エアポートバス東京・成田
エアポートバス東京・成田(エアポートバスとうきょう・なりた、英: AIRPORT BUS TYO-NRT)は、主に東京駅と成田国際空港(以下、成田空港と記述)を片道1,500円(深夜早朝便は3,000円)で運行する高速バス(空港連絡バス)。本項では、その前身となった東京シャトル、有楽町シャトル、THEアクセス成田(ジアクセスなりた)についても記述する。 概説成田国際空港における格安航空会社 (LCC) の就航を受けて開業した低価格高速バスである。 当初のターゲットであったLCC利用者以外の層や外国人の乗客も増え、結果的に空港アクセスの多様化に貢献[1]。特に「東京シャトル」と「THEアクセス成田」の2路線は平均乗車率70 %台を維持し、利用客数も2013(平成25)年度から2018(平成30)年度の5年間で計200万人増加した[2]。経済誌においても、「格安バスが成田アクセスに間違いなく風穴を開けた」と評されている[1]。 なお、東京都心と成田国際空港を結ぶ低価格高速バスは、「東京シャトル」運行以前より存在しており、ツアーバスの形式で東京シャトルと同水準の1,000円で上野や浅草を結んでいたが[3]、知名度の低さなどで、いずれも短命に終わっている。[要出典]これらはツアーバスのため完全予約制で、成田空港では正規のバス乗り場が使用できず、大型車用の駐車場で乗り降りしていた。 ほぼ同等のサービスを提供していた、京成グループが運行する「東京シャトル」および「有楽町シャトル」と、JRバス関東とビィー・トランセグループが運行する「THEアクセス成田」が統合して2020年(令和2年)2月1日より運行している[2][4][5]。 路線沿革東京シャトル・THEアクセス成田の運行開始成田国際空港における格安航空会社 (LCC) の就航を受け、都心と同空港を結ぶ低価格空港連絡バスとして、2012年(平成24年)7月3日に京成グループが「東京シャトル」を運行開始、同年8月10日にビィー・トランセグループが「THEアクセス成田」の運行を開始した[2]。 運賃は、片道1,000円である。いずれも従来の東京駅 - 成田空港を結ぶリムジンバスとは異なり、東京シティエアターミナル(T-CAT、箱崎)を経由しない直行路線であり、東京駅 - 成田空港間の所要時間は60分ほどに設定された。 成田空港では、第2ターミナル2箇所、第1ターミナル1箇所に両路線用の停留所が設けられ、2つの路線が共同使用することとなった。東京駅では、「東京シャトル」が外堀通り沿い、「THEアクセス成田」が八重洲通り沿いに停車し、THEアクセス成田はこのほか銀座駅(数寄屋橋西銀座デパート前)にも停留所を設置した。 運行事業者は当初、「東京シャトル」が京成バスと成田空港交通の2社共同運行、「THEアクセス成田」が平和交通の1社であった。 利用者数の増加開業後、「東京シャトル」はキャンペーン運賃の導入もあって順調に利用者数を伸ばしたが、「THEアクセス成田」のほうは成田空港に発券カウンターを持たないことや、知名度不足から利用者数が低迷していた[1]。 しかし、次第に「トイレがついている」「座席がゆったりしている」などの口コミで利用者が増えるようになり[1]、2013年(平成25年)1月1日には成田空港近隣ホテル便を新設、さらに同年4月26日よりグループのあすか交通との共同運行を開始し、満席となることも珍しくなくなった。 一方の「東京シャトル」にも京成バスシステム、東京空港交通の子会社であるリムジン・パッセンジャーサービスが参入(リムジン・パッセンジャーサービスは2018年〈平成30年〉に撤退)したほか2013年(平成25年)9月1日には銀座駅経由便を新設、江東区青海の大江戸温泉物語への乗り入れも開始した。 このような2陣営の競争により、低価格空港連絡バスの規模は徐々に拡大していった。 なお平和交通は、1日2往復運行していた、大網駅を出て、土気駅・誉田駅・鎌取駅・大宮町バスターミナルを経由して成田空港へ向かうTHEアクセス成田外房大網線を2013年4月25日に廃止している[6][7]。 JRバス関東のTHEアクセス成田参入こうしたなか、都市間高速バスを運行するJRバス関東は、LCCの便数増に伴い競合する長距離バス路線の輸送量が低下し、新たな収益策として、成田空港への乗り入れを模索していた[8]。 これに加え、外国人旅行者の増加を踏まえたJR線の補完の必要もあり、銀座・東京駅経由で人気が高く、Suicaを導入していることからJR東日本の認知度も高かったTHEアクセス成田への参入を決め[8]、2014年(平成26年)12月16日に空港行5便、空港発6便の運行を開始した[2]。 あわせて、同路線は東京駅の乗り場をJR高速バスターミナルに変更した。 この間、JRバス関東は、2013年(平成25年)9月から多古町と接触し[9]、空港に近い多古台地区に東関東支店を開設する準備を進めていた。 成田空港第3ターミナルの開業2015年(平成27年)4月8日には、成田空港にLCC専用の第3ターミナルが開業し、両路線も新ターミナルへの乗り入れが開始された。あわせて、「THEアクセス成田」においては大幅な増便が実施され、両者合わせて概ね10分間隔の高頻度運行となった。 ビィー・トランセグループはこれにあわせ、千葉市緑区の西岬観光本社内に、同社高速バス部門の前身となる平和交通椎名崎営業所を新設、JRバス関東は同年6月20日、多古台に東関東支店を移転・開設し、空港線増発への体制を整えた。 また、第3ターミナルにおいては、両路線の乗り場が分離されたほか、「THEアクセス成田」もカウンターにおいて乗車券の販売を開始した。 さらに、2015年(平成27年)4月から「THEアクセス成田」はピーチ・アビエーション機内において、「東京シャトル」は同年7月からジェットスター・ジャパン機内において乗車券の事前販売を開始した。 有楽町シャトルの運行開始2017年(平成29年)12月16日には2020年東京オリンピック・パラリンピックを見据えたバリアフリー実証実験運行路線として東京駅鍛冶橋駐車場と成田空港第2ターミナルを結ぶ「有楽町シャトル」が京成バスによって開設された。運賃は「東京シャトル」と同額だが、バリアフリー対応のため、リフト付き車両や床の低い2階建て車両を投入しているのが特徴であった。 東京シャトル・THEアクセス成田の統合によるエアポートバス東京・成田の運行開始これまで、京成グループとJRバス関東・ビィー・トランセグループがそれぞれ別々に運行してきたが、予約方法や乗り場、乗車方法が互いに異なるため、不便を来しており、利用者から「わかりにくい」との声が寄せられていた[2]。そのため、2020年(令和2年)2月1日より「東京シャトル」(「有楽町シャトル」含む)と「THEアクセス成田」を統合し、新規参入の京成トランジットバスも含めた8社で、「エアポートバス東京・成田(AIRPORT BUS『TYO-NRT』)」として共同運行することになった。運賃は昼間便1,000円、深夜便2,000円に一本化し、東京駅・銀座駅の乗降場所を「THEアクセス成田」側に統一した。 成田空港行は予約者用の全席指定席便と当日乗車用の全席自由席便の2種類とし、深夜・早朝を除く東京駅行は、成田空港の発券カウンターで時間指定の乗車券を購入の上乗車する形態とした[10]。 2019年(令和元年)12月現在、「東京シャトル」は123便、「THEアクセス成田」は142便運行していたが、本統合と京成トランジットバスの参入で更に19便増やし、1日往復で284便、1時間に最大10便運行する日本最大級の空港連絡バスとなった[4][11]。また、高速バス全体としても日本一運行本数が多い路線となった[12]。 しかし、路線統合とほぼ時を同じくして発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行に伴う国際線の大幅減便の影響が直撃し、一時は1時間に1本までの減便を余儀なくされ、2021年11月時点の臨時ダイヤでは上下113便に減便されている。 年表東京シャトル
有楽町シャトル
THEアクセス成田
エアポートバス東京・成田
運行会社以下の3企業グループ10社による共同運行[48]。なお、成田空港近隣ホテル行きは全便平和交通が運行[49]。括弧内は運行担当支店・営業所。 路線東京発ほとんどは東京駅八重洲南口の東京駅高速バスターミナル7番、8番乗り場が始発であるが、一部は、銀座駅、鍛冶橋駐車場、東雲イオン前、東雲車庫始発で東京駅を経由して成田空港へ向かう。ただし銀座駅始発の一部は東京駅を経由しない[49][52]。行先は、銀座駅発、東京駅経由の夕方の4便が成田空港近隣ホテル行きである他は、成田空港行きであり第3ターミナル、第2ターミナル、第1ターミナルの順に停車する[49]。なお、長大な第2ターミナルでは、南側の2番、北側の19番の双方に停車する[52]。 なお、運行会社によって車内設備が異なるため、時刻表上にトイレの有無の表記がある。また、旧有楽町シャトルは鍛冶橋駐車場始発東京駅経由となるため、他便と予約締め切り時刻が異なる(始発停留所発車時刻の10分前に締め切るため、鍛冶橋駐車場始発は東京駅基準では発車時刻20分前に締め切りとなる)[49][53]。なお東京駅、鍛冶橋駐車場始発以外の便は、自由席制で予約はできない[54]。 成田空港発基本的に成田空港第3ターミナル2番、第2ターミナル2番、19番、第1ターミナル31番の順に運行し、東京駅日本橋口へ向かう。一部のバスはさらに銀座駅、鍛冶橋駐車場、東雲イオン前、東雲車庫が終着となる。成田空港第3ターミナル1番始発の便もあり、これは第2ターミナルを経由せず、第1ターミナル31番のみ経由する[49]。 成田空港発は全便が座席定員制で、成田空港の各ターミナルビル内にある乗車券販売カウンターで時刻指定の乗車券を購入する必要がある。ただし早朝・深夜の計5便はチケットカウンターが閉鎖されるため、乗車の際に直接現金またはICカードで運賃を支払う[49]。これに合わせ、成田空港では当路線を含む東京都心までの運賃が低廉なバス(Low Cost Bus: LCB)専用の乗車券カウンター(LCBカウンター)を新設した[5][55]。 車両ほとんどは、ハイデッカー高速バス車両で運行されているが、鍛冶橋駐車場発着のみスカニア・バンホール製の2階建て車両が運用されている。以下の記述は統合前のものであり、今後の動向はまだ確定していない。 旧東京シャトル旧東京シャトルは、緑色の独自塗装に「LCC」「TYO-NRT」のロゴを配置した専用車両を中心に運行されている。この車両は、トイレを設置せず、LCCのように座席間隔を詰めて定員を多めにとることで運賃収入増を図っている。定員は正席49人である。 運行各社とも、三菱ふそう・エアロエースの専用車を導入しているほか、京成バスシステムと成田空港交通には日野・セレガの専用車も配置されている。
旧THEアクセス成田これに対し、旧THEアクセス成田の車両は、他路線との共通運用を前提とした仕様であり、車両を汎用化することでコスト削減を図ろうという発想である。このため、トイレが設置されており、定員は38 - 44人とやや少なめである。 運行開始にあたり、平和交通はエアロエースの空港線対応車を3台導入したほか、従来の通勤高速バス用車両もトランクの広い一部車両をほぼそのまま使用している。 2013年9月には、補助席を設けず、座席横幅を拡大したセレガの「ワイドシート車」が導入され、さらなるサービス改善が図られた。この車両は、車内だけでなく、出入り口ドアの形状や窓配置を含め、翌年参入するJRバス関東の標準車両によく似た仕様となっている。 あすか交通は、元木更津営業所の貸切バス2台、元クラブツーリズム専用車を改造して導入したほか、平和交通と共通仕様のワイドシート車も有している。 JRバス関東は、参入にあたって在来車のトランクを、同社中央道支店において空港輸送に適した台車付きに改造したほか、ICカード対応の運賃箱を設置した。運用にあたっているのは、原則としてセレガの44席車で、補助席のない幅広座席である。
旧有楽町シャトル旧有楽町シャトル(現鍛冶橋駐車場発着便)は、2020年東京オリンピックに向けたバリアフリーの実証実験路線であることから、約半数の便が車椅子対応のリフト付き車両で運行されている。リモコンで操作できる車椅子用の乗降リフトが搭載されており、一定のサイズ以内の車椅子であれば、そのまま乗車可能である。 また、2018年(平成30年)3月からはスカニア・バンホール製の2階建て車両が1台導入された。この車両は、1階部分の床が平坦なので、スロープ板を設置すればノンステップ路線バスのように車椅子がスピーディに乗り込めるようになっている。
脚注
関連項目
外部リンク |