大沢岳(おおさわだけ)は、長野県飯田市と静岡県静岡市葵区にまたがる赤石山脈(南アルプス)南部の標高2,820 mの山[2][3]。日本で55番目に高い山[4]。山域の上部は南アルプス国立公園の特別保護地区、西面などの中腹はその特別地域の指定を受けている[5]。山名は天竜川水系遠山川の北又沢の支流「大沢」の源頭部の山であることに由来する[6]。上部は高山帯でハイマツが分布し、ライチョウが生息する[7]。周辺の山域では、ニホンジカなどによる植物の食害が確認されている[7]。
登山
登路は長野県側からの大沢渡からのコースと南アルプス縦走路の登山道が開設されている[6]。北又沢から大沢渡山荘に至る登山道が開設されていたが[3][8]、廃道となっている[9]。
大沢渡からのコース
大沢渡からのコースはしらびそ峠が起点であり、その詳細な経路を以下に示す[9]。
- しらびそ峠 - 林道 - 大沢渡下降点 - 北又沢渡渉点 - 大沢渡山荘 - 林道跡合流点 - 唐松山(小広場) - 唐松峠 - 大沢岳
北又沢渡渉点には、荷物渡しのための篭が設置されていて、唐松峠の上部ではダケカンバなどが自生している[9]。本コースでは放散虫化石が産出されている[10]。
南アルプス縦走路
赤石岳や聖岳を登頂する南アルプス縦走時に、登られることが多い。百間洞山の家から東斜面を巻く登山道もあるため、縦走の際に登頂されることなく、通過されてしまうこともある[6]。赤石岳への登路は、赤石岳の登山を参照。聖岳への登路は、聖岳の登山を参照。
周辺の山小屋
登山口や稜線上には、山小屋とキャンプ指定地がある[9][11][12]。登山シーズン中の一部の期間に有人の営業を行っている。山頂直下東北東0.7 kmに静岡市の百間洞山の家があり[9]、キャンプ指定地が併設されている[注釈 1][11][13]。
名称
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所在地
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標高 (m)
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大沢岳 方角と距離 (km) [注釈 2]
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収容 人数
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キャンプ 指定地
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備考
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大沢渡山荘
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大沢渡に東400 m
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1,247
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西 4.2
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15
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飯田市、老朽化
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赤石岳避難小屋
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赤石岳山頂直下南
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2,990
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東北東 3.6
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30
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静岡県営
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百間洞山の家
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赤石岳と大沢岳との鞍部南
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2,430
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東北東 0.7
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60
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テント20張
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静岡市営[13]
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兎岳避難小屋
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兎岳山頂直下の東
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2,740
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南 2.3
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8
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飯田市
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聖平小屋
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聖沢源流部・聖平
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2,260
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南南東 5.0
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120
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テント50張
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静岡県営
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ハイランドしらびそ
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しらびそ高原
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1,918
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西南西 8.5
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88
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オートキャンプ施設
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公共の宿泊施設
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地理
山頂には三等三角点(点名「大沢岳」)が設置されていて[1]、その北側には、標高点2,814 mと2,772 mの小ピークがある。西側には顕著な尾根が延び、北側から北西の奥茶臼山方面に尾根が延びる。西面の長野県側は崩壊が激しく、深ヶ源頭までガレが垂直に落下している[6]。
周辺の山
赤石山脈の主稜線上の赤石岳と中盛丸山との間にある。
山容
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山名
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標高 (m)[1][2]
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三角点等級 基準点名[1]
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大沢岳からの 方角と距離 (km)
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備考
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奥茶臼山
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2,474.42
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二等 「奥茶臼山」
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北西 6.1
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日本三百名山
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赤石岳
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3,120.53
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一等 「赤石岳」
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東北東 3.6
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日本百名山
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大沢岳
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2,819.84
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三等 「大沢岳」
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0
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中盛丸山
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2,807
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南南東 0.7
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兎岳
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2,818
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(三等)「兎岳」 (2799.80 m)
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南 2.3
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兎岳避難小屋
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聖岳
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3,013
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南南東 3.4
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日本百名山
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周辺の峠
- 唐松峠 - 大沢岳と唐松山との鞍部、標高約2,030 m、山頂の1.9 km西に位置する。
- しらびそ峠 - 尾高山と御池山との鞍部、標高1,833 m、山頂の8.2 km西に位置する。南アルプスの山並みを望む展望台となっている。南南西0.5 kmの高台には、ハイランドしらびそがある。
- 大聖寺平 - 小赤石岳と荒川前岳との鞍部、標高約2,715 m、山頂の4.6 km北東に位置する。
源流の河川
天竜川水系および大井川水系の以下の河川の源流となる山で、太平洋へと流れる[9]。天竜川水系の遠山川北又沢の支流の大沢の源頭部の山である。
- 深ヶ沢、大沢 - 天竜川水系の遠山川北又沢の支流
- キタ沢、福川 - 天竜川水系の小渋川の支流
- 百間洞 - 大井川水系の赤石沢の南沢の支流、入山のための登山口となる大井川の畑薙第一ダムの北西15 kmに位置する。その源流部付近に、百間洞山の家がある。
交通・アクセス
唐松峠下部の西面には、シラビソ峠からの林道が敷設されていた[9]。
大沢岳の風景と展望
大沢岳の風景
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小河内岳から望む兎岳、中盛丸山、大沢岳
(2002年6月7日)
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兎岳から望む中盛丸山と大沢岳
(1994年7月30日)
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赤石岳から望む兎岳、小兎岳、中盛丸山、大沢岳
(2000年10月21日)
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聖岳から望む中盛丸山と大沢岳
(2002年11月6日)
大沢岳からの展望
脚注
注釈
- ^ 百間洞山の家は、特種東海フォレストが運営管理を行っていて、水場は付近の流水を利用。
- ^ 大沢岳からの山小屋までの距離は、登山経路上の距離ではなく、2地点の直線距離。
出典
参考文献
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
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外部リンク