関西空港線
関西空港線(かんさいくうこうせん)は、大阪府泉佐野市の日根野駅から同府泉南郡田尻町の関西空港駅に至る西日本旅客鉄道(JR西日本)の鉄道路線(幹線)である。 概要大阪湾の泉州沖に浮かぶ関西国際空港への空港連絡鉄道である。日根野駅で阪和線から分岐し、大阪方面から同線を経由して空港アクセス列車が乗り入れている。全長3,750 mの関西国際空港連絡橋を渡るりんくうタウン駅 - 関西空港駅間は、ホーム部など両駅構内の一部を除き南海電気鉄道(南海)空港線と線路を共用している。JR西日本のアーバンネットワークの路線に含まれており、ラインカラーは同社のコーポレートカラーである青(■)が設定されている。路線記号はS[4]。 全線の約33.7 %が海の上を通っており、日本国内では瀬戸大橋を渡る本四備讃線、当線と線路を共用する南海空港線、関西国際空港と同じく海上に建設された中部国際空港の空港連絡鉄道である名鉄空港線と共に、海の上を通る区間が全線の4分の1 (25 %) 以上ある数少ない鉄道路線である。 阪和線の本線(天王寺駅 - 和歌山駅間)から分岐している鳳駅 - 東羽衣駅間の支線は阪和線の一部であるが、本路線は独立した路線である。 南海が管轄しているりんくうタウン駅をのぞき、全区間をJR西日本の近畿統括本部が管轄している。また、全線が旅客営業規則の定める大都市近郊区間の「大阪近郊区間」およびIC乗車カード「ICOCA」エリアに含まれている[5]。 路線データ
沿線概況
起点の日根野駅を出て線内唯一の踏切である日根野南一踏切を過ぎると、左側に吹田総合車両所日根野支所を見ながら高架線に入り、右側に大きくカーブをしながら[2]阪和線の上り線と大阪府道大阪和泉泉南線を乗り越え、2つ並んだため池の植田池と穂波池を渡ると、地平の国道481号および高架の関西空港自動車道が左後方から近づいてきて並走を始める。この右カーブの途中(ため池を渡る高架橋上)には、架線の吊架方式がシンプルカテナリー式から高速走行に適したコンパウンドカテナリー式に切り替わるセクションがある。 穂波池を過ぎてから南海本線と交差する約300m手前まで、戦時中に存在した佐野陸軍飛行場(もとは明野陸軍飛行学校佐野分教所)の跡地を走る。飛行場跡地には戦後に整然と区画された農地と住宅地が広がり、大阪府道和歌山貝塚線(熊野街道)の東側は滑走路跡と平行した区画になっている。また、熊野街道の南側は移転前の蟻通神社の広大な旧社地でもある。 やがて国道26号を越えるとさらに高度を上げ、南海本線の高架を高々架で乗り越えると、左前方にはりんくうプレジャータウンSEACLEの大観覧車の全景が、右前方にはりんくうゲートタワービルの全景が見え始める。高架のまま徐々に高度を下げながら、右側から近づいてくる南海空港線の上下線に挟まれて並走を始めたあたりで旧海岸線を越え、埋立造成されたりんくうタウンに入り、島式2面4線のりんくうタウン駅に到着する。 南海との共同使用駅であるりんくうタウン駅は内側2線をJRが、外側2線を南海が使用しているが、同駅を出ると両社の線路が合流し、大阪湾を渡る2層構造で、在来線の鉄道橋としては最長の関西国際空港連絡橋の下層を轟音を立てながら渡る。関西国際空港島に入ると高度を下げ、大きく左にカーブしながら島内アクセス道路の間にある掘割部分を進み、南海の線路が左側へ分岐して終点の関西空港駅に着く。
運行形態早朝・深夜の一部の列車をのぞき、日根野駅から阪和線天王寺方面へ直通運転が行われている。 特急列車→詳細は「はるか (列車)」を参照
関西国際空港と大阪・京都方面を結ぶ特急列車として「はるか」が運転されている。東海道本線(JR京都線)・大阪環状線・梅田貨物線・阪和線を経由して京都駅(一部列車は琵琶湖線野洲駅) - 関西空港駅間で1日30往復。終日1時間あたり概ね上下各2本運転されている(2022年11月1日時点[10])。1994年9月4日に運転を開始した。日中時間帯は天王寺駅 - 関西空港駅間を無停車で運行、りんくうタウン駅は全列車通過し[注 2]、日根野駅は朝の京都行きと夕方以降の関西空港行きのみ停車する。 快速・普通列車(シャトル)終日にわたり関西国際空港と大阪方面を結ぶ快速列車として関空快速(平日朝の上りのみ直通快速)が運転されている。ほとんどの列車が阪和線を経て大阪環状線に直通し、天王寺駅から先は西九条駅 - 大阪駅 - 京橋駅 - 天王寺駅のルートで大阪環状線を1周するが、朝・夜の一部列車は大阪駅・京橋駅発着や、大阪環状線に直通しない天王寺駅(阪和線ホーム)発着となる。 普通列車は吹田総合車両所日根野支所の入出庫列車を旅客扱いした線内完結の列車で、朝に関西空港行きが、深夜に日根野行きがそれぞれ2本運転されているのみである。旅客案内上は「シャトル」として案内されている[注 3]。 快速・普通列車(シャトル)とも全列車が線内の各駅に停車する。全列車が4両編成または8両編成の運行で、女性専用車両の設定はない。 関西空港線が開業した1994年6月15日から同年9月3日までは、暫定的に天王寺駅 - 関西空港駅間を結ぶ阪和線直通の快速と、日根野駅 - 関西空港駅間の普通が上下各33本運転されていた[11]。関西国際空港が開港した同年9月4日以降は快速に代わって、関空快速が大阪環状線または関西本線(大和路線)JR難波駅 - 関西空港駅間で運転を開始した。関空快速に加えて、1995年4月20日からは関空特快「ウイング」が運転されていたが1999年5月9日で運転を終了した。2008年3月15日のダイヤ改正により、関空快速のJR難波駅発着が廃止されて日中は全列車が大阪環状線へ直通するようになり、平日の朝ラッシュ時には直通快速も運転を開始した。 このほか、1995年12月から1999年1月までは臨時列車として姫路駅 - 関西空港駅間で特別快速「ウエスト関空」も運転されていた。 利用状況2017年度の1日あたりの平均利用者数は33,792人である[12]。年間の利用者数は1996年度の約943万人をピークに減少し、重症急性呼吸器症候群 (SARS) の発症が確認された2003年度で一度は下げ止まったものの、リーマン・ショックと新型インフルエンザの流行が重なった2009年度は約649万人となった。その後は格安航空会社の就航や訪日外国人旅行客の増加により関西国際空港の利用者とともに増加し、2019年度は過去最多となる約1253万人であった[13]。新型コロナウイルス感染症が流行した2020年度は過去最少の約395万人、2021年度はそれに次いで少ない459万人であった[13]。 南海空港線と比較した場合の2019年度のシェアは約51.0%で、関西国際空港のアクセス全体としてはJRが約40.3%、南海が約38.7%、リムジンバスが約19.8%、旅客船が約1.2%となっており、JRの利用者数は開業当初の1994年度をのぞいて最も多い[13]。
平均通過人員各年度の平均通過人員(人/日)は以下のとおりである。
使用車両全列車が吹田総合車両所日根野支所に所属する電車で運転されている。関空快速・直通快速・シャトルには223系(0・2500番台)と225系(5000・5100番台)が、特急「はるか」には281系と271系が使用されている。 開業時から定期列車はすべての旅客車両が当線向けに新造された車両で運行されており、103系や113系などの国鉄型車両をはじめ、当線開業以前より阪和線で運行されていた車両や他路線からの中古車両は当線で運行されたことはない。 なお、2024年9月に行われたツアー団体列車にて、営業運転では初の「WEST EXPRESS 銀河」(即ち国鉄型車両117系)の関西空港線乗り入れが実現した[25]。 事業用車両としては検測用の気動車(キヤ141系とDEC741形)が入線することがある。また、かつては検測用の国鉄型車両(マヤ34形客車、443系電車)も関西空港線を検測していた。
運賃制度全線で加算運賃が設定されており、全乗車区間の営業キロ程に応じて算出した運賃額に関西空港線の乗車区間に応じて以下の金額を加算する(2019年10月1日改定時点)[26]。
南海と線路を共用しているりんくうタウン駅 - 関西空港駅間の運賃は、JR・南海どちらを利用しても同額の370円であり、りんくうタウン駅から関西空港駅への普通乗車券であれば南海の乗車券でもJRの列車に乗車することもできる。 なお、電車特定区間ではないため、電車特定区間と通しで乗車する場合でも幹線運賃が適用される。2025年4月1日より全線が電車特定区間となる予定[27]。 歴史
駅一覧
日根野駅と関西空港駅はJR西日本の直営駅である。りんくうタウン駅は南海電気鉄道の管轄駅であるが、JR西日本交通サービスに業務委託されたみどりの窓口も設置されている。みどりの券売機の設置はされていない。 脚注注釈出典
参考文献
関連項目外部リンク |