打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(うちあげはなび したからみるか よこからみるか)は、1993年にフジテレビで放送された岩井俊二監督のテレビドラマ作品。またそのドラマを基とする1995年の映画作品や2017年のアニメ映画作品。 概要本作品はフジテレビのオムニバステレビドラマ『if もしも』の一篇として1993年8月26日に放送された(9月2日放送予定だったが8月26日放送予定だった作品が見送られたため1週間繰り上げて放送された)。同年、テレビドラマとしては異例の日本映画監督協会新人賞を受賞している。1995年に再構成され劇場公開された。 当時は若手のテレビドラマ監督・脚本家であった岩井俊二の評価と知名度を一気に上げ、映画製作に進出させるきっかけとなった作品である。その映像は、色調の調整などを使ってフィルムらしく見せる手法(フィルム効果、あるいはF効果と呼ばれる)を使って作成されており、これも当時のゴールデンタイムのテレビドラマとしては非常に珍しかった。 ヒロインの及川なずな役のオーディションで奥菜恵とともに最終選考に残ったのが伊藤歩であり、後に『スワロウテイル』に主演し岩井作品の常連となる。 「東日本大震災により大きな被害を受けた本作のロケ地と東日本復興への願いをこめて」と、2011年7月22日から8月31日まで岩井俊二の公式サイトにて、無料で動画配信された[1]。 あらすじ小学生の典道と祐介は仲の良い友達で、2人とも同級生のなずなの事が好きだった。しかしなずなの両親が離婚し、彼女が母親に引き取られて2学期から転校することになっているとは、2人には知るよしもなかった。親に反発したなずなは、プールで競争する典道と祐介を見て、勝った方と駆け落ちしようとひそかに賭けをする。勝ったのは祐介か?典道か? この物語は勝負の結果が2つ存在し、その時点から物語がAパートとBパートの2つに分かれ、展開する。
音楽使われている楽曲は、全曲REMEDIOS(麗美の別名義)によってこの作品のために書き下ろされている。 特に、主題歌として使われた「Forever Friends」は、作品のクライマックスとなるシーンで使用されていることもあり、放送直後からフジテレビにはこの楽曲のCD化の問い合わせ・要望が多くあったというが、放送時点ではCD化されておらず、1996年に発売されたCD『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? Soundtrack』に、放送から3年を経てようやく収録された。後にアニメ映画でもカバーされたバージョンが挿入歌として使われている。 撮影地この作品の撮影はプロデューサーの原田泉がこのドラマのプロットを読み、この町以外にないと断言した千葉県海上郡飯岡町(現在の旭市)で実際に行われた。また、ロケは飯岡町以外に千葉県海上郡海上町(現在の旭市)、旭市の隣の市である銚子市でも行われており、子供たちが通う小学校は銚子市立豊岡小学校で当地の生徒をエキストラに撮影された。 特に、典道となずなが電車を待つシーンで使われた飯岡駅、典道の自宅として使われた釣具店などは、放送後数年間に渡り、この作品のファンが訪れる姿が見られたという。この地は、この作品の大ファンである山崎貴が監督して2000年に公開された映画『ジュブナイル』の舞台にも使用された。 『if もしも』との関係この作品が放送されたテレビ番組である『if もしも』は本来、主人公の選択によってその後のストーリーがどう変化するかを見せるドラマシリーズであり、どちらかが主人公の空想であってはいけない、というルールがある。その意味では、この作品のシナリオは厳密には番組のルールから逸脱しており、『if もしも』側のスタッフは不満を示したといわれる。 また、岩井俊二が作成した初期の脚本段階での原題は『少年たちは花火を横から見たかった』であったが、撮影前に『if もしも』側のスタッフの強い意向により、現在のタイトルに差し替えとなった。これは、各エピソードのタイトルは「〜するか、〜するか」という形で統一するというルールが番組にあったためである。 このあたりのエピソードについては、1999年に発売されたドキュメンタリーDVD『少年たちは花火を横から見たかった』内でも詳しく触れられており、2017年6月には初期プロットを基にした岩井俊二の小説『少年たちは花火を横から見たかった』が角川文庫から発売された。 キャスト
スタッフ映画
1995年8月12日にテレビドラマ版からオープニングやドラマシリーズ全体のストーリーテラーであるタモリの出演シーンをカットし映画として再構成されたバージョンが劇場公開された。 配給は日本ヘラルド映画。 アニメ映画
同名タイトルのアニメ作品が、2017年8月18日に全国約300スクリーンで公開。総監督は新房昭之、脚本は大根仁が担当[6]。「小学生だとアニメとして芝居をさせにくい」という新房の判断で、主人公たちは中学1年生に変更されている。岩井俊二も打ち合わせに参加しており、時間が巻き戻る「もしも玉(映画スタッフ間の通称)」は岩井のアイデアである[7]。 あらすじ(アニメ映画)海辺の町、茂下(もしも)町。8月1日は中学校の登校日で、夜はお祭りと花火大会がある。その日の朝、中学1年生の及川なずなは海辺で不思議な「玉」を拾う。登校したなずなは担任の三浦先生に母親からの手紙を渡す。手紙は母親の再婚により夏休み中に引っ越しするという内容だった。 島田典道はクラスメイトの安曇祐介から、なずなに告白したいとふざけ半分で打ち明けられる。二人がプール掃除に行くと、水着姿のなずながいた。3人は50メートルプールで競争し、先にゴールした祐介は、なずなから花火大会に誘われ、夕方5時に迎えに行くと言われる。足を怪我して負けた典道は気が付かない。クラスでは男子グループが打ち上げ花火は横から見ると丸いか平べったいかで議論になり、それを検証するべく茂下灯台に見に行くことになった。なずなの誘いに怖気づいた祐介は、典道に足の怪我を自分の父親の病院で診てもらうよう仕向け、なずなとの約束を破って灯台に行ってしまう。 典道が病院に行くと、浴衣姿でスーツケースを持ったなずなが待っていた。祐介に約束を破られたなずなは、典道にプールで勝ったほうを花火大会に誘ったと打ち明ける。病院を出たなずなは母親に無理矢理家に連れ戻される。泣き叫ぶなずなを見た典道は、怒りのあまり通りかかった祐介を殴りつけ「もしも俺が勝っていたら」と悔し紛れになずなが落とした玉を投げつける。 時間がプールに巻き戻り、プールで勝った典道は、なずなに花火大会に誘われる。夕方こっそり落ち合った二人は、駆け落ちをしようと駅に向かう。白いワンピースに着替えたなずなは典道とホームで電車を待つが、またもなずなは母親に連れ戻され典道は再婚相手に殴られてしまう。落胆した典道は祐介たちと合流し、灯台で花火を見るが、平べったい花火だった。ここがもしもの世界だと気づいた典道は「もしもなずなと電車に乗れたら」と玉を投げる。 時間は駅のホームに戻り、典道はなずなを母親と再婚相手から引き離し、電車に乗り込む。なずなは『瑠璃色の地球』を歌う。だが祐介たちとなずなの母親に見つかり追われる。典道となずなは電車を降り、灯台で花火を見るが花弁のような美しい花火だった。典道はここももしもの世界だと気づく。典道となずなは祐介に突き飛ばされ、玉と一緒に海に落ちる。 時間は電車の中に戻る。祐介たちに見つからなかった電車は不思議なことに海の上を走る。典道は玉の力で一日を何度も繰り返していると打ち明けるが、なずなには記憶がない。駅に戻ると町は一面ガラスに包まれたような光景になっていた。酔った花火師が大きくなっていた玉を拾い打ち上げ、降り注いだ破片に典道たちはそれぞれの「もしも」を垣間見る。なずなは海の中で典道と口づけし、「次はどんな世界で会えるかな」とつぶやき典道のもとを泳ぎ去る。 新学期、出欠をとるクラス。出席簿になずなの名前はなく、典道も教室に姿はなかった。 登場人物(アニメ映画)
スタッフ(アニメ映画)
主題歌(アニメ映画)
テレビ放送(アニメ映画)
関連書籍
受賞歴その他よしもと新喜劇「打ち上げ花火、田舎で見るか?都会で見るか?」作・演出 玉井総司 2017年9月9日放送 脚注出典
外部リンク
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