ザ・フー・バイ・ナンバーズ
『ザ・フー・バイ・ナンバーズ』 (The Who by Numbers) は、1975年に発表されたイギリスのロックバンド、ザ・フーのスタジオアルバム。プロデューサーはグリン・ジョンズ。旧邦題は『ロックンロール・ゲーム』。 解説『四重人格』(1973年)以来約2年ぶりとなるオリジナルアルバム。プロデュースには『フーズ・ネクスト』(1971年)にも参加したグリン・ジョンズが、またピアノでニッキー・ホプキンスが同じく『フーズ・ネクスト』以来久々に参加した。レコーディングは1975年4月30日から4週間にわたり、シェパートン・スタジオに移動式スタジオを持ちこんで行われた。「ブルー・レッド・アンド・グレイ」のみ、ピート・タウンゼント所有のイールパイ・スタジオで収録された。ロジャー・ダルトリーは映画『リストマニア』の撮影の影響で遅れて参加している[4]。 本作は『フーズ・ネクスト』以来のノン・コンセプトアルバムとなる(ただし、『フーズ・ネクスト』は当初『ライフハウス』というロックオペラとして制作されていたため、最初からノン・コンセプトアルバムとして制作されたのは2枚目のアルバム『ア・クイック・ワン』(1966年)以来となる)。シンセサイザーを大々的に用い、効果音まで取り入れ、重厚かつ複雑なサウンド作りがなされた前作『四重人格』とは打って変わり、本作では必要最低限のコンボで、比較的シンプルな音造りがなされている。タウンゼントの詞作面でも大きな変化が現れており、仕事の重圧や堕落した音楽業界への皮肉、また家庭内の問題など、現実的かつ個人的な問題をテーマにしたものが多く、タウンゼントのソロ作品とみなすファンもいる[5]。パッケージもシングル・スリーブでシンプルなものとなっている。ジャケットのイラストはジョン・エントウィッスルによるもので、これは彼の息子が持っていた塗り絵から着想を得たものである[6]。 当時のザ・フーは、マネージャーのキット・ランバートを相手に金銭問題による訴訟合戦を抱えており、その上タウンゼントは音楽業界全体に幻滅していた頃で、非常にモチベーションが低下していたと見られる。さらにニュー・ミュージカル・エクスプレス紙のインタビューで自身の苦悩や不満を赤裸々に語り、そのインタビュー内でダルトリーに対する批判まで行った。その数週間後には同じ紙面で今度はダルトリーがタウンゼントへ辛辣な返答を行ったことにより、一気にザ・フー解散の噂が広まった[5]。この解散説を払拭するかのようにザ・フーはこの年の10月から翌1976年にかけ、これまでにない大規模な世界ツアーを敢行する。ツアーの途中キース・ムーンが急性アルコール中毒で倒れるなどのアクシデントがあったものの、グループは1976年のローリング・ストーン誌が選ぶ最優秀グループに選ばれ、復活を印象付けて見せた。だが、これが結果的にムーンと行った最後のツアーとなる[7]。 本作からは「スクイーズ・ボックス/サクセス・ストーリー」がシングルカットされ、イギリスではトップ10入りした[2]。 リイシュー1996年にリマスター/リミックス版がリリースされる。本作には未発表曲や未発表テイクはなく、1976年のスウォンジー公演からの3曲のライブ音源がボーナス・トラックとして収録されている。2011年には日本限定でオリジナルのマスターテープから起こした最新リマスター版がリリースされた。 収録曲特記なき限り、ピート・タウンゼント作詞・作曲。
脚注
外部リンク |
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