ソユーズMS-22

ソユーズMS-22
名称ISS 68S
任務種別ISSへの有人飛行
運用者ロスコスモス
COSPAR ID2022-116A
ウェブサイトen.roscosmos.ru
任務期間187日 21時間 52分
特性
宇宙機ソユーズMS No.751 K.E. Tsiolkovsky
宇宙機種別ソユーズMS
製造者RKKエネルギア
乗員
乗員数打上:3名
帰還:0名
打ち上げ
コールサインAltai
任務開始
打ち上げ日2022年9月21日 13:54 UTC[1]
ロケットソユーズ 2.1a
打上げ場所バイコヌール宇宙基地31番射点
打ち上げ請負者プログレス国家研究生産ロケット宇宙センター
任務終了
着陸日2023年3月28日 11:46 UTC
着陸地点カザフステップ
軌道特性
参照座標地球周回軌道
体制低軌道
傾斜角51.66°
ISSのドッキング(捕捉)
ドッキング MRM1 天底
ドッキング(捕捉)日 2022年9月21日 17:06 UTC
分離日 2023年3月28日 09:57 UTC
ドッキング時間 187日 16時間 51分
ペイロード
降下貨物
重量~218 kg (481 lb)
加圧~218 kg (481 lb)

(上から)ペテリン、ルビオおよびプロコピエフ

ソユーズMS-22は3名の乗員を乗せて2022年9月21日にバイコヌール宇宙基地国際宇宙ステーションに向けて打ち上げられたロシアのソユーズ宇宙船。当初、2022年9月13日に予定されていた打ち上げは、その後188日間のミッションに向けて2022年9月21日に延期された[2]

クルー

当初は2021年5月に3名のロシア人クルーが指名された。各クルーローテーションミッションで少なくとも1名のNASAの飛行士と、1名のロスコスモスの飛行士を維持するためのソユーズ・ドラゴン乗員交換システムの一環として、アメリカ人宇宙飛行士フランシスコ・ルビオ英語版アンナ・キキナ英語版と交代した。これによって、両国がステーションに存在することが保証され、ソユーズまたは商用乗員機のいずれかが長期間飛行停止になった場合でも、別々のシステムを維持することを可能にする[3]

地位 乗組員
指揮官 ロシアの旗 セルゲイ・プロコピエフ英語版, ロスコスモス
第67/68/69次長期滞在
2回目の宇宙飛行
第1フライトエンジニア ロシアの旗 ドミトリー・ペテリン英語版, ロスコスモス
第67/68/69次長期滞在
1回目の宇宙飛行
第2フライトエンジニア アメリカ合衆国の旗 フランシスコ・ルビオ英語版, NASA
1回目の宇宙飛行

予備クルー

地位 乗組員
指揮官 ロシアの旗 オレグ・コノネンコ, ロスコスモス
第1フライトエンジニア ロシアの旗 ニコライ・チュブ英語版, ロスコスモス
第2フライトエンジニア アメリカ合衆国の旗 ローラル・オハラ英語版, NASA

ソユーズ宇宙船

本ミッションで使用されているソユーズ宇宙船は、現代的なロケット工学と宇宙航行学の父の一人して、ロバート・ゴダードヘルマン・オーベルトなどの著名人とともに今日も尊敬されているコンスタンチン・ツィオルコフスキー(1857-1935)にちなんで命名された。ツィオルコフスキーの生誕165周年はソユーズMS-22の少し前(当初計画の数日後)の9月17日にあたっている[4]

冷却系のトラブル

飛散する"薄片の流れ"

2022年12月15日12時45分(UTC)、外部ラジエーターの冷却ループの圧力低下と同時に、ソユーズ宇宙船から飛散する「目に見える薄片の流れ」が確認された[5]。予定されていたペテリンとプロコピエフの船外活動はこの事故を評価する間、キャンセルされた[6]

ラジエーターの漏れは、微小隕石の衝突により発生したものである。 衝突によってソユーズMS-22宇宙船のサービスモジュールに設置されている外部冷却器のラジエーターに直径0.8 mm (0.031 in)の穴が開いた[7]

事故の原因を突き止め、船の技術的状態を分析し、地上の専門家と宇宙飛行士のためのさらなる行動のための勧告を作成するために、2 つの作業部会が結成された[8]

実施された宇宙船のシステムテストにより、事故後の最初の数日間の軌道モジュールと降下モジュールの温度は+30°Cに達し、サービスモジュールの温度は+40°Cに達したが、2023年1月に宇宙船全体の温度は約+30°Cで安定した。

2022年12月、ERAとCanadarm 2のマニピュレータアームのカメラを用いて、ソユーズMS-22の外表面の調査が行われた[9]。地上で受信したデータの解析により、サービスモジュール表面の損傷箇所の可能性を検出することができた。

ドッキング解除に先立つ2023年2月にプログレスMS-21も冷却材漏洩を伴う同様な問題に遭遇していた[10]

ドッキング解除と帰還

ソユーズ MS-22は乗組員の帰還を行うことができないため、ソユーズ32号のように無人で帰還した。MS-23 はソユーズ34号のように無人で打ち上げられ、2023年9月にMS-22 の乗組員を帰還させる予定である。このため、MS-22のクルーはほぼ1年間を宇宙で過ごすことになる。MS-23の元の有人ミッションは延期され、MS-24ミッションに再割り当てされた[11][12]。このため、重量218 kg分のいくつかの非与圧貨物と機器がソユーズMS-22の無人での帰還で地上に持ち帰られる。管制チームの報告によれば、着陸時の温度はおそらく50°Cに達しており、研究されていた最悪の有人緊急着陸シナリオよりも良好だった。さらなる詳細は分析後に公表される予定となっている[13]

MS-23がISSにドッキングするまでは、スペースX Crew-5が非常の場合にMS-22のクルーを帰還させるオプショとしてみなされていた。これは、スペースXが当初クルードラゴンに7名同時に搭乗することを前提に設計したことから可能となる。これらの理由から、国際宇宙ステーションのミッション管理チームはNASAの宇宙飛行士フランシスコ・ルビオ英語版の座席の内張を、ルビオが緊急避難のために宇宙ステーションから地球に戻る必要が発生した場合に備えて救命ボート機能を確保するために、ソユーズMS-22宇宙船からクルードラゴン・エンデュランスに変更することを決定した。内張は2023年1月17日に移され、設置と設定は2023年1月18日のほぼ全日を要した。2機のソユーズ間での座席内張の交換は過去にも行われたが、ソユーズからクルードラゴンへの交換は初めてだった[14]。この変更によって、MS-22宇宙船内部の熱負荷が減少してクルー保護能力が向上したので、非常時にはプロコピエフとペテリンがMS-22で地球に帰還することも可能となった。スペースX Crew-5離脱後は、Crew-6宇宙カプセルも緊急避難としてクルーを戻すために機能するように設計されている[15]

MS-23は2023年2月25日に到着してISSにドッキングし[16]、翌日の2月26日に、ルビオの座席内張は新しいソユーズに移され、セルゲイ・プロコピエフ英語版ドミトリー・ペテリン英語版の座席内張はソユーズで帰還するために3月2日にMS-22からMS-23に移された[14]

脚注

  1. ^ Space exploration in 2022”. russianspaceweb.com. 2021年10月1日閲覧。
  2. ^ Кикина может побить рекорд пребывания россиянок в космосе” [Kikina can break the record for Russian women in space] (ロシア語) (26 September 2021). 26 September 2021閲覧。
  3. ^ Rogozin says Crew Dragon safe for Russian cosmonauts”. SpaceNews (2021年10月26日). 17 December 2021閲覧。
  4. ^ Rubio Primed for Integrated Crew Ops, Cristoforetti, Prokopyev to Command Expedition 68a/b - AmericaSpace” (英語). www.americaspace.com (2022年8月23日). 2022年9月23日閲覧。
  5. ^ “NASA Provides Update on International Space Station Operations”. (15 December 2022). https://blogs.nasa.gov/spacestation/2022/12/15/nasa-provides-update-on-international-space-station-operations 15 December 2022閲覧。 
  6. ^ Lock, Samantha (14 December 2022). “Unexplained leak from Soyuz spacecraft forces Russia to abort ISS spacewalk mission”. The Guardian. https://www.theguardian.com/science/2022/dec/15/unexplained-leak-from-soyuz-spacecraft-forces-russia-to-abort-iss-spacewalk-mission 15 December 2022閲覧。 
  7. ^ Госкорпорация «Роскосмос»”. 2023年1月12日閲覧。
  8. ^ “Soyuz MS-22 radiator ruptured because of external damage — Roscosmos working groups”. TASS. (27 December 2022). https://tass.com/science/1556485 19 March 2023閲覧。 
  9. ^ “Robotic arm to inspect leaky Soyuz spacecraft, Russia says”. Reuters. https://www.reuters.com/lifestyle/science/robotic-arm-inspect-leaky-soyuz-spacecraft-russia-says-2022-12-18/ 19 March 2023閲覧。 
  10. ^ Russian spacecraft loses pressure, station crew safe” (英語). AP NEWS (2023年2月11日). 2023年2月11日閲覧。
  11. ^ Foust, Jeff (December 22, 2022). “Investigation into Soyuz leak continues”. Space News. https://spacenews.com/investigation-into-soyuz-leak-continues/ January 1, 2023閲覧。 
  12. ^ Russia to launch new capsule to return space station crew” (英語). WJXT (2023年1月11日). 2023年1月11日閲覧。
  13. ^ @katlinegrey (2023年3月29日). "Temperature in #SoyuzMS22 which landed yesterday in Kazakhstan was more comfortable than in the worst scenario calculated by Roscosmos specialists, said Sergei Krikalev. How hot it was in the ship during the descent, will be known after analyzing different parts of the ship". X(旧Twitter)より2023年8月9日閲覧
  14. ^ a b Garcia, Mark (13 January 2023). “Spacewalk Preps Continue as Soyuz Seat Move Planned as Precaution” (英語). blogs.nasa.gov. 2023年1月14日閲覧。 この記事には現在パブリックドメインとなった次の出版物からの記述が含まれています。
  15. ^ (英語) Expedition 68 NASA's SpaceX Crew-6 Leaders Discuss Mission - Jan. 25, 2023, https://www.youtube.com/watch?v=5OCET6AMDsQ 2023年2月14日閲覧。 
  16. ^ Foust, Jeff (2023年2月26日). “Replacement Soyuz arrives at space station” (英語). SpaceNews. 2023年2月28日閲覧。