Self Control (TM NETWORKのアルバム)
『Self Control』(セルフ・コントロール)は、日本の音楽ユニットであるTM NETWORKの4枚目のアルバム。 1987年2月26日にEPIC・ソニーからリリースされた。前作『GORILLA』(1986年)よりおよそ半年ぶりにリリースされた作品であり、作詞は小室哲哉、神沢礼江、小室みつ子が担当、作曲は小室および木根尚登が担当、プロデューサーは小室および小坂洋二が担当している。 レコーディングは全て日本国内のスタジオにて行われ、アルバム前半にはロックやダンス・ミュージックを意識したアップテンポな曲、後半にはバラードをメインとしたスローテンポな曲を収録している。 先行シングルとして「All-Right All-Night (No Tears No Blood)」、「Self Control (方舟に曳かれて)」がリリース。本作リリース後に「Fighting (君のファイティング)」がシングル「Get Wild」のB面曲として収録された。 オリコンチャートは最高位3位、1987年度年間ランキングで29位となった。 背景前作『GORILLA』リリース後、TM NETWORKは「TM NETWORK TOUR '86 FANKS DYNA☆MIX」と題したライブツアーを、6月10日の静岡市民文化会館から7月18日の中野サンプラザまで13都市全15公演にて開催した。その後、8月23日にはよみうりランドEASTにて「TM NETWORK FANKS "FANTASY" DYNA-MIX」と題した野外ライブを開催した。このツアーと野外ライブの模様を収録したライブ・ビデオ『FANKS "FANTASY" DYNA-MIX』は12月1日にリリースされた。 同年11月21日には先行シングル第一弾となる「All-Right All-Night (No Tears No Blood)」をリリース、11月29日、12月7日にはイベントライブ「YAMAHA X-DAY」、12月1日には「SPECIAL LIVE」をマリアクラブにて開催、12月21日にはTBSテレビ開局35周年記念イベント「ANNIVERSARY ROCK FESTIVAL」に参加した。 1987年に入り、2月1日には先行シングル第二弾となる「Self Control (方舟に曳かれて)」をリリース、2月11日から12月20日までファンイベント「FANKS SUMMIT」が7都市において開催された。 録音自分自身がプロデュースワークとして、プラスアルファの部分を引っ張り出せるようになっていったのは、このあたりで覚えていきましたね。
ぴあMOOK TM NETWORK 30th Anniversary Special Issue 小室哲哉ぴあ TM編[2] レコーディングは1986年より音響ハウス、スマイルガレージ、スタジオセディック、CBSソニー信濃町スタジオ、CBSソニー六本木スタジオにて行われた。前作まで西門加里の名で作詞を担当していた小室みつ子は本作より本名名義に変更した。 小室は本作を「新曲によるベストアルバム」を意識して製作したという。サウンドのコンセプトは「『GORILLA』+『RAINBOW RAINBOW』」であり、ただ作りが厚いだけでなく、ライブでも再現・演奏が可能な音色を目指した。小室はそれ以外は何も用意しないでスタジオに入り、どんどん頭の中に浮かんでくるものを形にすれば良かったため、悩まずに速く終わった[3]。レコーディングの後半に至っては、7曲を7日で仕上げる程にスムーズに進んだ[4]。 楽曲を制作する途中で歌い方・アレンジ・宣伝スタイル等の方向性ができて[3]、小室は「自制心」を考えながら制作していたが、小室みつ子が「時にはそれを破ってタイミングやチャンスを掴まなければいけない」という内容の歌詞を書いたため、次第に「守る」と「破る」がアルバムの2本の柱となった[5]。後に小室はこのことを「『昔は歌詞は基本的に音の世界のサポートになればいいと思っていたが、本作で音以上に歌詞がイニシアティブを握る場合もある』と歌詞に対する考え方が確実に変わった」と振り返っている[6]。対して木根は速くできなかったが、勢いで押し通した[3]。宇都宮は、息苦しさを感じさせる声にならずに、普通の声に聞こえるように神経を使った[3]。 音色の作り方は「演奏した時に楽器から出た音色そのもの」より、「演奏した時に出てきた残響音・音の空間」をいつもより意識した[7]。 ピアノパートは全て小室による生ピアノをKurzweil 250で一度サンプリングした後の素材を使用した[8]。 アルバムに先駆け、2月1日に同名のシングル「Self Control (方舟に曳かれて)」が発売されたが、「Self Control」「Don't Let Me Cry」「Fighting (君のファイティング)」「Spanish Blue (遙か君を離れて)」「Here, There & Everywhere (冬の神話)」を宇都宮がいたく気に入ったため、どの曲を先行シングルにするかで議論があった[9]。「Self Control」は全くシングルを意識して作っていなかったが、当時の音楽雑誌の編集者がこの曲を聴いて、「これシングルにいいんじゃない?」と言った一言で決まった[10]。 音楽性小室は「ビートルズのアルバムの構成、曲の流れ、サウンド面からの影響が反映されている」と称している[11]。1曲目から5曲目まではアップナンバーを、6曲目から10曲目まで『Spanish Blue』を除いてバラードを配置している[3]。 このアルバムは疾走感があるんですね。10代でも20代でも多感な期間を走り抜いている人たち、何か走ってる人たち。ちょっと行き急いでいるというか。そこからセルフコントロールという言葉が生まれて、タイトルにもなったんだと思います。
ぴあMOOK TM NETWORK 30th Anniversary Special Issue 小室哲哉ぴあ TM編[2] 1曲目「Bang The Gong (Fanks Bang The Gongのテーマ)」はライブを想定して製作された[2]。2曲目「Maria Club (百億の夜とクレオパトラの孤独)」は福岡に存在したディスコマリアクラブでのイベントに参加した際に製作された[2]。3曲目「Don't Let Me Cry (一千一秒物語)」の曲の構成に関して小室は「TMっぽい手法」と発言している[2]。4曲目「Self Control (方舟に曳かれて)」のタイトルは渡辺美里が出演していた深夜ラジオ番組内にて受験生に対し「セルフコントロール」という言葉を発した事から名付けられた[2]。曲調に関して小室は「メッセージ性は強いけど、ロックンロールの汗とは違うタイプの汗をかける」と表現し、同グループならではのロックを表現した曲になったと述べている[2]。5曲目「All-Right All-Night (No Tears No Blood)」もまた小室は「TM NETWORK風ロックンロール」と表現し、ブルー・ノート・スケールが使用されている事も特筆すべき点であると述べている[2]。6曲目「Fighting (君のファイティング)」は曲先行で製作された曲であり、木根が製作するバラードに比べて「木根さんほど優しいバラードにはならない」、「バラードなのにメロディが強い」と小室は述べている[2]。7曲目「Time Passed Me By (夜の芝生)」はデイヴィッド・フォスターからの影響が強く、小室は作曲した木根が喜びそうなアレンジを目指したという[2]。8曲目「Spanish Blue (遙か君を離れて)」は疾走感を重視した曲であり、この曲に限らずスタジオミュージシャンの力量によって本作は成立している事を小室は述べている[2]。9曲目「Fool On The Planet (青く揺れる惑星に立って)」は10cc、ケイト・ブッシュ、マイク・オールドフィールド、山下達郎などからの影響で小室のコーラスは24回多重録音したものが使用されている[2]。10曲目「Here, There & Everywhere (冬の神話)」は小室が中学生の頃に自宅のエレクトーンで製作した曲である[2]。 音楽誌『別冊宝島1532 音楽誌が書かないJポップ批評53 TMN&小室哲哉[ポップス神話創世]』にてライターのともえりょうのすけは、本作の音楽性に関して「シンプルなサウンドとティーンを励ますような歌詞」と指摘した[12]。 プロモーション本作に関するテレビ番組出演としては、1987年2月21日に中京テレビ音楽番組『5時SATマガジン』(1981年 - 1993年)に出演し「Self Control」を演奏した他、2月25日にはフジテレビ系音楽番組『夜のヒットスタジオDX』(1985年 - 1989年)に初出演し「Self Control」を演奏、2月27日にはフジテレビ系バラエティ番組『オールナイトフジ』(1983年 - 1991年)に出演し「Maria Club」、「Come on Let's Dance」、「Self Control」を演奏、3月19日にはフジテレビ系音楽番組『財津和夫のPOPS探偵団』に出演し「Come on Let's Dance」、「Self Control」を演奏した。 この当時のTM NETWORKはメジャーなテレビ番組には出演しない方針を取っていたが、同時期に人気が急上昇したロックバンドBOØWYが数回出演したことから、『夜のヒットスタジオDX』に出演することとなった。 アートワークこの頃にBOØWYに関する話がTM NETWORK側にも入ってくるようになり、同バンドの登場には「何かとんでもないバンドが出てきたぞ」と周囲が色めき立つ状態であったという[2]。小室曰く「ポップでカッコよくて洗練されていて。ビジュアル面とか」と表現する程の影響があり、同バンドに対しては強い対抗意識を持ち、「少なくとも追いつかなきゃ」という感覚を持っていたと述べている[2]。 この作品あたりから、デビュー以来、三原色や明るい色合いのビジュアル、ポップな路線から、モノトーンを基調としたビジュアル、黒づくめを基調したファッションに変わる。小室は襟足を伸ばしたヘアスタイルで氷室京介を意識したビジュアルとなる。 この作品のジャケットは当時ソニーのグラフィック部門に所属していた高橋伸明が担当しており、写真を反転したものが使用されている[2]。本作品のアートもモノクロームを基調とし、その他の色はロゴにパープル、イエローを使ったのみとなっている。小室はこのジャケットに関して「渾身の作品」と評価している[2]。また、このジャケットでは木根尚登がサングラスをはずしている。 歌詞カードには以下のようなメッセージが載っている。 For the fourth album If you cannot dance when you feel like, and if you cannot cry when you need, you should look into your own mind. You will find it controlled by something. What's the something…? See. There are many things well controlled by some powers on the earth. Such as controlled air, controlled electric, controlled money, and so on. But what about mind? What makes you stop dancing? What makes you stop crying? What makes you stop laughing? Nobody can control your mind but yourself. That's the "Self-control". "Self-control" means to hide feelings and to cut desires. "Self-control" is necessary indeed. But sometimes, it keeps you away from the truth that you really want to know. Because when you selfcontrol, you might give up, or lose something important. You might give up even your dreams. Our smart fans, Now you understand what this album's title means. "Self-control" is a kind of the antithesis. So,when you listen to our fourth album, set your mind free from "Self-control". Express as you feel. Do as you like. Carry on your dreams. And we hope our music "The FANKS" will help you do it. Thank you. ツアー本作リリース後に3月10日の新潟市音楽文化会館から5月20日の神奈川県民ホールまで、25都市全28公演におよぶライブツアー「TM NETWORK TOUR '87 FANKS! BANG THE GONG」を開催した。このツアー中にリリースされたシングル「Get Wild」がオリコンチャートで9位となり、TM NETWORKとして初のヒット曲となった。6月24日には初の日本武道館公演として「TM NETWORK FANKS CRY-MAX」と題したライブイベントを開催した。 批評
チャート成績オリコンチャートではLP盤が最高位3位、登場回数25回、売り上げ枚数10.0万枚、CT版は最高位5位、登場回数25回、売り上げ枚数は6.1万枚、CD盤は最高位5位、登場回数27回、売り上げ枚数は10.1万枚となり、売り上げ枚数は累計で26.2万枚となった。この結果により、シングルよりも一足先にオリコンベスト10内に初めてチャートインした作品となった。 収録曲
CD
曲解説
※2曲目と5曲目の冒頭部分に於いて前の曲の終わりが聞こえたり次の曲の冒頭部分が欠けたりする旨がブックレットの曲目の欄に表記されている。 スタッフTM NETWORK参加ミュージシャン
スタッフ
リリース履歴1987年2月26日にEPIC・ソニーより、LP、CT、CDの3形態でリリースされた。 その後も1991年9月5日、1996年6月17日、2000年3月23日とCD盤のみ再リリースされ、2004年3月31日には完全限定生産盤のCD-BOX『WORLD HERITAGE DOUBLE-DECADE COMPLETE BOX』に紙ジャケット、24bitデジタルリマスタリング仕様で収録された。 2007年3月21日には単独で紙ジャケット、デジタルリマスタリング仕様でリリースされ[26]、2013年2月20日にはデジタルリマスタリング仕様でBlu-spec CD2にてリリースされた。
脚注
外部リンク
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