中中 (2017年 11月27日 - )と華華 (2017年 12月5日 - )は、2匹のカニクイザル (Macaca fascicularis )であり、世界で初めて体細胞核移植 (英語版 ) (SCNT)により産み出された霊長類 のクローン である。この技術は、1996年に羊のドリー を産み出したのと同じ技術である。それまでのサルのクローン化の試みとは異なり、使用した核 は、胚細胞 ではなく胎児細胞からのものであった[ 1] [ 2] [ 3] [ 4] [ 5] 。2匹は、中国 ・上海 にある中国科学院 神経科学研究所 (中国語版 ) において、それぞれ別の代理母 から産まれた[ 6] 。
背景
1996年に体細胞核移植(SCNT)技術を用いて初のクローン哺乳類であるヒツジ のドリー が誕生して以来、それまでにウシ 、ネコ 、イヌ 、ウマ 、ラット など23種の哺乳類のクローンが成功していた[ 4] 。しかしまだ、霊長類にこの技術を用いても成功したことはなく、いずれも妊娠から80日目までに失敗していた。胚を成長しやすくするために核を適切にリプログラミング する技術が主な課題だった[ 3] 。1999年10月、オレゴン国立霊長類研究センター のジェラルド・シャッテン (英語版 ) の研究チームが、初のクローン霊長類となる雌のアカゲザル のテトラ (英語版 ) を誕生させたが、これには胚分割 という別の技術が使われていた。これは人工的に双子を作り出しているようなものであり、中中と華華に使用された核移植と比べると容易な技術である[ 7] 。
2019年1月、同じ研究チームは、新薬開発などでの動物実験を目的に、ゲノム編集 技術CRISPR -Cas9 を用いて同一の遺伝子を持つ5匹のサルを誕生させたと報告した[ 8] [ 9] 。2018年には、賀建奎 が同じ技術をヒト に対して適用し、世界初のデザイナーベビー となる露露と娜娜を誕生させたと発表し、問題となった(賀建奎事件 )。
プロセス
中中と華華は、上海の中国科学院神経科学研究所の孫強と蒲慕明 の研究チームによって作成された[ 1] 。研究チームは、カニクイザル の胎児の線維芽細胞 から核を抽出し、それ自身の核を除去した卵細胞 に挿入した[ 1] 。研究チームは、移植された核が持っている「体細胞 である」というエピジェネティクス な記憶を消去するために、2つの酵素 を使用した。このリプログラミング の過程により、それまでの体細胞クローン霊長類の誕生を妨げていた主な障害が克服された[ 3] 。この技術によりクローン卵細胞を21個作成して代理母に着床させた。そのうち妊娠したのは6匹であり、生きた個体を出産したのは2匹だった[ 1] 。2匹のサルには、「中華 」の字を分けて「中中」「華華」と名付けられた。成功率はまだ低かったが、その後も成功率を高めるために方法を改良するとしている[ 3] 。1996年に羊のドリーを誕生させたスコットランドのチームは、277回の試行で1匹しか生み出せなかった[ 10] 。
この研究チームは、マカク属 の成体から摘出した核を使ってクローンを作ることも試みたが、これははるかに困難であった。42個のクローン卵細胞を作成し、22匹の代理母が妊娠したが、出産まで成長したのは2匹のみであり、それらも生後すぐに死亡した[ 1] 。
影響
蒲慕明によれば、この実験の主な意義は、動物実験 (英語版 ) に使用するための遺伝的に同一のサルを作り出すことができるということである。カニクイザルはすでに動脈硬化 の研究のためのモデル生物 として確立されている[ 11] が、蒲慕明は2018年1月にNPR のニュース番組"All Things Considered"に出演した際、パーキンソン病 やアルツハイマー病 といった病名を挙げ、神経科学 の実験に使用するということを強調した[ 12] 。
クローン霊長類の誕生を受けて、生命倫理学 者から懸念の声が上がった。ケース・ウェスタン・リザーブ大学 のインスー・ヒョン (英語版 ) は、次はヒトのクローン (英語版 ) が作られるのではないかと疑問視した。蒲慕明は"All Things Considered"において、「技術的に言えばヒトのクローンを作ることは可能です。しかし、我々はそれを行うつもりはありません」と語った[ 12] 。
脚注
^ a b c d e Liu, Zhen; Cai, Yijun; Wang, Yan; Nie, Yanhong; Zhang, Chenchen; Xu, Yuting; Zhang, Xiaotong; Lu, Yong et al. (24 January 2018). “Cloning of Macaque Monkeys by Somatic Cell Nuclear Transfer” . Cell 172 (4): 881–887.e7. doi :10.1016/j.cell.2018.01.020 . PMID 29395327 . http://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(18)30057-6 24 January 2018 閲覧。 .
^ Scholarly sources:
^ a b c d Maron, Dina Fine (24 January 2018). “First Primate Clones Produced Using the "Dolly" Method – The success with monkeys could ignite new ethical debates and medical research ”. Scientific American . 24 January 2018 閲覧。
^ a b Kolata, Gina (24 January 2018). “Yes, They've Cloned Monkeys in China. That Doesn't Mean You're Next.” . The New York Times . https://www.nytimes.com/2018/01/24/science/cloned-monkeys-china.html 25 January 2018 閲覧。
^ Popular sources:
^ Staff (24 January 2018). “Meet Zhong Zhong and Hua Hua, the first monkey clones produced by method that made Dolly ”. Science Daily . Cell Press . 25 January 2018 閲覧。
^ White-house, David (14 January 2000). “Scientists 'clone' monkey” . BBC News . http://news.bbc.co.uk/1/hi/sci/tech/602027.stm 24 January 2018 閲覧。
^ Science China Press (23 January 2019). “Gene-edited disease monkeys cloned in China” . EurekAlert! . https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-01/scp-gdm012119.php 24 January 2019 閲覧。
^ Mandelbaum, Ryan F. (23 January 2019). “China's Latest Cloned-Monkey Experiment Is an Ethical Mess” . Gizmodo . https://gizmodo.com/chinas-latest-cloned-monkey-experiment-is-an-ethical-me-1831987348 24 January 2019 閲覧。
^ Genetic Science Learning Center. “The History of Cloning ”. University of Utah. 24 January 2018 閲覧。
^ Phillips, Kimberley A.; Bales, Karen L.; Capitanio, John P.; Conley, Alan; Czoty, Paul W.; ‘t Hart, Bert A.; Hopkins, William D.; Hu, Shiu-Lok et al. (10 April 2014). “Why Primate Models Matter” . American Journal of Primatology 76 (9): 801–27. doi :10.1002/ajp.22281 . PMC 4145602 . PMID 24723482 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4145602/ .
^ a b *Rob Stein (24 January 2018). “Chinese Scientists Clone Monkeys Using Method That Created Dolly The Sheep ”. National Public Radio. 24 January 2018 閲覧。
外部リンク
種類 分化能
全能性 totipotent
多能性 pluripotent
多分化能・複能性 multipotent
単能性 unipotent
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