サーモンの定理(サーモンのていり、英: Salmon's theorem)は、ジョージ・サーモンに因んで命名された幾何学の諸定理。
極線に関する定理
Oを中心とする円と任意の点A,Bについて、B,Aの極線へのA,Bの直交射影(垂足)をP,Qとしたとき、が成立する[1][2][3][4][5]。
この定理に関して、澤山勇三郞は次の一般化を示した[6]。
円錐曲線Sと任意の点A,Bに関して、A,Bの極線のA,Bを通る垂線とSの一方の軸との交点をそれぞれM,N、B,Aの極線へのA,Bの直交射影をP,Qとしたとき、が成立する。
弦に関する定理
円周O上の任意の一点Pを通る3つの弦を直径とする円をそれぞれ書く。3円のPでない方の交点は共線である[2][7]。これはOと3円の交点が成す三角形のシムソン線となる。
この定理には小倉金之助による一般化が存在する[8]。
楕円に関する定理
2つの共焦点楕円に囲まれた領域を作る。内側の楕円に接するような軌道でボールを打ち出す。ビリヤードの球の様に外側の楕円で跳ね返るようにボールの軌道を描いたとき、軌道は、内側の楕円に接し続ける[1]。
円錐曲線に関する定理
ある三角形とその極三角形の配景の中心と配景の軸それぞれを、その円錐曲線に関する「極」「軸」と表現する。また、極三角形が元の三角形と一致するとき、円錐曲線に関して「自共役」であると表現する。
2つの円錐曲線S,S'について、S'に内接する任意の三角形がSに関して自共役であるとする。このときS'に内接する三角形のSに関する極はS'上にある。Sに外接する三角形のS'に関する軸はSに接する[2]。
他にも、円錐曲線に関するサーモンの定理と呼ばれる定理が存在する[9]。
ケイリー-サーモンの定理
円に内接する六角形abcdefにおいて、たとえばab,cdの交点を(ab , cd)と表す。(ab , de),(bc , ef),(cd , fa)はパスカルの定理より一直線(パスカル線)上にある。このパスカル線をと書く。
今、それぞれab,cd,ef、de,fa,bc、cf,be,adの成す三角形について、2つの三角形の対応する辺の交点はパスカル線上にあるため、対応する頂点を結ぶ3直線は共点(シュタイナー点)である(シュタイナーの定理)。円上の6点についてシュタイナー点は20個存在する。次にそれぞれ3辺
からなる3つの三角形の、2つの三角形の対応する辺の交点はパスカル線上にあるため、対応する頂点を結ぶ3直線は共点(カークマン点)である。ここで、シュタイナー点1つとカークマン点3つを通るような直線が20本存在する。この20本の線は4本ずつ共点であり、このような点は15個存在する。これをケイリー-サーモンの定理という[2][10]。アーサー・ケイリーの名を冠する。
他、三次曲面(英語版)や代数曲線に関する定理のサーモンの定理、ケイリー-サーモンの定理がある[11][12][13]。
三角形に関しては、重心、垂心、外心、九点円の中心(英語版)が調和点列を成すことを、サーモンの定理と呼ぶこともある[14]。
出典
- ^ a b Mathworld
- ^ a b c d ジョージ・サーモン 著、小倉金之助 訳『解析幾何学 : 円錐曲線』山海堂出版部、1914年。NDLJP:952208。
- ^ 長沢亀之助『幾何学辞典 : 問題解法』長沢亀之助、1907年、471頁。NDLJP:1087163。
- ^ N, E. H. (1954-05). “2405. Notes on conics. 17. Salmon's Theorem” (英語). The Mathematical Gazette 38 (324): 125–126. doi:10.2307/3609833. ISSN 0025-5572. https://www.cambridge.org/core/journals/mathematical-gazette/article/abs/2405-notes-on-conics-17-salmons-theorem/BFA644D8F24A096E7161CCF1268D45A6.
- ^ Phillips, William Henry Harrison(英語)『Elements of Geometry: And the First Principles of Modern Geometry』Sheldon & Company、1878年。https://www.google.co.jp/books/edition/Elements_of_Geometry/wSMAAAAAYAAJ。
- ^ 森本清吾 (1938). 沢山勇三郎全集. 岩波書店. NDLJP:1239383
- ^ 山崎栄作『最新高等平面幾何学通論』内田老鶴圃、1930年、51頁。NDLJP:1223370。
- ^ Eugène Rouché,Charles de Comberousse 著、小倉金之助 編『初等幾何学 第2巻 平面之部』山海堂、1913年。NDLJP:1082037。
- ^ 窪田忠彦『初等幾何学特選問題』共立社書店、1932年、113頁。NDLJP:1211458。
- ^ Eugène Rouché,Charles de Comberousse 著、小倉金之助 編『初等幾何学 第1巻 平面之部』山海堂、1913年、505頁。doi:10.11501/930885。
- ^ arXiv:1804.08025
- ^ Hirschfeld, J. W. P.、Korchmaros, Gabor、Torres, Fernando(英語)『Algebraic Curves over a Finite Field』Princeton University Press、2013年3月25日。ISBN 978-1-4008-4741-9。https://www.google.co.jp/books/edition/Algebraic_Curves_over_a_Finite_Field/VnBZzTso_tQC。
- ^ Beltrametti, Mauro (2009) (英語). Lectures on Curves, Surfaces and Projective Varieties: A Classical View of Algebraic Geometry. European Mathematical Society. ISBN 978-3-03719-064-7. https://www.google.co.jp/books/edition/Lectures_on_Curves_Surfaces_and_Projecti/g9DBgD22n_IC
- ^ Дмитрий Ефремов. Новая геометрия треугольника アーカイブ 2020年2月25日 - ウェイバックマシン. — Одесса, 1902. — С. 47. Глава II, п.47
参考文献
外部リンク