HE 1327-2326は、第1世代の恒星の生き残りであるという説。この説の場合、HE 1327-2326が準巨星の段階にあり[10]、主系列星[6]に近いことが問題となる。HE 0107-5240は巨星まで進化した恒星であるので、内部の元素合成がある程度進んでいるが、HE 1327-2326はそれほど進化していないため、表面は内部で合成された元素の影響を受けていないと考えられるからである[6]。検出される元素の説明は、星間物質からHE 1327-2326の表面にわずかな降着があるのと、軽元素を供給する源が必要となる[6]。この場合、やや質量の大きな恒星とHE 1327-2326が連星をなしており、先に寿命を迎えた恒星から軽元素が供給されたと考えられている。この場合、連星である証拠が見つかっていないのが問題であるが、恐らく白色矮星として暗く冷えており、検出困難な状態になっていると考えられている[6]。またこの場合、どのようにして初期宇宙から低質量星が生成されるのかが問題である[6]。
観測史
HE 1327-2326は、ヨーロッパ南天天文台のラ・シヤ天文台に設置されている口径1メートルのシュミット式望遠鏡を用いたクエーサー探索のための掃天観測で撮影された明るい金属欠乏星1,777個の中から発見された。2003年に、同天文台の3.6メートル望遠鏡を用いた観測で極端に金属量が少ないことが明らかとなり[2][6]、2004年のすばる望遠鏡の高分散分光器 (HDS) を用いた分光観測によって詳しい化学組成が明らかとされた[2][6]。
^Iwamoto, Nobuyuki; Umeda, Hideyuki; Tominaga, Nozomu; Nomoto, Ken'ichi; Maeda, Keiichi (2005-07-15). “The First Chemical Enrichment in the Universe and the Formation of Hyper Metal-Poor Stars”. Science (American Association for the Advancement of Science (AAAS)) 309 (5733): 451-453. arXiv:astro-ph/0505524. Bibcode: 2005Sci...309..451I. doi:10.1126/science.1112997. ISSN0036-8075.
^ abcFrebel, Anna et al. (2008). “HE 1327-2326, an Unevolved Star with [Fe/H]<-5.0. II. New 3D-1D Corrected Abundances from a Very Large Telescope UVES Spectrum”. The Astrophysical Journal (American Astronomical Society) 684 (1): 588-602. arXiv:0805.3341. Bibcode: 2008ApJ...684..588F. doi:10.1086/590327. ISSN0004-637X.