとの間に、非常に良い相関があることで知られる[ 11] 。変光星総合カタログ では、明るさの変化は5.8等 から15.2等となっているが、極大光度は周期毎に変化し、極大時の見かけの等級 の平均は6.9等で、9等級程度までしか明るくならなかった極大もある[ 1] [ 9] 。極大光度が明るい時の極小からの変化幅は非常に大きく、9等級以上明るくなることがある[ 6] 。極大光度だけでなく、光度曲線 の輪郭も変化する。光度変化は、極小から増光する時の方が、極大から減光する時よりも速い。
特徴
スペクトル
アンドロメダ座R星のスペクトルは、S型に分類され、ミラ型星の多くが分類されるM型とは異なる特徴を示す。M型星では、酸化チタン (TiO)分子の吸収帯が非常に顕著であるのに対し、S型星ではTiO分子の吸収帯は弱く、代わって酸化ジルコニウム(ZrO)分子による吸収が強い。また、希土類 が豊富に存在する[ 7] 。スペクトル型は、S3,5e - S8,8eとされ、変光に伴うスペクトル型の変化がみられる[ 1] 。",5"や",8"といった表記は、S型星のスペクトルの分類に独特のもので、コンマ の後の数字が、ZrO分子吸収帯とTiO分子吸収帯における吸収の相対的な強度を表し、数字が大きい程TiO分子の吸収が弱く、ZrO分子の吸収が強くなっている[ 12] 。また、接尾辞の"e"が示す通り、アンドロメダ座R星のスペクトルには輝線も検出されており、カリウム やルビジウム の共鳴線での輝線が目立つが、変光の周期によっては輝線がみえないこともある[ 11] [ 13] 。
紫外域 でのスペクトルは、M型星と大差ないが、テクネチウムの吸収線が強い[ 7] 。近赤外線 スペクトルでみられる吸収線の中には、光度極大直後に2つの成分がみられるものがある[ 14] 。2つの成分が示す視線速度 は、波長の長い方の成分が、単一の吸収線と同じで、波長の短い方の成分は、それよりもおよそ秒速20km青方偏移 している。この速度差は、脈動に伴う光学的に厚い 層の運動によるものとみられ、時間が経過すると共に差が小さくなり、やがて1成分に戻る[ 4] [ 11] 。赤外線のスペクトルでは、SH分子の成分が検出され、天体におけるSHの検出はこれが最初の例である。SHがみつかったのは、1977年 にキットピーク国立天文台 の4m望遠鏡で観測したスペクトルだが、当初SHは気付かれず、2000年 の検証で確認された[ 8] [ 15] 。
構造・物理量
アンドロメダ座R星は、他のミラ型星と同様に、漸近巨星枝(AGB)星 である[ 3] 。AGB星は、主に炭素 と酸素 からなる核 と、外層大気の間に、ヘリウム が燃焼する殻がある。内部ではs過程 による元素合成が起こり、汲み上げ効果 によって生成された元素が表面に浮上することで、特異な組成 を示すAGB星が現れる[ 16] 。AGB星は基本的に、低温で光度 が高い赤色巨星 で、アンドロメダ座R星の場合、典型的な有効温度が2,600K 、光度が太陽 の6,300倍と推定される。質量 は太陽 と同程度だが、半径 は太陽 の400倍以上に膨張しているとみられる[ 4] [ 3] 。
脚注
注釈
^ 距離(光年 )は、距離(パーセク )× 3.26 で計算。有効数字2桁。
^ 出典での表記は、
log
g
[
cgs
]
=
0.39
{\displaystyle \log g[{\mbox{cgs}}]=0.39}
出典
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関連項目
外部リンク
座標 : 00h 24m 01.9473999328s , +38° 34′ 37.326131071″