フクロウ目 (フクロウもく、梟目、学名 Strigiformes )は鳥類 の1目である。
ミミズク と呼ばれるものも同じ仲間で、はっきりとした区別(分類学上の区別)はない。頭部の上方に突き出た耳のように見えるものを羽角(うかく)というが、羽角のない種をフクロウ 、羽角のある種をミミズク と呼んでいる。
分布
南極 を除く全大陸に分布し、特に熱帯 では多様性が高く、グリーンランド にまで生息している[ 1] 。日本 には10種ほどが生息している。
形態
目と耳
両目が頭部の前面に位置しており、上下にも僅かにずれている。
フクロウは遠目が利くが、逆に数十センチ以内の近い範囲ははっきりと見ることができない。瞳孔が大きく、弱い光 に敏感な桿体細胞 が網膜 に多いため、夜目がきく(ただしその代償として昼間は眩しすぎるため、目を細めていることが多い)。フクロウの目の感度は人間 の100倍。他の多くの鳥類と異なり、両目が正面にあるため立体視が可能で、静止していても対象までの正確な距離を把握できる。
両耳は、耳穴が左右でずれた位置に存在し、奥行きも違っている。左右非対称であることにより、音源の方向を立体的に認識することが可能になっている。また、パラボラ型の顔面の羽毛が対象の発するわずかな音を集め、聴覚を助ける役目をする。
暗所に強い目と、驚異的な聴力がフクロウ目の夜間ハンティングを可能にしている。
くちばし、翼、足
ワシのような形をしたくちばし をもつ。目の周囲を縁取るようにはっきりとした顔盤という羽毛が生えた部位がある。耳角と呼ばれる耳のように見える羽は耳ではなく、耳は顔盤のすぐ後ろに位置している。耳の位置は左右で異なっている。
フクロウ目の羽毛は柔らかく、風切羽の周囲には綿毛が生え、はばたきの音を和らげる効果があるため、ほとんど音を立てることなく飛行できる[ 2] 。
趾 (あしゆび)のうち、いちばん外側の第4趾の関節が非常に柔軟で、多くの鳥類のような三前趾足(第1趾のみが後ろで前3本後1本)から対趾足(前2本後2本)に切り替えることができる。
生態
多くの種が夜行性で、フクロウ目は数少ない夜行性の鳥類(鳥類全体の約3%)の中で大きな割合を占める。肉食で小型の哺乳類 や他の鳥類、昆虫 などを鋭い爪で捕獲し捕食する。一部には魚 を捕食する種もみられる。森林にすむ種は木 の洞穴を住処とし、岩肌を利用したり、他の鳥の古巣を使うこともある[ 3] 。単独またはつがいで生活する。
種類によっては、刺激を受けると、外見上の体の大きさを変えるものもいる。
系統と分類
フクロウ目は、スズメ目 などと共に land bird クレードに含まれるが、land bird クレードの初期に分岐した類縁関係のはっきりしない目のひとつである[ 4] [ 5] 。
2科27属220種が現生する[ 6] 。このほかいくつかの化石科がある。
フクロウ目は古くは、猛禽類 として分類されてきた。カール・フォン・リンネ は、タカ類 ・ハヤブサ類 ・モズ類 と共にタカ目 Accipitres に分類した。
1990年代のSibley分類 では、現在のフクロウ目・ヨタカ目 ・アマツバメ目 ズクヨタカ科 の構成種を含めていた。彼らは狭義のフクロウ目とヨタカ目(ズクヨタカ科を含む)は姉妹群 だとしており[ 7] 、それらを合わせた群の名称がフクロウ目となったのは命名規則のためである。
フクロウの首の動き 頭部を180度以上回転させることが出来る。 (シロフクロウ )
フクロウ目とヨタカ目は夜行性 ・捕食 性という生態が共通しており、頭骨 にも共通点が発見された(ただしアマツバメ目とも共通である)[ 8] 。2000年代前半までは、これらが近縁であるという説は、同じ目に分類するかどうかは別としてある程度の支持を得ていた[ 9] 。しかし2004年 、夜行性に関連したAanat遺伝子の分析により、両目の夜行性は収斂進化 によるものだとされ[ 10] 、さらにそれに続く包括的な分子系統により現生鳥類全体の系統が明らかになると、両目の類縁性は否定された[ 11] [ 12] 。
文化
神話や伝承
鳥の中ではカラス のほうが知能は高い[ 13] が、フクロウは古代ギリシャ では女神 アテナ の従者であり、「森の賢者」と称されるなど知恵の象徴とされている[ 13] 。
古代エジプト ではヒエログリフ の「m」の文字をフクロウを表すものとしたが、しばしばこのヒエログリフを復活と攻撃のために足の折れたいけにえのフクロウとして記述した[要出典 ] 。
日本ではフクロウは死 の象徴とされ、フクロウを見かけることは不吉なこととされていた。
青森県 北津軽郡 嘉瀬村(現・五所川原市 )では、死んだ嬰児の死霊 を「タタリモッケ 」といって、その霊魂 がフクロウに宿るといわれた[ 14] 。岩手県 和賀郡 東和町 北成島(現・花巻市 )ではフクロウを「しまこぶんざ」といい、子供が夜更かししていると「しまこぶんざ来んど」(フクロウが来て連れて行かれる、の意)といって威す風習があった[ 15] 。
現在では、「不苦労」、「福郎」のゴロ合わせから福を呼ぶものとも言われている[ 16] 。
ホピ族(北アメリカ の先住民)でもフクロウは不潔で不気味な生き物とされている。2003年にアメリカの教育委員会が多文化への対応のために児童の教科書のフィクションの項目を再調査したとき、北アメリカの先住民の文化によって従来の蛇やサソリに対するそれのように、フクロウに関する記述や問題を子供たちが怖がってテストが混乱しないように、フクロウについてのこれらの物語や問題を新しい教科書やカリキュラムから取り除かなければならないとの結論に達した[要出典 ] 。
ヨーロッパでは学問の神、英知の象徴とされる[要出典 ] 。
近年、アジアなどで食用や飼育、様々な用途で密輸され、摘発されるケースがある[要出典 ] 。
キャラクター
ファンタジー 小説「ハリー・ポッター 」シリーズにフクロウが登場することから、一時期ペット としての人気が高まったが、あまり飼いやすい鳥ではない。
1998年 の長野オリンピック のマスコットキャラクター「スノーレッツ(4羽のフクロウ)」もこれをモチーフとしていた。
また、静かさを感じさせるイメージから騒音規制の標識のイラスト、知的なイメージからかメガネ量販店「メガネスーパー 」の商標、夜行性な所から、コンビニエンスストア で24時間営業を表すマークにも使われる事もある。
河出書房新社 の河出文庫 やKAWADE夢文庫の背表紙などにはフクロウが描かれている。また、図説のシリーズは『ふくろうの本』と銘打っており、文庫と同様にフクロウが描かれている。
『科学忍者隊ガッチャマン 』シリーズのみみずくの竜や『鳥人戦隊ジェットマン 』のイエローオウルといったアニメや特撮のヒーローのモチーフになる事もあった。いずれも、ずんぐりとした体型のキャラクターが役どころになっている。
藤田和日郎 の漫画『邪眼は月輪に飛ぶ 』では、その眼で見られると命を奪われる邪眼 を持つフクロウが登場しているが、これは古来より伝えられてきたフクロウの不吉な側面に由来したものである。
アメリカ合衆国のファンタジー小説『ガフールの勇者たち 』はフクロウ世界の冒険と戦いを描いた物語であり、主人公のメンフクロウを始めとして、カラフトフクロウやシロフクロウなど、さまざまな種類のフクロウたちが大勢登場する。
サッカーJリーグ 、北海道コンサドーレ札幌 のエンブレムは、シマフクロウをモチーフにしている。また、マスコットキャラクター、ドーレくん のモチーフもシマフクロウである。
池袋駅 - 石像「いけふくろう 」がある。
ウィキメディア・コモンズには、
フクロウ目 に関連するカテゴリがあります。
ウィキスピーシーズに
フクロウ目 に関する情報があります。
出典
^ 『フクロウ大図鑑』、10頁
^ 『フクロウ大図鑑』、13頁
^ 『フクロウ大図鑑』、21頁
^ Ericson, Per G. P.; Envall, Ida; et al. (2006), “Diversification of Neoaves: integration of molecular sequence data and fossils” , Biol. Lett. 2 : 543–547, http://www.biomedcentral.com/1471-2148/3/16
^ Hackett, S. J.; Kimball, Rebecca T.; et al. (2008), “A Phylogenomic Study of Birds Reveals Their Evolutionary History”, Science 320 (5884): 1763–1768
^ Gill, Frank ; Donsker, David, eds. (2010), “n-owls.html” , IOC World Bird Names (version 2.4), http://www.worldbirdnames.org/n-owls.html
^ Sibley, Charles G. ; Ahlquist, Jon E. ; Monroe Jr., Burt L. (1988), “A classification of the living birds of the world based on DNA-DNA hybridization studies” , Auk 105 (3): 409–423, http://elibrary.unm.edu/sora/Auk/v105n03/p0409-p0423.pdf
^ Christidis, Les; Boles, Walter E. (2008), Systematics and Taxonomy of Australian Birds , CSIRO Publishing , ISBN 9780643096028
^ 盛岡弘之 (2006), “鳥綱”, in 松井正文, 脊椎動物の多様性と系統 , バイオディバーシティ・シリーズ 7, 裳華房 , ISBN 4-7853-5830-0
^ Fidler, A. E.; Kuhn, S; Gwinner, E (2004), “Convergent evolution of strigiform and caprimulgiform dark-activity is supported by phylogenetic analysis using the arylalkylamine N-acetyltransferase (Aanat) gene”, Mol. Phylogenet. Evol. 33 (3): 908–21
^ Ericson, Per G. P.; Anderson, Cajsa L.; et al. (2006), “Diversification of Neoaves: integration of molecular sequence data and fossils” , Biol. Lett. 2 (4): 543–547, doi :10.1098/rsbl.2006.0523 , http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1834003/
^ Hackett, S. J.; Kimball, Rebecca T.; et al. (2008), “A Phylogenomic Study of Birds Reveals Their Evolutionary History”, Science 320 : 1763–1768
^ a b 『フクロウ大図鑑』、15頁
^ 大藤時彦他 、柳田國男監修 著、民俗学研究所 編『綜合日本民俗語彙』 第2巻、平凡社 、1955年、867頁。 NCID BN05729787 。
^ 管野環他「岩手県和賀郡東和町 調査報告書 」『常民』29号、中央大学 民俗研究会、1993年1月、163頁、NCID BB0409209X 、2014年12月3日 閲覧 。
^ 「うちのイチオシ フクロウの茶道具 京都茶華道具館(亀岡市保津町)」『京都新聞 』京都新聞社、1999年12月17日、朝刊、26面。
参考文献
関連書籍
古顎類 新顎類
キジカモ類 新鳥類
Strisores 系統群(名称不明) Columbimorphae ツル目 Mirandornithes チドリ目 Phaethoquornithes
Eurypygimorphae Aequornithes
ツメバケイ目 Telluraves
タカ目 フクロウ目 ネズミドリ目 Cavitaves Australaves
Source: Orders of Birds - IOC World Bird List(国際鳥類学会議 )