実数 体 R の絶対ガロア群は、複素数 体 C が R の分離閉包で [C :R ] = 2 なので、複素共役で生成される位数2の巡回群 である。
体 K の絶対ガロア群 GK (ぜったいガロアぐん、英 : absolute Galois group )とは、K の分離閉包 K sep の K 上のガロア群 のことである。これは、K の代数的閉包 の自己同型のうちで K を固定するもの全てから成る群と一致する。絶対ガロア群は副有限群 であり、内部自己同型 による違いを除いて well-defined である。
K が完全体 であれば K sep は K の代数的閉包 K alg と等しい。K が標数0 の場合や、K が有限体 の場合がこれにあたる。
例
代数的閉体 の絶対ガロア群は単位元のみからなる自明な群である。
実数 体の絶対ガロア群は複素共役と恒等写像からなる位数2の巡回群である。これは、複素数 体 C が 実数体 R の分離閉包であり、[C :R ] = 2 であることから分かる。
Z
^
=
lim
←
Z
/
n
Z
{\displaystyle {\hat {\mathbf {Z} }}=\varprojlim \mathbf {Z} /n\mathbf {Z} }
と同型である(記号については射影極限 参照)。フロベニウス自己同型 Fr は GK の標準的な位相的生成元である。Fr は、q を K の元の数とすると、Fr(x ) = xq (x は K alg の元)で定義される写像である。
未解決問題
有理数 体の絶対ガロア群を直接的に記述する方法が知られていない。有理数体の絶対ガロア群の元で他の元と区別できるよう名前が付けられているのは単位元と複素共役だけである[ 9] 。ベールイの定理 によりこの絶対ガロア群はグロタンディーク の子供のデッサン (曲面上の地図)に忠実に作用するので、代数体のガロア理論を"見る"ことはできる。
有理数体の最大アーベル拡大 K の絶対ガロア群は自由副有限群であろうと予想されている(シャファレヴィッチの予想 )[ 10] 。
その他の結果
全ての副有限群はあるガロア拡大のガロア群となる[ 11] が、全ての副有限群が絶対 ガロア群となるわけではない。例えば、有限群で絶対ガロア群となるものは単位元のみの自明な群か位数2の群だけであることがアルティン・シュライアーの定理 から分かる。
脚注
参考文献
Douady, Adrien (1964), “Détermination d'un groupe de Galois” , Comptes Rendus de l'Académie des Sciences de Paris 258 : 5305–5308, MR 0162796 , https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k4012p/f958.item#
Fried, Michael D.; Jarden, Moshe (2008), Field arithmetic , Ergebnisse der Mathematik und ihrer Grenzgebiete. 3. Folge, 11 (3rd ed.), Springer-Verlag , ISBN 978-3-540-77269-9 , Zbl 1145.12001
Haran, Dan; Jarden, Moshe (2000), “The absolute Galois group of C (x )”, Pacific Journal of Mathematics 196 (2): 445–459, doi :10.2140/pjm.2000.196.445 , MR 1800587
Harbater, David (1995), “Fundamental groups and embedding problems in characteristic p ”, Recent developments in the inverse Galois problem (Seattle, WA, 1993) , Contemporary Mathematics, 186 , Providence, Rhode Island : American Mathematical Society , pp. 353–369, MR 1352282
Jannsen, Uwe; Wingberg, Kay (1982), “Die Struktur der absoluten Galoisgruppe
p
{\displaystyle {\mathfrak {p}}}
-adischer Zahlkörper”, Inventiones Mathematicae 70 : 71–78, Bibcode : 1982InMat..70...71J , doi :10.1007/bf01393199
Neukirch, Jürgen ; Schmidt, Alexander; Wingberg, Kay (2000), Cohomology of Number Fields , Grundlehren der Mathematischen Wissenschaften , 323 , Berlin: Springer-Verlag , ISBN 978-3-540-66671-4 , Zbl 0948.11001 , MR 1737196
Pop, Florian (1995), “Étale Galois covers of affine smooth curves. The geometric case of a conjecture of Shafarevich. On Abhyankar's conjecture”, Inventiones Mathematicae 120 (3): 555–578, Bibcode : 1995InMat.120..555P , doi :10.1007/bf01241142 , MR 1334484