OU (ゲーム)
『OU』(オーユー)は、room6が開発しジー・モードより2023年8月31日に発売されたアドベンチャーゲーム。room6が展開するインディーゲームレーベル「ヨカゼ」のソフトの一つ[1][2]。 概要不思議な風景が広がる世界「ウクロニア」を舞台に、記憶を失っている少年・OUがオポッサムのサリーに導かれ、自身の物語を探す旅に出る。ウクロニアは複数の場面に分かれており、辺りにある水場の中にOUたちが飛び込むことで次の場面に移動するが、飛び込む前と後の場面には脈絡がなく、さながら、夢の中をさまよっているように物語が進行していく[3]。 作品内のグラフィックは、企画・シナリオも手掛ける幸田御魚が描いた児童文学の挿絵のようなペン画が用いられており[4][5]、公式サイトでは本作のジャンル名を「ピクチャレスク・アドベンチャー」と称している[6]。また、BGMには、椎葉大翼の作曲による、ギターをフィーチャーした郷愁感のある生演奏の楽曲が用いられている[4][7]。 システムOUを操作する各エリアの表示は横スクロール型で、前述のようにエリア内にある水の中に飛び込むと次の場面に移動する[5]。 OUはふせんを所持しており、旅の途中でも様々な種類のふせんが手に入る。ふせんを背景の一部に貼り付けると対象物に関する解説文が表示されるようになり、また、ふせんを投げて遠くのものに当てるという使い方もできる。一部のふせんは対象物を光らせたり燃やしたりする効果を持ち、これを利用して道中の仕掛けを解く場面もある[5]。 本作は周回プレイを前提とした内容になっている。当初の目的地である「組み立ての杜(もり)」に到着するまでの道中でとった行動により物語は2つのルートのいずれかに分岐し、さらにルートの最後に提示される選択肢によって結末が変化する[5]。そしてスタッフロールが流れてエンディングを迎えた後に再プレイするとサリーの態度や言動などが変化している新たな周回が始まる[5]。周回を続ける中で条件を満たすと物語が進展し、最終エンディングを迎えることになる。 2023年12月20日配信の無料アップデートにより、サリーを主人公とするシナリオ「サリーの物語」と作中の用語や登場人物の情報などを閲覧できるモード「ウクロニア百科事典」が追加された[8]。 用語
登場人物
主題歌開発開発開始までの経緯ジー・モードでは、フィーチャーフォン用ゲームの復刻プロジェクト「G-MODEアーカイブス」を展開しており、竹下功一がプロデューサーを務めている[10]。ある時、竹下は、復刻したゲームのエンドクレジットで幸田御魚の名前をよく見かけることに気づき[注 1]、加えて、ユーザーから寄せられた復刻リクエストの中に幸田が手掛けた『セパスチャンネル』やホラーゲーム三部作(千羽鶴シリーズ)が挙がっていたことから、印象的なタイトルには必ず幸田の名前があると感じて気になっていた[11]。その後、ジー・モードで新しい作品を作ることになった2020年の年末、竹下は思い切って幸田に声掛けした[11][12]。幸田は当初、企画についてそれほど期待していなかったが、行きつけの純喫茶まで訪れる竹下の熱意に押され、幸田が作成したコンセプトアートや作品イメージの案が了承されたことで本作の開発が実現した[11][12]。 構想ビジュアルやキャラクター、作品構成などは、ほぼ最初の構想のまま完成まで至り、当初からの変更点はストーリーや設定の一部など少数にとどまっている[12]。制作に際して、竹下は幸田に「問題作になってもいいです、作りたいものを作ってください」と伝えており、幸田は後に「通常のゲーム制作ではほとんどあり得ないほどに自分の頭の中にあったものがそのまま形になった」と述懐している[13]。 幸田の制作当初の構想にあったのは「水の中に飛び込んでシーンを移動する」という設定で、これに、メキシコ文化やメタ手法など、幸田が強い関心を持っていた要素を入れ込みながらゲームの仕組みやテーマ、ストーリーを組み立てていった[12]。ゲームの導き手にオポッサム(サリー)を採用したのは、メキシコでオポッサムがとても愛され、伝説にもよく登場する動物であることが理由で、「オポッサムと冒険するゲーム」という構想も抱いていた[13][11]。また、自身が強く影響を受けてきたメタ作品として、幸田はミヒャエル・エンデの小説『はてしない物語』やユーリ・ノルシュテイン監督のアニメ映画『話の話』を挙げ、そのうえで、「「僕らの現実」と繋がった地に足のついたメタ作品、テーマや作品構造として必然的にメタ作品であるものを作り上げたかった」と語っている[12]。 公式サイト等で本作の内容を表現する際には「アドベンチャーゲームの形をした「何か」」という言葉が用いられており[4]、幸田は開発側に対し、大枠としてゲームの体裁をとりつつも、できるだけゲーム的にならないようにと依頼している[12]。この「ゲーム的」とは、UIデザインや、SE・エフェクトなどの演出表現のことを指し、これらをできるだけ控え目にすることで「ゲームというより読書をしている」ようなプレイ体験を実現することを目指した[12]。ただし、それを突き詰めるとプレイヤーにとって不親切なものになりかねないため、room6やジー・モードと話し合いながら匙加減を調整している[12]。 幸田が描いた本作のグラフィックの原画はボールペンによるほぼ1発描きで、細かい砂利のようなものでもコピー・アンド・ペーストを用いず、ゲーム内で暗くて見えない部分や一瞬しか映らない部分などの作り込みも行っている[11]。こうしたこだわりについて幸田は「ゲームの進行によってどこで切り抜かれても一枚の絵として成立するものを目指した」と語っている[13]。 音楽音楽を担当した椎葉大翼は、以前にroom6が発売した『World for Two』の楽曲を手掛けており、本作の開発をroom6が担当することになった際に、room6経由で依頼を受けた[12]。楽曲制作は幸田が描いたコンセプトアートを基に行われ、椎葉は幸田に「(アートに)3行程度の文章を添えてください」と伝えた[12]。一方、幸田からは「ギター1本で曲を作ってほしい」との要望があり「ギターメインでラテン音楽の要素を取り入れたもの」という方向性も示された[12]。これを受け椎葉は、黒い墨の濃淡だけで描き分ける水墨画になぞらえて、ギター1本で場面ごとの「濃淡」を付けることに気を配り楽曲制作を行った[12]。作中のBGMには全曲にギターパートが含まれており[14]、ギターのみの楽曲のほか、クライマックスの場面では弦楽器や打楽器が加わっている[12]。また、椎葉は楽曲提供以外に、ゲームプレイ中の音楽や効果音が鳴るタイミングのチェックなど、音楽演出に関するディレクションも行っている[12]。 発売時期本作のプロジェクトは当初、半年から1年程度で作り切る小規模なものとしてスタートした[11][12]が、結果として、度重なる発売時期延期の措置が取られている。本作の情報が初めて正式発表されたのは2021年4月5日で[15][注 2]、同年6月5日配信のWeb番組「INDIE Live Expo 2021」の中で2021年リリース予定とアナウンスされた[17]が、その後、同年11月6日に発売時期を「2022年内」に延期することを発表[18]、さらに2022年12月4日に2023年3月予定と発表し[19]、2023年2月21日には「2023年夏」への延期を発表[20]、同年7月7日に8月31日発売とアナウンスされ[21]ようやく発売に至った。当初、幸田のアートに関する担当はキャラデザインや背景の構成ラフだけで、それ以外は他のデザイナーたちの協力を得て制作する予定だった[11][12]。しかし、開発を進める中で、妥協したくないという幸田の気持ちと周囲の薦めにより、幸田が1人で絵を描きあげることやアニメーションに徹底的にこだわる方針が決まり、幸田の担当領域が広がったため、竹下に製作期間倍増を認可してもらい、結果的にリリースまで2年半ほどかかることとなった[11][12]。 評価
コミック
脚注注釈出典
外部リンク |
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