IPAフォント
2009年(平成21年)公開の、IPAexフォントVer.001以降およびIPAフォントVer.003以降は、オープンソースの定義に合致しているライセンスでライセンスされている。 種類IPAフォントIPAフォントは以下の書体で構成されている(括弧内は英語環境での表記)。
TrueTypeアウトラインのOpenTypeフォントであり、JIS X 0213:2004に準拠している。ただし、一部のOSで正常に認識されないという問題があったためにVer.003.02からはフォントファイルの拡張子が".otf"から".ttf"に変更されている[2]。 なお、2008年(平成20年)2月にリリースされたバージョン 002 まではTrueTypeフォントであり、ビットマップフォントのデータを含んでいた。また次の「IPA UIゴシック」が含まれていた。
IPAexフォント2010年2月26日には、「IPAexフォント」(IPAex明朝、IPAexゴシック)が公開された。TrueTypeアウトラインのOpenTypeフォントである。 固定幅と変動幅のフォントを分離していた従来のIPAフォントとは異なり、日本語文書作成時の慣例に沿って、和文文字(仮名、約物、漢字)を固定幅、欧文文字を変動幅として単一のフォントに統合されたのが特徴である[2]。初期状態では和文は等幅だが、対応アプリケーションではOpenTypeのレイアウトタグで和文も変動幅(プロポーショナル幅)に切り替えることができる。 Unicodeの異体字セレクタであるIVS(Adobe-Japan1コレクションの一部)にも対応しており、JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形(いわゆるJIS90の字形)を、Ver.002.01の時点で352文字サポートしている。また、Ver.003.01ではIPAexフォントに収録しているCJK互換漢字93文字にSVSを実装した[3]。 IPAmj明朝フォント2011年10月には、「IPAmj明朝フォント」が公開された。TrueTypeアウトラインのOpenTypeフォントであり、文字情報基盤整備事業の文字情報基盤 文字情報一覧表(MJ文字情報一覧表)にある、58,862文字に及ぶ漢字のグリフが収録されている。 異体字セレクタのIVSを利用することで、Moji_Johoコレクションにある異体字約1万通りが利用できる。2023年現在Linux、macOS、Windowsの標準のテキストアプリケーションがIVSをサポートし、LibreOffice WriterやMicrosoft Wordのような文書編集アプリケーション、一般的なウェブブラウザ等でもIVSが利用可能である。 IPAはこのフォントを「人名の表記等で、細かな字形の差異を特別に使い分ける必要のある業務等での活用を想定」しているとしており、一般的な用途には前述のIPAexフォントの使用を推奨している。 2017年12月には、ISO/IEC 10646(UCS)の第5版とIVDの新版が発行され、文字情報基盤整備事業のすべての漢字の規格化が完了した[4][5][6]。2018年1月にはこれらの規格に対応したVer.005.01がリリースされた。なおこのバージョンでは、変体仮名についてもUnicode 10.0で定義された符号位置に基づき符号付けが行われている[7]。 2024年9月30日には、行政事務標準文字に対応した「DWPI明朝」が「IPAmj明朝フォント」から派生する形で公表されている[8]。 「DWPI明朝」は、「IPAmj明朝フォント」をベースに、デジタル庁が作成した「追加文字行政事務標準明朝フォント」を追加したうえで、デジタル庁が作成した「行政事務標準当用明朝フォント」と互換性を持たせたものである。 概要IPAフォントは株式会社タイプバンクがIPAに納入したもので、フォントデザイナーの林隆男によってデザインされたTB明朝・ゴシックがベースとなっている[9][10]。 開発の背景2003年11月28日、情報処理推進機構の前身である情報処理振興事業協会は無償使用可能な日本語フォント一式の入札公告を行った[11][12]。 2004年、IPAの2003年度オープンソフトウェア活用基盤整備事業「オープンソースGISプラットフォームの開発」[13]の成果物であるGRASS GIS、MapServer、PostGISに添付される形でIPAフォントが公開された[14]。当初のライセンスでは、再配布に当たっては、このフォントがIPAフォントであることを明示する必要があり、またその派生物を改変し再配布する場合にも適用された。IPAフォント自体の単体配布は認められておらず、IPAフォントが含まれているソフトウェア(GRASSなど)に同梱して配布する必要があった。なおIPAフォントは利用範囲について明記されていないが、GRASS開発元であるオークニーの担当者はGRASS以外からの利用についても問題ないとの見解を示している[15]。 単体配布版2007年10月1日、一般利用者向けにIPAフォント単体の無償配布が開始された。新たに定められた一般利用者向けの使用許諾契約書(エンド・ユーザ・ライセンス)の条件では、(商用・非商用を問わず)そのままの形でフォントファイルの複製・再配布が可能となったものの、フォントのデザインを変更するなどの改変は認められていなかった[16][17]。つまり、GRASSなどの成果物に添付されたフォントは改変したものを再同梱し配布することが可能だが、単体配布版については不可だった。 IPAはその後、2008年10月に「IPAフォント使用許諾契約書の改訂作業および英語版作成作業」事前確認公募を行い、ライセンスの改訂作業をおこなった[18]。 OSI認定ライセンス版2009年4月20日、IPAフォント Ver.003が配布開始された[19][9]。この版から、オープンソースの定義に合致しているとOpen Source Initiativeに認定された「IPAフォントライセンス」 [20] が適用された。 同ライセンスでは改変の条件として、派生物にはIPAの名称を使用してはならない、オリジナルのIPAフォントに戻せる方法を提供しなければならない、といった制約を課している[21]。 Linux ディストリビューションでの収録などDebian GNU/Linuxまず、2009年5月、Debian GNU/Linux不安定版の non-free セクションに単体配付版が収録され配布されるようになった[22]。2011年2月現在、IPAフォントはテスト版や安定版においても公式な配布が行われている。JIS X 0213:2004 版以外に、一部グリフが異なる JIS X 0208:1997 版も用意されている。さらに、IPAexフォントの配布が追加されている。Ubuntuで作られたTakaoフォントも入っている。 FedoraFedora 11よりオープンソース版がipa-*-fontsの名称のrpmパッケージで収録されるようになった[23]。デフォルトではインストールされずyumなどを使いユーザーが任意でインストールを行う。 UbuntuUbuntu 10.04 以降の日本語ローカライズ版においては、IPAフォントから派生した「Takaoフォント」がインストールされている。 8.04 (Hardy Heron) 以前はUbuntuの日本語ローカライズ版においてIPAフォントがデフォルトで収録され利用可能であったが、8.10 (Intrepid Ibex) から日本語フォントは「VLゴシックフォントファミリ」が標準となり、IPAフォントはデフォルトでは収録されなくなった。これは、当時のIPAフォントが単体での改変・再配布を認めないことが理由であり、利用する場合はセットアップヘルパなどを通じてユーザ自身でインストールする必要があった[24]。 その後オープンソース版がリリースされたことにより、Ubuntuのリポジトリからインストールできるようになり、Ubuntu Japanese Teamで再び日本語標準フォントとしての採用が検討されたが、そのままでは「一部のアプリケーションで半角幅の文字が全角幅で表示される」「日本語変換の未確定文字列に下線が表示されない」などの問題があり、改変したフォントの再配布にあたってはライセンスの制限で「IPAフォント」の名称が使えないため、IPAフォントの採用そのものはまたも見送られることとなった。代替策として同プロジェクトは自身で派生フォント「Takaoフォント」の開発・保守を行うことにした。[10] 派生フォントTakaoフォントUbuntu Japanese Teamが開発・保守を行っている。名称はIPAフォントのベースであるTB明朝・ゴシックのデザイナー林隆男に由来する。2010年2月15日に最初のリリースが公開された[10]。 MigMixフォント・MiguフォントM+ FONTSにIPAゴシックのグリフを加えた、「MigMix」「Migu」フォントがある[25]。 →詳細は「M+ FONTS § 派生フォント」を参照
脚注
関連項目
外部リンク
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