水先人水先人(みずさきにん、英: Pilot[1])とは、多数の船舶が行き交う港や海峡、内海において、それらの環境に精通することが困難な外航船や内航船の船長を補助し、船舶を安全かつ効率的に導く専門家であり、日本では職務を行う区域(水先区)ごとに水先人免許(国家資格)が必要となる。 日本語で一般には「水先案内人(みずさきあんないにん)」と呼ばれることの方が多く、正式名称の「水先人」は法律用語である[2]。これに派生して、船舶に限らず様々な事柄に対しても、先導して行く先を示し、導く人のことを「水先案内人」「水先案内」と呼ぶ。 水先人の業務水先区日本の水先区と強制水先区2008年現在、日本には水先人が港域や水域を案内する「水先区」が35か所ある。その内「強制水先区」と呼ばれる一定の大きさ以上の船舶には水先人の乗船を義務付ける水先区が10か所ある。 各国の強制水先区米国、カナダ(大西洋岸)、フランス、ポルトガル、中国では、プレジャーボートを除き、全ての船舶を対象に強制水先区を設定している。カナダ(五大湖、太平洋岸)、シンガポールでは300総トン - 350総トン以上の船が対象となり、イタリア、韓国、台湾では500総トン以上が、ドイツ、香港では1,000総トン以上が対象となる。英国では主要な港ごとに61メートルから95メートルの船長以上の船を対象にしており主要でない水先区は100メートル以上の船の全てを対象としている。オーストラリアは少し複雑で、ポートフィリップ湾では全ての船を対象にするが、クイーンズランドとトレス海峡では70メートル以上の船長の船を対象にしている。オランダは65メートル以上の船長の船が対象である[2]。 水先人の分類
現在、日本国内においてはベイパイロット、ハーバーパイロットの枠組みをなくし業務の効率化が行われている。かつては、水先艇による船舶の誘導を行い、水先人が直接乗船して案内をしないこともあり、「水先案内人」と呼ばれたこともあったが、現在この方法での誘導は行われておらず、水先人はパイロットラダー[3]などを使い直接船舶へ乗船し、水先人は船長に港や海峡、内海の情報が書かれた「水先情報カード」を手渡し、船長から水先人へ船舶の載荷状態、推進器・操船機器に関する情報などが書かれた「パイロットカード」を手渡すことで互いの意思疎通を図り、GPSなどの航海計器を適宜使用し、国際VHF無線で離着岸補助のタグボート、先導船や地上と連絡を取りながら船長を補助し、船舶を目的の場所まで安全に誘導することが業務である。 水先人が乗船中の船舶は「H 旗」と呼ばれる赤白二色の旗を掲げなくてはならない。また、水先人を必要とする場合は「G 旗」を掲げる。 水先案内船水先人の仕事場は、港や狭い水路に近付いてきた大型船か、またはこれから離岸する大型船であるため、離岸の場合を除けば小型船で目的の船まで移動しなければならない。この行き帰りに使用する小型船が「水先案内船」(パイロット・ボート[3])である。水先案内船は昔の日本で帆掛け舟しかなかった時代には、水先案内船が先導して誘導していたが、21世紀初頭現在では世界的にいっても水先人は誘導する船の船橋に立って職務を果たすことになっている[3]。 操船安全運航に対する船長の権限およびその責任は、水先人の乗船により変更されるものではない。したがって名目上は船長が操船を指揮して、水先人は船長の操船を補佐することになっているが、実際は水先人が操船命令を発して、船長が横で黙ったまま承認している事もあり、どちらが主体的に操船するかは主に船長の性格によって決まる。ただし、前述のとおり、安全運航の責任は依然として船長にあるため、水先人の指揮により万が一トラブルが発生した場合でも、その責任は船長が負うことになる。 外国人船長などでは、時として経費節約のために、タグボートの要請やその増船を断ったり、強風下等での接岸見合わせを夜間荷役の割増し経費を嫌うなどで、水先人の提案を受け入れないこともある。 水先人の免許と試験の概要試験一次試験は5月中旬 - 6月上旬頃の2日間、東京都で行われる。二次試験は11月から翌年1月までの指定された日に地方運輸局所在地で行われる。 試験科目
水先人資格の取得要件
免許の種類免許の種類により水先業務の行える船舶に制限がある。
免許の更新
水先人会水先人は水先法により、原則、水先人会への所属が求められるが、各水先人会には定員があり、資格を取得したとしても会員になれる(開業できる)という保証はない。 水先人資格日本の水先人資格は、そもそも受験資格を得る事自体に膨大な時間と業務経験を必要とする。 水先人資格を得るには、商船系大学や商船高等専門学校などでの専門教育を受けて国土交通省の国家資格である三級海技士の海技試験を合格して入社し三等航海士となる。その後乗船しながら一定期間以上の経験をつみつつ、上部資格である二級海技士、一級海技士をともに取得する。その後、3000トン以上の外航船船長として3年以上の実務経験を経て、そうして初めて受験資格を得ることが出来る[2]。 一般的に、一級海技士まで取得するには、会社に21 - 22歳で入社したとしても30歳程度までの乗船経験の時間を要する。 平成19年4月に規制緩和が行われ、船長経験がなくても三級海技士 (航海)以上の資格を持つ者なら2年6ヶ月の三級水先人養成課程を受けた上で三級水先人の試験を受けられるようになり、最短で20代前半で三級水先人になる事が出来るようになった。現在は、東京海洋大学、神戸大学海事科学部、海技大学校にそれぞれ水先人養成課程が設けられており、三級海技士(航海)を取得できる大学もしくは高専の過程を卒業すると受験資格を得られるようになっている[4]。 新制度によって、2011年に26歳の日本初の女性水先人が誕生し横浜港で勤務している。 出典
関連項目
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