2016年リオデジャネイロオリンピックのボクシング競技(2016ねんリオデジャネイロオリンピックのボクシングきょうぎ)は国際ボクシング協会 (AIBA)が管轄して開催されるオリンピックのボクシング競技である。前回同様男子10、女子3階級実施された。会場はリオセントロホール2。
概要
男子は各階級ごとに出場選手数が異なる。女子は各階級12名が参加。各国代表は各階級1選手の出場が認められており、下記の大会の対象者が五輪の出場資格を得た。
本大会では、これまで禁止されていたプロボクサーの参加がオリンピック史上初めて認められ、1984年以来初めてヘッドギアが廃止となり(女子は着用が義務)[1]、ジャッジの採点方法に「10ポイント・マスト」が採用された。
男子
- ワールド・シリーズ・オブ・ボクシング(WSB)2015年シーズンのランキング上位2選手。(ライトフライ級、ヘビー級、スーパーヘビー級は上位1選手)
- AIBAプロ・ボクシング(APB)2015年9月時点でのランキング上位2選手。
- 2015年世界ボクシング選手権大会の上位3選手。(ライトフライ級、フライ級、ライトヘビー級は上位2選手。ヘビー級、スーパーヘビー級は上位1選手)
- 各大陸予選の上位3選手。
- 世界最終予選の上位5選手。(ライトフライ級は上位2選手、ヘビー級、スーパーヘビー級は上位1選手)
- ワールド・シリーズ・オブ・ボクシング&AIBAプロ・ボクシング最終予選の上位3選手。(ヘビー級、スーパーヘビー級は上位1選手)
- 開催国枠、開催国ブラジルの5選手。
- 主催者推薦枠の5選手。
階級
|
WSB ランキング
|
APB ランキング
|
世界選手権
|
各大陸予選
|
世界最終予選
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APB & WSB 最終予選
|
開催国枠
|
主催者 推薦枠
|
合計
|
アフリカ
|
アメリカ
|
AS & OC
|
ヨーロッパ
|
ライトフライ級 |
1 |
2 |
2 |
3 |
2 |
3 |
3 |
3 |
2 |
1 |
0 |
22
|
フライ級 |
2 |
2 |
2 |
3 |
2 |
3 |
3 |
3 |
5 |
1 |
0 |
26
|
バンタム級 |
2 |
2 |
3 |
3 |
2 |
3 |
3 |
3 |
5 |
1 |
1 |
28
|
ライト級 |
2 |
2 |
3 |
3 |
3 |
3 |
3 |
3 |
5 |
0 |
1 |
28
|
ライトウェルター級 |
2 |
2 |
3 |
3 |
2 |
3 |
3 |
3 |
5 |
1 |
1 |
28
|
ウェルター級 |
2 |
2 |
3 |
3 |
3 |
3 |
3 |
3 |
5 |
0 |
1 |
28
|
ミドル級 |
2 |
2 |
3 |
3 |
3 |
3 |
3 |
3 |
5 |
0 |
1 |
28
|
ライトヘビー級 |
2 |
2 |
2 |
3 |
2 |
3 |
3 |
3 |
5 |
1 |
0 |
26
|
ヘビー級 |
1 |
2 |
1 |
3 |
3 |
3 |
3 |
1 |
1 |
0 |
0 |
18
|
スーパーヘビー級 |
1 |
2 |
1 |
3 |
3 |
3 |
3 |
1 |
1 |
0 |
0 |
18
|
合計 |
17 |
20 |
23 |
30 |
25 |
30 |
30 |
26 |
39 |
5 |
5 |
250
|
女子
階級
|
世界選手権
|
各大陸予選
|
開催国枠
|
主催者 推薦枠
|
合計
|
アフリカ
|
アメリカ
|
AS & OC
|
ヨーロッパ
|
フライ級 |
4 |
1 |
2 |
2 |
2 |
0 |
1 |
12
|
ライト級 |
4 |
1 |
1 |
2 |
2 |
1 |
1 |
12
|
ミドル級 |
4 |
1 |
2 |
2 |
2 |
0 |
1 |
12
|
合計 |
12 |
3 |
5 |
6 |
6 |
1 |
3 |
36
|
競技結果
男子
女子
国・地域別のメダル獲得数
プロ解禁
2016年6月1日、国際ボクシング協会 (AIBA) は、臨時総会で賛成88票、反対0票、棄権4票という圧倒的な支持でプロ選手のオリンピック参加解禁を決定した。リオオリンピックで実施される28競技のうちプロ選手の参加を認めていないのはボクシングだけという事情もあり、「オリンピックにトップ選手を出場させてこそ、本当の戦いが見られる」というAIBAの呉経国会長の主張が受け入れられた形になった。しかしプロ側はこの決定に大きな反発を見せた。大物プロモーターのボブ・アラムはプロとアマが対戦すれば「冗談じゃないくらいの大けがにつながる」と実力差のある対戦によって事故が起こることを危惧し、「狂気の沙汰だ」と批判をした。またアラムは、リオオリンピック本番の2カ月前の6月にプロ解禁が決定したことを問題視し「あいつら狂っているんじゃないのか」と憤慨、「AIBAは競技のすべてを牛耳りたいんだ。プロボクシングが大金を生むことに気づいたのだろう」と背景に大金を稼ぐプロを招くことによって、そのおこぼれにあずかりたいという考えがあると指摘し、AIBAはアマに留まるべきだと懸念を示した。プロ選手からも、「オリンピックボクシングはアマチュアのためのもので、アマチュアが目指すことのできる最高峰だ。そこで突然ウラジミール・クリチコのようなプロの世界王者で経験豊富な選手が、18歳の10戦しか試合をしたことのない選手と対戦するのかい」(レノックス・ルイス)、「五輪のボクシングを金儲けのための場に変えるためのものだ」(マイク・タイソン)、「アマチュアとプロを戦わせるべきでない。フェアな戦いではないからだ。ヘッドギアの廃止は大きな間違いだ。ボクシングはより安全であるべきで商業主義のために彼らにダメージを負わせるな」(ラリー・ホームズ)、「プロ対アマはボクサーの紛れもない犯罪行為だ。若くて優秀なアマチュアボクサーの命とキャリアを危険に晒すことになる」(フリオ・セサール・チャベス)、「プロボクサーがオリンピック参加を認められることはおかしい。(プロとアマは)2つの異なるスポーツで、バドミントンの選手がテニスをするようなものだ。私がアマの選手だった頃よりAIBAはどんどん悪くなっている。信じがたいね。」(カール・フランプトン)など続々と反対の声が上がった[3][4]。またプロの世界王座認定団体、国際ボクシング連盟(IBF)は、プロとアマによる試合には安全面にリスクがあり、プロボクサーのリオオリンピック出場はスポーツマンシップに反する行為であるとし、認定する王者が出場した場合、タイトルを剥奪すること及び王者でない選手が出場した場合は1年間ランキングから外すことを発表[5]、世界ボクシング評議会(WBC)も同様の措置を取ることを発表した[6]。
参加プロ選手
プロからはアムナット・ルエンロン(2回戦敗退)、ハッサン・ヌダム・ヌジカム(1回戦敗退)、マチュー・ボーダリーキ(準決勝敗退)、カルミネ・トマゾーネ(2回戦敗退)が参加した。
ドーピング違反
ドーピング検査で陽性反応を示したと宣告されていた、ミドル級のアイルランド代表マイケル・オライリーがオリンピック開幕前日に離脱[7]。2016年12月8日、フライ級で銀メダルを獲得していたロシア代表ガブリエル・リンクレアンが決勝戦後に行われたドーピング検査で禁止薬物のツアミノヘプタンの陽性反応を示したとしてメダルを剥奪された[8]。
イギリスの政治風刺雑誌「プライベート・アイ」は、世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の報告として、AIBAがリオオリンピックまでの3年ほとんど、さらにはリオオリンピックまでの1年間はまったく、競技外(抜き打ち)検査を実施していないと報じた[9]。
選手の不法事
2016年8月5日、選手村で女性清掃員2人に性的暴行を加えた容疑で、モロッコ代表のハサン・サアダが逮捕される。同月7日にはナミビア代表のジョナス・ジュニウス・ジョナスが同様に女性清掃員に性的暴行を加えた容疑で逮捕され、清掃中の女性に後ろから近づくと、首にキスをしたり体を触ったりし、性的なジェスチャーをした上で金銭の支払いを示唆したと報じられた[10]。同月11日に「有罪は確定しておらず、捜査結果が出るまでの措置」として両選手は釈放され、ジョナスは同日に行われた試合に出場するが判定負けを喫した。サアダは出場予定の試合が既に終了していたため出場できなかった[11]。
予選
日程
大会
|
期間
|
開催地
|
AIBAプロ・ボクシング(APB)ランキング |
2014年10月24日 – 2015年9月19日 |
|
ワールド・シリーズ・オブ・ボクシング(WSB)ランキング |
2015年1月15日 - 6月13日 |
|
世界ボクシング選手権 |
2015年10月5日 - 10月15日 |
カタール、ドーハ
|
アフリカ大陸予選 |
2016年3月11日 - 3月19日 |
カメルーン、ヤウンデ
|
アメリカ大陸予選 |
2016年3月11日 - 3月19日 |
アルゼンチン、ブエノスアイレス
|
アジア/オセアニア大陸予選 |
2016年3月25日 – 4月2日 |
中華人民共和国、遷安市
|
ヨーロッパ大陸予選 |
2016年4月9日 - 4月17日 |
トルコ、サムスン
|
世界女子ボクシング選手権 |
2016年5月19日 - 5月27日 |
カザフスタン、アスタナ
|
世界最終予選 |
2016年6月16日 - 6月25日 |
アゼルバイジャン、バクー
|
APB & WSB最終予選 |
2016年7月3日 - 7月8日 |
ベネズエラ、バルガス州
|
男子
ライトフライ級 (49 kg)
フライ級 (52 kg)
バンタム級 (56 kg)
ライト級 (60 kg)
ライトウェルター級 (64 kg)
ウェルター級 (69 kg)
ミドル級 (75 kg)
ライトヘビー級 (81 kg)
ヘビー級 (91 kg)
スーパーヘビー級 (+91 kg)
女子
フライ級 (51 kg)
ライト級 (60 kg)
ミドル (75 kg)
脚注
映像資料
外部リンク