SMSS J031300.36-670839.3 は、太陽系 から見てみずへび座 の方向約30,000 光年 の距離にある恒星 。「SMSS J0313-6708[ 3] [ 1] 」や「SM0313[ 2] 」と省略して呼ばれることもある。約136億年前に生まれたとされ、2014年時点で既知の恒星の中で最も古い恒星であるとされた[ 7] 。
特徴
天の川銀河 の銀河ハロー に位置するとされる[ 8] 。発見当初は太陽系から約6,000 光年の距離にあるとされた[ 3] が、2022年に公開されたガイア計画 第3回データリリースの年周視差では約30,000 光年の距離にある[ 5] [ 注 1] 。
スペクトル分類上はK型の準巨星 とされる[ 8] 。SMSS J031300.36-670839.3は、鉄 の存在量が太陽 の鉄の存在量と比べて1000万分の1以下と極めて少なく[ 3] [ 8] 、炭素 の存在量が鉄の1000倍以上と非常に多いことから、「炭素過剰金属欠乏星 (Carbon enhanced metal poor star, CEMP)」と呼ばれる化学特異星 に分類される[ 6] 。
分光観測で得られた元素組成から、低エネルギーの超新星爆発 で生成されたと考えられる炭素、マグネシウム 、カルシウム などを含むことがわかっている[ 3] 。リチウムはビッグバン元素合成 で生成されたと想定される存在量に比べて極めて少ない[ 3] 。これは、第1世代の恒星とされる種族III の星が赤色巨星分枝星 のフェーズにあった際に、恒星の高温領域で破壊された結果であると考えられている[ 3] 。
これらの特徴からSMSS J031300.36-670839.3は、種族IIIの単独の星が低エネルギーの超新星爆発 を起こした結果残されたガス雲から生まれた、種族II の恒星の中でも最初期のものであると考えられている[ 3] [ 8] [ 7] 。また、第1世代の恒星の超新星爆発は、それまで考えられていたものよりも強力ではなく、低エネルギーの超新星爆発がありふれたものであった可能性が示唆された[ 7] 。
発見
この恒星は、オーストラリア国立大学 ストロムロ山天文台 の天文学者 のチームによって発見され[ 3] [ 7] 、2014年2月9日のネイチャー で報告された[ 3] 。
この発見は、オーストラリア ニューサウスウェールズ州 クーナバラブランの近くにあるサイディング・スプリング天文台 に設置された、完全自動化された天体望遠鏡 「SkyMapper」によって可能となった[ 9] 。2012年10月2日にSkyMapper望遠鏡で得られた測光観測の結果により、この星が特に低金属量であることが予測された。ついで2013年1月2日に同天文台のオーストラリア国立大学2.3 メートル望遠鏡で中分解能分光観測が行われ、この星が金属欠乏星であることが確認された。さらに、チリの6.5 mマゼラン・クレイ望遠鏡の高分解能分光器MIKE (Magellan Inamori Kyocera Echelle) を用いた観測により、その特異な元素組成が明らかにされた[ 3] 。
脚注
注釈
^ a b c パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
^ ある元素の水素に対する存在量の比を、太陽での組成比を基準として、それに対する比の常用対数で表したもの。0であれば太陽と組成比が同じ、-1であれば太陽の組成比が10分の1、1であれば太陽の組成比の10倍であることを示す。
出典
^ a b 『鉄の見つからなかった星、宇宙初期のブラックホール生成の痕跡と判明 』(プレスリリース)2014年9月18日。https://www.ipmu.jp/ja/node/1992 。2022年9月15日 閲覧 。
^ a b Kooser, Amanda (2014年2月10日). “Astronomers track down oldest known star in the universe ”. CNET . 2022年9月15日 閲覧。
^ a b c d e f g h i j k l m n o Keller, S. C.; Bessell, M. S.; Frebel, A.; Casey, A. R.; Asplund, M.; Jacobson, H. R.; Lind, K.; Norris, J. E. et al. (2014). “A single low-energy, iron-poor supernova as the source of metals in the star SMSS J031300.36−670839.3”. Nature (Springer Science and Business Media LLC) 506 (7489): 463–466. arXiv :1402.1517 . Bibcode : 2014Natur.506..463K . doi :10.1038/nature12990 . ISSN 0028-0836 .
^ a b "SMSS J031300.36-670839.3" . SIMBAD . Centre de données astronomiques de Strasbourg . 2022年9月15日閲覧 。
^ a b c d e f Gaia Collaboration. “Gaia DR3 Part 1. Main source” . VizieR On-line Data Catalog: I/355/gaiadr3 . Bibcode : 2022yCat.1355....0G . http://vizier.idia.ac.za/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ6322a718199650&-out.add=.&-source=I/355/gaiadr3&-c=048.25164184225%20-67.14425530304,eq=ICRS,rs=2&-out.orig=o .
^ a b Yoon, Jinmi; Beers, Timothy C.; Placco, Vinicius M.; Rasmussen, Kaitlin C.; Carollo, Daniela; He, Siyu; Hansen, Terese T.; Roederer, Ian U. et al. (2016-12-05). “Observational Constraints on First-star Nucleosynthesis. I. Evidence for Multiple Progenitors of CEMP-No Stars”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 833 (1): 20. arXiv :1607.06336 . Bibcode : 2016ApJ...833...20Y . doi :10.3847/0004-637x/833/1/20 . ISSN 1538-4357 .
^ a b c d “136億歳の星を発見 ”. アストロアーツ (2014年2月10日). 2022年9月15日 閲覧。
^ a b c d Bessell, Michael S.; Collet, Remo; Keller, Stefan C.; Frebel, Anna; Heger, Alexander; Casey, Andrew R.; Masseron, Thomas; Asplund, Martin et al. (2015-06-08). “Nucleosynthesis in a Primordial Supernova: Carbon and Oxygen Abundances in SMSS J031300.36-670839.3”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 806 (1): L16. arXiv :1505.03756 . Bibcode : 2015ApJ...806L..16B . doi :10.1088/2041-8205/806/1/l16 . ISSN 2041-8213 .
^ Keller, Stefan (2014年2月9日). “The oldest star discovery tells much about the early universe ”. The Conversation . 2022年9月15日 閲覧。
関連項目