点 O を通らない円(青)の、赤い円に関する反転は、点 O を通らない円(緑)になり、逆もまた然り。
円 O の外側にある点 P の、反転点 P′ の作図方法。円 O の半径を r として、直角三角形 OPN, OP′N は相似ゆえ、OP : r は r : OP′ に等しい。
円に関する反転では、円の中心が写る先の円の中心へ写るわけではない。
平面において、中心 O, 半径 r の基準円(reference circle) に関して点 P を反転すると、O を始点として P を通る半直線上で
を満たす点 P′ に写る。反転変換によって O と異なる各点 P がその像 P′ へ写るとき、それと同時に点 P′ は P に写される。故に、同じ反転変換を二度続けて施した結果として得られる変換は、O を除く平面上の点全体の成す集合上では恒等変換になる。反転変換を対合とするためには、平面上の全ての直線上に載っている唯一の点として無限遠点を導入し、反転の定義域を拡張して、基準円の中心 O と無限遠点とが入れ替わるようにしなければならない。
相異なる二点 A, A′ を通る円 q の、円 k に関する反転が A, A′ を入れ替えるならば、二円 k, q は互いに直交する。
二円 k, q が直交するとき、k の中心 O を通り q と交わる直線は、従って q との交点の k に関する反転点でも交わる。
円 k の中心 O を一つの頂点とする三角形 OAB を取り、A および B の k に関する反転点をそれぞれ A′ および B′ とすれば、が成り立つ。
基準円 k に直交する二円 p, q の二交点は、k に関する反転によって互いに入れ替わる。
二点 M, M′ が互いに基準円 k に関する反転点で、それぞれ曲線 m, m′ 上に載っていて、曲線 m, m′ も k に関する反転で互いに入れ替わるとすると、曲線 m および m′ の点 M および M′ における接線は、直線 MM′ に直交するか、さもなくば線分 MM′ を底辺とする二等辺三角形を成す。
反転変換によって角の大きさはそのまま保たれるが、有向角の向きは逆になる。
応用
ある円の中心、その円を円反転して得られる円の中心、基準円の中心は共線関係を持つ(同一直線上にある)ことに注意する。この事実は、三角形の接触三角形のオイラー線が、その内心 I と外心 O を通る直線 OI に一致することを示すのに有用である。
円反転は、三次元空間における球面反転に一般化される。空間内の点 P の、中心 O, 半径 R の基準球面に関する反転点を P′ とすると、
かつ、二点 P, P′ は O を始点とする一つの半直線上にある。二次元の場合と同様に、球面反転によって球面は球面に写る(ただし、球面が基準球面の中心 O を通る場合は例外で、この場合は平面に写る)。基準円の中心 O を通らない任意の平面は、反転して O に接する球面に写る。球面と割平面との交点としての円は、同じく円に写るが、やはり例外として円が基準球面の中心 O を通る場合には直線に写る。このことは、割平面が基準球面の中心 O を通る場合には二次元の場合に帰着できるが、通らない場合には三次元特有の現象である。
球面反転の特別の場合として立体射影がある。半径 1 の球面 B と、B の南極 S で B に接する平面 P を考えると、平面 P は球面 B の、北極 N に関する立体射影である。ここで、B の北極 N を中心とする半径 2 の球面 B2 を考えると、B2 に関する反転で 球面 B はその立体射影 P に写される。
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Hartshorne, Robin (2000), “Chapter 7: Non-Euclidean Geometry, Section 37: Circular Inversion”, Geometry: Euclid and Beyond, Springer, ISBN0-387-98650-2