国有化
国有化(こくゆうか、アメリカ英語: Nationalization、イギリス英語: Nationalisation )とは、私有財産などの国有でない財産を、国家の所有・管理のもとに移すことをいう[1]。つまり、私人(一般人)・法人・団体の財産を、国家のものにすることをいう。また、これらの手続を指して国有化ということもある。 資本主義的国有化と社会主義的国有化に大別される[1]。 国内における国有化はその国の国内法が規律し、国際的関係にわたる国有化では国際法が規律する。 日本における国有化国は、その国の国民の私有財産であっても、法律があれば国有化できるのが一般的である。財産における制度は基本的には各国の社会制度にしたがい、各国の憲法や法律によって規律されているからである。これは、資本主義国家であっても異なることではなく、限界は定められているか否かはともかく、適切な形での国有化は一般に認められる。 例えば日本においては日本国憲法第29条1項によって財産権の不可侵が定められているが、2項によって公共の福祉(法律)による制限が認められている。法律による制限には国有化も含まれ、土地であれば土地収用法という法律が定められており、この法律にしたがって国有化が行われる。 国際関係にわたる国有化これに対し、国有化の対象となる財産がその国の国民のものでない場合には状況が異なる。国有化を定めた国の法律は外国人にも及ぶが、外国人は国籍国の外交的保護権の対象となっているからである。したがって、外交的保護権を害する形での国有化は国際法違反の国有化となる。ただし、国際法違反の手続も国内において適法である以上、国内においては国有化が完了し、後は損失補償等の事後的な解決に委ねられる。 国際法上の国有化の要件国有化の要件については、一般的な条約は成立していない。少数国間におけるものについては、投資保護協定(日中投資保護協定など)が結ばれていることが多く、規定があればそれによる。規定がない場合には慣習国際法が規律することになる。 慣習国際法上の要件として、伝統的に説かれてきた要件としては、
などといわれてきた。 しかし、第二次世界大戦以降に植民地だった各国が独立したのちに状況が変わる。これらの国は独立はしたものの、産業の資本は宗主国の企業や国民が握っていた。したがってこれらの新興国は、自国の資源の利益のうちのある程度をこれら企業などに取られてしまうことになる。この状況に対し、資源ナショナリズムの考えが強まり、同じ状況を抱える国々が手を結び、国際的な主張を開始した。 そこでの新しく説かれた要件においては特に補償の要件が重視され、相当な時期に、相当な額の補償でよい、ということが強く説かれた。新興国は数が多いため、国連総会でもたびたび同様の宣言が採択されている。 もっとも、国連総会決議は法的効力はないため、現在のところは上記慣習国際法上の国有化の要件が動揺している状況にある。 なお、過去の具体例としては、「アングロ・イラニアン石油会社(AIOC)国有化事件」、「テキサコ対リビア事件」などがある。 しのびよる国有化国有化を行った場合、資源や施設をまるごと手に入れられるものの、国有化はセンセーショナルであるため国有化を恐れて先進国からの投資が滞るという問題点もある。 そこで、近年は国有化を明確に行わず、それを潜脱する手段で国有化を行うということがおこなわれることがある。これを「しのびよる国有化」といい、海外の資本家にとっては悩みの種となっている。 具体的には、日本の企業がある国で現地法人を設立して投資・開発を行う際、その国の政府が開発の許可の条件として現地法人の株式を譲り渡すことを要求することなどが行われている。 過去の具体例としては、シシリー電子工業事件(ELSI事件)などがある。 企業救済手段としての国有化金融や社会資本や軍事等、国家の安全にかかわるような企業が破綻に瀕した場合、それらの事業を継続することで国家を含む利用者を保護するために国有化が行われることがある。破綻に瀕しているため、国有化による財産権の制限と言う問題はほとんど無いが、それらの企業に於けるモラル・ハザードを助長する恐れが懸念される。 国営化例の一覧日本
アメリカ合衆国
アルゼンチン
オーストラリアカナダ大韓民国フィンランド
フランス
なお、ノーム・エ・ローヌ実質国有化の詳細についてはスネクマ及びサフラングループを参照。 イギリス
なお、分割民営化を行った企業体のため、詳細については同項を参照。 マレーシアエジプト
脚注関連項目 |
Portal di Ensiklopedia Dunia