サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ

サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ(サントリーホールこくさいさっきょくいしょくシリーズ、Suntory Hall International Program for Music Composition)は、サントリー芸術財団が1986年から毎年開催している、世界の第一線で活躍する作曲家に管弦楽作品を委嘱し、サントリーホールで世界初演するシリーズ[1]。監修は1986年から1998年が武満徹[注釈 1]、1999年から2011年が湯浅譲二[2]、2013年からは細川俊夫が担当している[1][3]

初演コンサートの概要

サントリーホールが開館した1986年10月から翌1987年2月にかけて、「サントリーホール オープニング・シリーズ」として、武満徹を始めとする5人の作曲家の委嘱作品5曲が披露された。1987年から1991年までは毎年秋にサントリーホールの周年行事として1人から3人の作曲家に委嘱され、ヴォルフガング・リームら計9人の作品が初演されている。 1992年のホセ・マセダからは、大ホールでの公演だけでなく小ホール (ブルーローズ) を会場に、作曲家の生の声を聴く企画が始まった。 2004年からは「サントリー音楽財団サマーフェスティバル[1][注釈 2] の中に組み込まれた。そして大ホールでの管弦楽初演、小ホールでの作曲家トークに加え、室内楽コンサートが小ホールで開催されるようになっている[4]

委嘱作品一覧[5]

No. 作曲者名 出身国 曲名 初演日 出演
1 武満徹
(1930-1996)
日本 ジェモー(双子座)—オーボエ、トロンボーン、2つのオーケストラ、2人の指揮者のための 1986年10月15日 井上道義尾高忠明(指揮)
ブルクハルト・グレッツナー(オーボエ)、

ヴィンコ・グロボカール(トロンボーン)
新日本フィルハーモニー交響楽団
東京フィルハーモニー交響楽団

2 ヤニス・クセナキス
(1922-2001)
フランス[注釈 3] ホロス 1986年10月24日 岩城宏之(指揮)
日本フィルハーモニー交響楽団
3 尹伊桑
(1917-1995)
ドイツ[注釈 4] 交響曲第4番(全2楽章)—暗黒の中で歌う 1986年11月13日 岩城宏之(指揮)
東京都交響楽団
4 ジョン・ケージ
(1912-1992)
アメリカ エトセトラ 2 1986年12月8日 岩城宏之、一柳慧黛敏郎湯浅譲二(指揮)
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
5 シルヴァーノ・ブッソッティ
(1931-2021)
イタリア カタログ IV オーケストラのための詩 第1番 "H III" 1987年2月10日 尾高忠明(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
6 ヴォルフガング・リーム
(1952-2024)
ドイツ 無題 II 1987年10月31日 井上道義(指揮)
高橋アキ(ピアノ)
新日本フィルハーモニー交響楽団
7 バーナード・ランズ
(1934-)
セレモニアル II 1987年11月14日 小泉和裕(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
8 ルイジ・ノーノ
(1924-1990)
イタリア 2) 進むべき道はない だが進まねばならない……アンドレイ・タルコフスキー 1987年11月28日 高関健(指揮)
東京都交響楽団
9 ルイス・デ・パブロ
(1930-2021)
スペイン 風の道 1988年11月4日 岩城宏之(指揮)
東京都交響楽団
10 ルーカス・フォス
(1922-2009)
アメリカ[注釈 5] クラリネット協奏曲 1988年12月2日 外山雄三(指揮)、鈴木良昭(クラリネット)
東京都交響楽団
11 ロディオン・シチェドリン
(1932-)
ロシア ホロヴォディ (輪廻) オーケストラのための 1989年11月2日 十束尚宏(指揮)
東京都交響楽団
12 ロジャー・レイノルズ
(1934-)
アメリカ 交響曲「神話」 1990年10月25日 佐藤功太郎(指揮)、今井奈緒子(オルガン)、

白石准菅野由弘(オンド・マルトノ)、 東京混声合唱団(バス合唱)
東京フィルハーモニー交響楽団

13 アルネ・ノールヘイム
(1931-2010)
ノルウェー モノリス オーケストラのための 1991年4月2日 外山雄三(指揮)
新日本フィルハーモニー交響楽団
14 ペア・ノアゴー
(1932-)
デンマーク Spaces of Time (時の空間) オーケストラとピアノのための 1991年10月7日 山下一史(指揮)、高橋アキ(ピアノ)
東京都交響楽団
15 ホセ・マセダ
(1917-2004)
フィリピン ディステンペラメント (平均律の解体) 1992年5月24日 高橋悠治(指揮)、沢井忠夫(筝)
新日本フィルハーモニー交響楽団
16 ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ
(1926-2012)
ドイツ 3つの宗教的コンチェルト Tpと器楽アンサンブルのための 1992年11月26日 オリヴァー・ナッセン(指揮)、

徳永二男(ヴァイオリン)、 ホーカン・ハーデンベルガー(トランペット)
NHK交響楽団

17 譚盾
(1957-)
中国 オーケストラル・シアター II:Re 2人の指揮者と分割されたオーケストラ、バス、聴衆のための 1993年7月1日 岩城宏之、譚盾(指揮)、

高橋アキ(プリペアード・ピアノ)、 王明君(塤)、岸本力(バス)
東京交響楽団

18 マグヌス・リンドベルイ
(1958-)
フィンランド オーラ W.ルトスワフスキの思い出のために 1994年6月11日 山下一史(指揮)
東京交響楽団
19 オリヴァー・ナッセン
(1952-2018)
イギリス ホルン協奏曲 1994年10月7日 オリヴァー・ナッセン(指揮)、バリー・タックウェル(ホルン)
東京都交響楽団
20 マリー・シェーファー
(1933-2021)
カナダ 精霊 1995年7月8日 秋山和慶(指揮)
東京交響楽団
21 ジグムント・クラウゼ
(1938-)
ポーランド ピアノ協奏曲第2番 1996年10月30日 秋山和慶(指揮)、ジグムント・クラウゼ(ピアノ)
東京交響楽団
22 ピーター・スカルソープ
(1929-2014)
オーストラリア グレート・サンディ・アイランド 1998年10月13日 山下一史(指揮)、山本友重(ヴァイオリン)
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
23 湯浅譲二
(1929-2024)
日本 クロノプラスティクII—エドガー・ヴァレーズ讃— 1999年11月9日 岩城宏之(指揮)
東京交響楽団
24 ジルベール・アミ
(1936-)
フランス チェロとオーケストラのための協奏曲 2000年12月4日 井上道義(指揮)
ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)
東京交響楽団
25 ドイナ・ロタル
(1951-)
ルーマニア 交響曲第3番「スピリット・オブ・エレメンツ」 2001年9月9日 飯森範親(指揮
東京フィルハーモニー交響楽団
26 エサ=ペッカ・サロネン
(1958-)
フィンランド インソムニア 2002年12月1日 エサ=ペッカ・サロネン(指揮)
NHK交響楽団
27 ヘルムート・ラッヘンマン
(1935-)
ドイツ 2003年12月4日 秋山和慶(指揮)
東京交響楽団
28 ヴィンコ・グロボカール
(1934-)
フランス[注釈 6] 「人質」—大オーケストラとサンプラーのための 2004年8月26日 ヴィンコ・グロボカール(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
29 サルヴァトーレ・シャリーノ
(1947-)
イタリア シャドウ・オブ・サウンド—オーケストラのための 2005年8月27日 ティート・チェッケリーニ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
30 マーク=アンドレ・ダルバヴィ
(1961-)
フランス ヤナーチェクの作品によるオーケストラ変奏曲 2006年8月25日 マーク=アンドレ・ダルバヴィ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
31 ジャン=クロード・リセ
(1938-2016)
フランス スキーム—ヴァイオリンとオーケストラのための 2007年9月5日 秋山和慶(指揮)
木村まり(ヴァイオリン)
東京交響楽団
32 ステファーノ・ジェルヴァゾーニ
(1962-)
イタリア ルコネサンス 2008年8月29日 杉山洋一(指揮)
東京都交響楽団
33 ウンスク・チン
(陳銀淑) (1961-)
韓国 シュウ—中国笙とオーケストラのための協奏曲 2009年8月28日 秋山和慶(指揮)
ウー・ウェイ(笙)
東京交響楽団
34 ジョナサン・ハーヴェイ
(1939-2012)
イギリス 80ブレス・フォー・トウキョウ—オーケストラのための 2010年8月30日 沼尻竜典(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団
35 ジュリアン・ユー
(于京君) (1957-)
中国 交響組曲「我らの自然界のために」 2011年8月25日 山田和樹(指揮)
東京都交響楽団
36 細川俊夫
(1955-)
日本 トランペット協奏曲「霧のなかで」 2013年9月5日 準・メルクル(指揮)
ジェロエン・ベルヴェルツ(トランペット)
東京都交響楽団
37 パスカル・デュサパン
(1955-)
フランス 風に耳をすませば—オペラ《ペンテジレーア》からの3つの場面 2014年8月21日 アレクサンダー・リープライヒ(指揮)
ナターシャ・ペトリンスキー(メゾ・ソプラノ)
東京交響楽団
38 ハインツ・ホリガー
(1939-)
スイス デンマーリヒト—薄明 ソプラノと大管弦楽のための5つの俳句 2015年8月27日 ハインツ・ホリガー(指揮)
サラ・ヴェゲナー(ソプラノ)
東京交響楽団
39 カイヤ・サーリアホ
(1952-2023)
フィンランド トランス(変わりゆく) 2016年8月30日 エルネスト・マルティネス=イスキエルド(指揮)、

グザヴィエ・ドゥ・メストレ(ハープ)
東京交響楽団

40 ゲオルク・フリードリヒ・ハース
(1953-)
オーストリア ヴァイオリン協奏曲第2番 2017年9月7日 イラン・ヴォルコフ(指揮)
ミランダ・クックソン(ヴァイオリン)
東京交響楽団
41 イェルク・ヴィトマン
(1973-)
ドイツ ヴァイオリン協奏曲第2番 2018年8月31日 イェルク・ヴィトマン(指揮・クラリネット)
カロリン・ヴィトマン(ヴァイオリン)
東京都交響楽団
42 ミカエル・ジャレル
(1958-)
スイス 『4つの印象』 ヴァイオリンとオーケストラのための協奏曲 2019年8月30日 パスカル・ロフェ(指揮)
ルノー・カプソン(ヴァイオリン)
東京交響楽団
43 マティアス・ピンチャー
(1971-)
ドイツ 河[ネハロート] オーケストラのための 2021年8月27日 マティアス・ピンチャー(指揮)
東京交響楽団
44 イザベル・ムンドリー
(1963-)
ドイツ 身ぶり(ジェスチャー) ヴィオラとオーケストラのための 2022年8月28日 ニルス・メンケマイヤー(ヴィオラ)
ミヒャエル・ヴェンデベルク(指揮)
東京交響楽団
45 オルガ・ノイヴィルト
(1968-)
オーストリア オルランド・ワールド 2023年8月24日 ヴィルピ・ライサネン(メソ・ソプラノ)
マティアス・ピンチャー(指揮)
東京交響楽団
46 フィリップ・マヌリ
(1952-)
フランス プレサンス 空間化された大オーケストラのための 2024年8月23日 ブラッド・ラブマン(指揮)
東京交響楽団
47 ジョルジュ・アペルギス
(1945-)
ギリシャ 大管弦楽のための「エチュードⅧ」 2025年8月29日 エミリオ・ポマリコ(指揮)
東京交響楽団


脚注 

注釈

  1. ^ 武満は1996年に没したが、委嘱の人選は1998年の分まで行っていた。2002年のエサ=ペッカ・サロネンも武満の指名だった (「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ 委嘱作品一覧」サントリーホール サマーフェスティバル2019 公演プログラム p81)。
  2. ^ 2010年から2017年までは「サントリー芸術財団サマーフェスティバル」、2018年からは「サントリーホール サマーフェスティバル」
  3. ^ ルーマニア生まれのギリシャ系フランス人
  4. ^ 日本統治時代の朝鮮出身
  5. ^ ドイツ出身
  6. ^ スロベニア系フランス人

出典

  1. ^ a b c Global Partnership | サントリーホール 2020年4月8日閲覧。
  2. ^ 特別インタヴュ- <サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ>監修に就任, 2001年<武満徹作曲賞>の審査にあたる湯浅譲二氏 / 湯浅譲二. 音楽芸術 56(8), pp68-72, 1998-08
  3. ^ 沼野雄司「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズの歴史と成果」 | サントリーホール 2020年4月9日閲覧
  4. ^ サントリーホール公演アーカイブ 2020年4月8日閲覧。
  5. ^ 「サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ 委嘱作品一覧」サントリーホール サマーフェスティバル2019 公演プログラム pp80-81

外部リンク

 

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