人口当たりGDP(PPP換算),2019年
平均資産(Credit Suisseによる)
ジニ指数(Credit Suisseによる)
成人一人当たり資産中央値,2018年
欧州連合 の経済 (おうしゅうれんごうのけいざい)は、名目では米国に次いで世界第2位、購買力平価 (PPP)では中国・米国に次いで世界第3位である。欧州連合のGDPは、2020年では約17兆1千億ドル(名目値)と推定され[ 1] 、世界経済の約1/6を占めている[ 2] 。
通貨
欧州連合の公式の通貨はユーロ であり、欧州連合におけるすべての文書および政策で用いられている。安定・成長協定 では安定性と経済的収斂性について財政面における基準を定めている。ユーロはまた欧州連合域内において最も広範に使用されており、ユーロ圏 とされる欧州連合加盟17か国で使われている。免除規定が適用されるデンマーク を除くこのほかの加盟国では、導入に必要な条件を満たせばユーロへの通貨切替を実施しなければならない。ただしスウェーデン は例外が認められており、ユーロ導入の準備として適用される欧州為替相場メカニズム (ERM-II) に参加する時期や参加の是非そのものを選択することができる。ほかの諸国は欧州連合加盟条約においてユーロ導入が義務付けられている。
経済的多様性
以下の表では欧州連合および加盟27か国の GDP (PPP ) と人口1人あたりの GDP (PPP) を、後者の多い順に示している。この表から加盟国間での相対的な生活水準がおおよそ理解することができ、ルクセンブルク とアイルランド の水準が高く、ルーマニア とブルガリア は低いことが見て取れる。ルクセンブルク市 にあるユーロスタット は統計を担当する欧州委員会 の部局であり、欧州連合全体のほか各加盟国の GDP を毎年発表することで富の指標を示し、欧州連合の財政・経済政策の立案・実施に寄与している。以下の表はユーロスタットによる2007年4月21日時点での統計で、金額の単位はユーロ、2007年の数値は見通しである。
加盟国
2006年
2007年
GDP (PPP)(100万ユーロ)
人口1人あたり GDP (PPP)(ユーロ)
対EU27か国 人口1人あたり 平均GDP (PPP)
GDP (PPP)(100万ユーロ)
人口1人あたり GDP (PPP)(ユーロ)
対EU27か国 人口1人あたり 平均GDP (PPP)
欧州連合
11,557,853
23,500
100%
12,172,536
24,600
100%
ルクセンブルク
30,183
65,300
278%
31,376
69,900
284%
アイルランド
143,475
33,700
143%
157,070
35,700
147%
オランダ
500,762
31,000
132%
530,564
32,800
133%
オーストリア
250,247
30,200
129%
264,472
31,900
130%
デンマーク
161,613
29,700
126%
171,298
31,200
127%
ベルギー
302,570
28,700
122%
319,867
30,200
123%
スウェーデン
256,327
28,200
120%
274,499
30,000
122%
イギリス
1,688,660
27,900
119%
1,847,105
29,400
120%
フィンランド
143,818
27,300
116%
153,595
28,900
117%
ドイツ
2,184,612
26,700
114%
2,340,372
28,200
115%
フランス
1,673,128
26,500
113%
1,744,444
27,800
113%
イタリア
1,432,261
24,300
103%
1,500,475
25,500
104%
スペイン
1,053,600
24,000
102%
1,121,961
25,400
103%
キプロス
16,849
21,900
93%
17,773
22,900
93%
ギリシャ
230,659
20,800
89%
246,671
22,100
90%
スロベニア
40,867
20,400
87%
44,040
21,800
89%
チェコ
191,080
18,600
79%
207,174
20,100
82%
マルタ
7,289
17,700
75%
7,824
18,600
76%
ポルトガル
185,083
17,500
74%
190,882
18,200
74%
エストニア
21,170
15,900
68%
23,919
17,900
73%
ハンガリー
154,358
15,300
65%
166,031
16,200
66%
スロバキア
79,339
14,700
63%
88,602
16,400
67%
リトアニア
46,015
13,600
58%
50,241
15,000
61%
ラトビア
29,971
13,100
56%
33,630
14,900
61%
ポーランド
473,774
12,400
53%
525,277
13,600
55%
ルーマニア
190,657
8,800
37%
208,220
9,700
39%
ブルガリア
66,799
8,700
37%
71,714
9,500
39%
加盟候補国 (上記 EU の合計には含まれていない)
クロアチア
52,082
11,700
50%
57,948
12,600
51%
トルコ
503,856
6,900
29%
541,418
7,300
30%
北マケドニア
13,080
6,400
27%
13,897
6,900
28%
加盟国別の経済
経済動向は国ごとに異なっており、安定・成長協定は欧州連合の財政政策を司る内容となっている。同協定はすべての加盟国に対して適用され、とくにユーロ圏諸国に対しては、財政赤字を GDP の3%以下に抑制すること、公債発行残高が GDP の60%以下であることといった義務が課されている。しかしながら比較的規模の大きい国の多くが対 GDP で3%超の赤字を出して続けており、ユーロ圏全体としても公債発行残高が対 GDP で60%を超えている。
ギリシャとポルトガルを除くと、人口1人あたりの国民総所得の平均を下回っているのは2004年に加盟した諸国であり、逆に平均を上回っているのはいずれも2004年以前に加盟した国である。
以下の表では加盟国ごとの数値を経済規模の大きい順に並べたものである。背景色は欧州連合全体の平均値を上回っている(緑 )か、下回っている(赤 )かを示すものである。また太字 はそれぞれの最小値と最大値を示している。なおこの表は2007年4月に国際通貨基金 が算定した数値を用いている。
加盟国(GDP 順)
GDP(10億USドル) (2007)
GDP 比率(対EU全体 %) (2007)
年間 GDP 増減率(%)
人口1人あたり GDP (PPP)(USドル) (2007)
対 GDP 公債発行残高 (%) (2006)
対 GDP 年間赤字額 (%) (2006)
年間 インフレ率 (%) (2007)
失業率(%) (2006)
欧州連合 [1]
15,183.4
100.0%
2.8
29,342
63.8
-2.6
2.2
7.5
ドイツ
3,080.6
19.4%
1.8
32,179
66.0
-3.7
2.0
7.8
イギリス
2,660.7
16.8%
2.9
36,568
41.6
-3.2
2.3
5.3
フランス
2,401.4
15.2%
2.0
31,873
65.6
-3.7
1.7
8.3
イタリア
1,993.7
12.6%
1.8
31,694
105.8
-3.0
2.1
6.8
スペイン
1,359.1
8.6%
3.8
28,445
48.9
-0.3
2.6
7.8
オランダ
720.9
4.5%
2.9
36,240
55.7
-2.5
1.8
3.2
スウェーデン
423.6
2.7%
3.3
35,729
51.2
-1.4
1.8
5.5
ベルギー
423.5
2.7%
2.2
35,693
95.6
-0.1
1.9
7.8
ポーランド
364.8
2.3%
5.8
15,894
43.6
-3.7
2.2
10.5
オーストリア
348.7
2.2%
2.8
37,536
65.2
-1.3
1.6
4.5
ギリシャ
341.8
2.2%
3.8
27,360
106.5
-2.8
3.2
8.3
デンマーク
302.6
1.9%
2.5
38,072
42.7
-2.8
2.0
4.7
アイルランド
250.2
1.6%
5.0
46,786
29.9
-1.3
2.4
4.5
フィンランド
225.4
1.4%
3.1
36,324
43.6
-2.1
1.5
7.5
ポルトガル
211.7
1.3%
1.8
23,464
61.9
-2.9
2.5
7.4
チェコ
160.4
1.0%
4.8
24,679
37.4
-3.0
2.9
6.6
ルーマニア
157.6
1.0%
6.5
10,661
21.2
-4.0
4.5
4.5
ハンガリー
125.0
1.0%
2.8
20,700
57.6
-4.5
6.4
7.9
スロバキア
69.3
0.8%
8.2
19,172
36.9
-2.9
2.4
10.8
ルクセンブルク
45.8
0.3%
4.6
84,507
7.5
-1.1
2.1
4.6
スロベニア
41.1
0.3%
4.5
25,266
29.4
-1.9
2.7
6.4
ブルガリア
35.8
0.2%
6.0
10,677
24.8
-4.0
5.3
7.8
リトアニア
35.4
0.2%
7.0
16,863
19.7
-2.5
3.5
6.1
ラトビア
24.1
0.2%
10.5
17,364
14.4
-0.8
7.3
6.3
キプロス
19.9
0.1%
3.9
31,053
62.3
-3.5
2.1
4.8
エストニア
19.6
0.2%
9.9
20,114
4.9
-1.8
4.8
4.2
マルタ
6.2
0.1%
2.3
21,061
75.0
-5.2
2.4
6.8
経済成長
リーマンショック以前
欧州連合の世界総生産額 (GWP) に占める割合は5分の1で安定している。比較的新しい加盟国では力強い経済成長を示しているが、欧州連合全体では緩やかなものとなっており、フランス やとくにドイツ 、イタリア 、ポルトガル では成長が鈍っている。またベルギー やオランダ も比較的低い成長率を示している。バルトの虎 とも言われるエストニア やラトビア では欧州連合や世界でも高い GDP 成長率を示している[ 3] 。
加盟国と加盟候補国の人口と人口1人あたりの GDP の分布
欧州連合(European Union)およびユーロ圏(Euro area)における経済成長率(実質経済成長率)。2013年以降はIMFの予想値。
EU15か国 GDP成長率
2004年以降の加盟国 GDP成長率
加盟国
GDP成長率 (%)
2004
2005
2006
2007
オーストリア
2.4
2.0
2.8
2.9
ベルギー
2.4
1.5
2.7
2.3
デンマーク
1.9
3.2
2.7
2.3
フィンランド
3.5
2.9
3.5
3.1
フランス
2.0
1.2
2.4
2.4
ドイツ
1.2
0.9
2.0
2.5
ギリシャ
4.7
3.7
3.7
3.7
アイルランド
4.3
5.5
5.8
5.0
イタリア
1.1
0.0
1.5
1.9
ルクセンブルク
4.2
4.0
4.0
5.0
オランダ
2.0
1.5
2.9
2.8
ポルトガル
1.2
0.4
1.2
1.8
スペイン
3.1
3.4
3.4
3.7
スウェーデン
3.7
2.7
4.0
3.8
イギリス
3.3
1.9
2.7
2.8
加盟国
GDP成長率 (%)
2004
2005
2006
2007
ブルガリア
5.7
5.5
5.6
6.1
キプロス
3.9
3.7
3.5
3.8
チェコ
4.2
6.1
6.0
4.9
エストニア
7.8
9.8
9.5
8.7
ハンガリー
5.2
4.1
4.5
2.4
ラトビア
8.6
10.2
11.0
9.6
リトアニア
7.0
7.5
6.8
7.3
マルタ
-1.5
2.5
1.6
3.0
ポーランド
5.3
3.4
6.1
6.5
ルーマニア
4.1
8.5
7.7
6.7
スロバキア
5.4
6.1
6.5
8.5
スロベニア
4.2
4.0
5.2
4.3
欧州連合
2.4
1.8
2.8
2.4
ユーロ圏
2.1
1.3
2.4
2.0
出典 IMF[2] , [3] / Eurostat[4]
東ヨーロッパ の10か国および北ヨーロッパ は西ヨーロッパ とは対照的に高い経済成長率を誇っている。特にバルト三国 の成長率は目を見張るものがあり、ラトビアは11%の伸びを示しており、過去25年間での平均成長率が9%で世界の経済成長を牽引している中国 に劣らない数値となっている。この急成長の背景には政府による安定的な通貨政策や輸出指向の通商政策、低いフラット税 率や相対的に安い労働力といったものが挙げられる。
欧州連合の成長を示す現在の地図には大きな地域格差があり、大国は低成長に悩み、新しい加盟国は持続的でしっかりとした経済成長を示している。
欧州連合27か国の GDP は増加傾向にあるが、 GWP に占める割合は減少傾向であり、これは中国やインド 、ブラジル といった国の台頭が原因にある。中長期的には、欧州連合の GDP 成長はヨーロッパ経済の中心であるフランスやドイツ、イタリア次第であり、また東ヨーロッパの新しい加盟国においても好景気が継続し安定して成長することが期待されている。
リーマンショック以後
2008年のリーマン・ショック 以降、欧州各国はマイナス成長に陥った。その落ち込みからの回復の速度は
国ごとに異なる。アイスランド、ノルウェー、スイスはEUには加盟していないが、それらの国の実質経済成長は概してEUの経済成長よりも
力強いものとなっている。実際にはアイスランドは2008年に債務不履行となりマイナス成長となった。だが自国通貨アイスランド・クローナ が暴落し、それが輸出産業への恩恵となり順調に経済が成長している
[ 4]
[ 5] 。欧州連合は2007年から2014年にかけてゼロ成長となっている。米国の成長率はEUよりも高いが、スイスはそれを上回る成長をみせている。
各国の実質GDP (2007年時を100とした場合)
スイス
米国
ノルウェー
アイスランド
EU
エネルギー資源
欧州連合には莫大な石炭 、原油 、天然ガス 資源がある。欧州連合域内には6つの産油地帯があり、とくに北海油田 は特筆される。イギリスの産油量は群を抜いており、このほかにもデンマーク、ドイツ、イタリア、オランダ も原油を産出している。原油市場では一般的な考え方ではないが、仮に欧州連合を単一の産油国とすると、世界第7位の原油産出国となり、1日に342万4000バレル](2001年)を産出している。しかし、同時に欧州連合は世界第2位の原油消費国でもあり、産出量を上回る1日あたり1459万バレル(2001年)を消費している。
欧州連合のすべての加盟国は京都議定書 を締結しており、欧州連合は同議定書を強く推し進めた当事者の1つでもある。欧州委員会は2007年1月10日、包括的なエネルギー政策を初めて明らかにしている。
貿易
欧州連合は世界最大の輸出「国」であり、また世界第2位の輸入「国」である。域内における加盟国間の通商は、関税 や出入国審査 といった障壁が除去されていることが推し進める要因となっている。ユーロ圏内では通貨の違いがないことが通商の助けとなっている。欧州連合による連合協定では、より広範な国との通商について、域内での通商と似たような扱いを受けることができ、一部では穏やかなアプローチ(ムチのない飴)といわれ、対象国の政治に影響を与える。
欧州連合では欧州共同体 が加盟国を代表して世界貿易機関 に参加し、一加盟国として議論に加わっている。
労働市場
EUにおける15-74歳人口の 労働市場(2020年)[ 6]
フルタイマー (48.0%)
パートタイマー(時間延長を望まない) (9.2%)
就職活動中だが現在は就業不可 (0.6%)
就業できず、求職していない (32.9%)
失業率
欧州連合の2007年6月の失業率 の季節調整値 は6.9%であり、2006年6月の数値(当時の25加盟国にブルガリアとルーマニアを加えている)は7.9%であった。ただし失業率は加盟国によって幅がある。比較対象としてユーロスタットによると、アメリカ合衆国 は4.5%、日本 は3.8%であった。
以下の表は2007年6月と前年同期の各国の失業率を示している[ 7] 。
若年失業率
EU加盟国の若年失業率 は総じて高く、多くの加盟国で2桁の数字となっている。ギリシャやスペインでは若年者の4割以上が失業している。
EU全体では約450万人の若年者が失業しており、そのうちの300万人はユーロ加盟国の国民である[ 8] 。
EU加盟国の若年失業率(%)[ 8]
産業
欧州連合においてサービス部門 は重要な位置にあり、GDP の69.4%を占めている。一方で製造業 は28.4%であり、農業 は2.3%にとどまっている。
農業
農業部門は共通農業政策 という形態で欧州連合から助成を受けているが、この助成額は欧州連合の歳出の40-50%を占めており、これによって欧州連合における農家は最低収入が保証されている。この政策は保護主義的で、貿易を阻害し、途上国に損害を与えているとして批判を受けている。域内第2の経済大国であるイギリスはこれに強く反発する国の1つであり、共通農業政策の大幅な転換がなければ、毎年の欧州連合への拠出金払い戻し制度の変更案を拒否し続けている[ 注釈 1] 。なおフランスは共通農業政策最大の受益者であり、また域内第3の経済大国であるが、同政策最大の賛成者である。
観光
欧州連合は巨大な観光地帯であり、域外の観光客が訪れ、欧州連合の市民も域内を旅行する。域内観光はシェンゲン協定 やユーロにより一部の加盟国の市民にとっては便利なものになっており、欧州連合のすべての市民は査証 なしで域内を移動する資格がある。国別に見ても、フランスは国外からの観光客の目的地としては世界一であり、続いてスペイン が第2位、イタリアが第5位、イギリスが第6位となっている。欧州連合を単一の国として考えると、域外からの観光客は少なくなり、これは 加盟国への観光客のほとんどが別の加盟国から旅行しているためである。
企業
欧州連合加盟国からは世界有数とされる多国籍企業 の多くが生まれ、世界規模での本社もおかれている。そのような企業には分野別で世界最大の規模を持つものもある。例えばアリアンツ は金融業 の売上高では世界最大であり、エアバス社 は世界のジェット機 のほぼ半分を製造している。エールフランス‐KLM は運行本数で世界最大の航空会社 、アモリム は世界最大のコルク 加工・製造会社、アルセロール・ミッタル は世界最大の鉄鋼 会社、ダノン・グループ は乳製品 市場の世界最大手、アンハイザー・ブッシュ・インベブ は世界最大のビール 会社、ロレアル・グループ は世界最大の化粧品 会社、LVMH は世界最大の高級嗜好品コングロマリット 、BASF は世界最大の化学メーカーである。欧州連合にはこのほかにも売上高、営業利益、市場占有率、従業員数などの指標で世界最大規模の企業が存在する。欧州連合に本拠を置く企業の多くがそれぞれの部門で世界上位10位以内に入っている。
地方の多様性
欧州連合の富裕地域を比較することは困難であるといえる。なぜなら NUTS[ 注釈 2] -1 と NUTS-2 は均質ではなく、例えば NUTS-1 におけるヘッセン州 (21,100平方キロメートル)やイル=ド=フランス地域圏 (12,011平方キロメートル)のように広い地域もあれば、その一方で NUTS-1 におけるハンブルク (755平方キロメートル)やグレーター・ロンドン (1,580平方キロメートル)のような狭い地域もある。
このデータを扱うにあたっては、グレーター・ロンドンのような一部の地域には多くの通勤者 の流入が問題となり、このため数値が名目的になってしまうのである。このため GDP が押し上げられるものの、その地域の居住人口は変わらず、結果人口1人あたりの GDP が上昇することになる。
このデータは欧州地域開発基金のような財政支援プログラムによって支援される地域を定義するさいに使われている。
NUTS の地域分類はほとんどが任意なもので、方針や基準のようなものはなく、またヨーロッパ全体として分けられている。
NUTS-1、NUTS-2における経済圏上位10地域
NUTS-1 および NUTS-2 の分類において人口1人あたりの GDP 上位10地域はいずれも2004年以前の加盟国内にあり、2004年5月および2007年1月に加盟した国からは1つも入っていない。NUTS 規則[ 9] では、NUTS-1 の地域の人口規模について最小で300万人、最大で700万人としている一方で、NUTS-2 の地域においては最小80万人、最大300万人としている[ 10] 。しかしこの定義はユーロスタットではあまり尊重されておらず、例えば NUTS-2 におけるイル=ド=フランス地域圏の居住人口は1130万人とされ、一方で NUTS-1 におけるブレーメン州 の居住人口は66万2000人とされている。
順 位
NUTS-1 地域
人口1人あたり GDP (PPP)(ユーロ、2004年)
1
ルクセンブルク
53,978
2
ベルギー ブリュッセル首都圏
53,381
3
ドイツ ハンブルク
41,972
4
イギリス グレーター・ロンドン
40,542
5
フランス イル=ド=フランス
37,526
6
ドイツ ブレーメン
33,508
7
フィンランド オーランド
31,909
8
オランダ ランドスタット
30,762
9
アイルランド
30,414
10
ドイツ バイエルン
29,646
順 位
NUTS-2 地域
人口1人あたり GDP (PPP)(ユーロ、2004年)
1
イギリス インナー・ロンドン
65,138
2
ルクセンブルク
53,978
3
ベルギー ブリュッセル首都圏
53,381
4
ドイツ ハンブルク
41,972
5
オーストリア ウィーン
38,632
6
フランス イル=ド=フランス
37,526
7
イギリス バークシャー ・バッキンガムシャー ・オックスフォードシャー
37,379
8
ドイツ オーバーバイエルン
36,408
9
スウェーデン ストックホルム
35,621
10
オランダ ユトレヒト
33,905
NUTS-2における経済圏下位地域
2004年における経済圏下位15地域はすべてブルガリア、ポーランド 、ルーマニア から入り、最下位のルーマニア北東部 (Nort-est) の欧州連合の平均 GDP に比べて24%にとどまっている。その後ブルガリアの Severozapaden, Yuzhen tsentralen, Severen tsentralen がそれぞれ欧州連合の平均 GDP に比べて26%となっている。欧州連合の平均 GDP に比べて75%以下となっている地域は、ポーランドが15、ギリシャ とルーマニアがそれぞれ8、チェコ が7、ブルガリアとハンガリー がそれぞれ6、フランス(海外領土 を含む)とイタリア、ポルトガルがそれぞれ4、スロバキア が3、スペイン、エストニア、ラトビア、リトアニア 、マルタ がそれぞれ1となっている。
順位
NUTS-2 地域
人口1人あたり GDP (PPP)(ユーロ、2004年)
対 EU 27か国 平均 GDP 比(%、2004年)
1
ルーマニア 北東部
5,070
24
2
ブルガリア Severozapaden
5,502
26
3
ブルガリア Yuzhen tsentralen
5,509
26
4
ブルガリア Severen tsentralen
5,681
26
5
ルーマニア 南部
6,111
28
6
ルーマニア 南西部
6,183
29
7
ブルガリア Severoiztochen
6,299
29
8
ブルガリア Yugoiztochen
6,420
30
9
ルーマニア 南東部
6,612
31
10
ルーマニア 北西部
7,093
33
11
ポーランド ルブリン
7 568
35
12
ポーランド ポトカルパチェ
7 617
35
13
ルーマニア 中部
7 629
35
14
ポーランド ポドラシェ
8 148
38
15
ルーマニア 西部
8 395
39
加盟国別のNUTS-2における経済圏上位地域と下位地域
加盟国
地域
人口1人あたりGDP
(ユーロ)
対EU27か国平均 (%)
欧州連合
21,503
100.0%
オーストリア
27,666
128.7%
最富裕
ウィーン
38,632
179.7%
最貧
ブルゲンラント
19,305
89.8%
ベルギー
26,759
124.4%
最富裕
ブリュッセル首都圏
53,381
248.3%
最貧
エノー
17,546
81.6%
ブルガリア
7,134
33.2%
最富裕
Yugozapaden
10,550
49.1%
最貧
Severozapaden
5,502
25.6%
キプロス
19,648
91.4%
チェコ
16,171
75,2%
最富裕
プラハ
33,784
157.1%
最貧
中部モラヴィア
12,856
59.8%
デンマーク
26,772
124.5%
フランス
24,146
112.3%
最富裕
イル=ド=フランス
37,526
174.5%
最貧
フランス領ギアナ
11,690
54.4%
ドイツ
24,903
115.8%
最富裕
ハンブルク
41,972
195.2%
最貧
デッサウ
16,295
75.8%
エストニア
11,978
55.7%
フィンランド
24,834
115.5%
最富裕
オーランド
31,461
146.3%
最貧
フィンランド東部
18,336
85.3%
ギリシャ
18,245
84.8%
最富裕
アテネ
24,230
112.7%
最貧
ギリシャ西部
11,714
54.5%
ハンガリー
13,751
64.0%
最富裕
中部ハンガリー
21,837
101.6%
最貧
北部ハンガリー
9,003
41.9%
アイルランド
30,414
141.4%
最富裕
アイルランド南部・東部
33,653
156.5%
最貧
国境周辺・中部・西部
21,518
100.1%
イタリア
23,095
107.4%
最富裕
ロンバルディア
30,426
141.5%
最貧
シチリア
14,447
67.3%
ラトビア
9,775
45.5%
リトアニア
10,981
51.1%
ルクセンブルク
53,978
251.0%
マルタ
15,988
74.4%
オランダ
27,946
130.0%
最富裕
ユトレヒト
33,905
157.7%
最貧
フレヴォラント
20,736
96.4%
ポーランド
10,908
50.7%
最富裕
マゾフシェ
16,523
76.8%
最貧
ルブリン
7,568
35.2%
ポルトガル
16,086
74.8%
最富裕
リスボン
22,745
105.8%
最貧
ノルテ
12,648
58.8%
ルーマニア
7,301
34.0%
最富裕
ブカレスト=イルフォヴ
13,862
64.5%
最貧
ルーマニア北東部
5,070
23.6%
スロバキア
12,196
56.7%
最富裕
ブラチスラヴァ
27,802
129.3%
最貧
プレショフ ・コシツェ
9,102
42.3%
スロベニア
17,920
83.3%
スペイン
21,658
100.7%
最富裕
マドリード
28,416
132.1%
最貧
エストレマドゥーラ
14,419
67.1%
スウェーデン
25,865
120.3%
最富裕
ストックホルム
35,621
165.7%
最貧
スウェーデン中東部
21,862
101.7%
イギリス
26,455
123.0%
最富裕
インナー・ロンドン
65,138
302.9%
最貧
コーンウォール ・シリー諸島
17,025
79.2%
地域経済圏の比較
経済ブロックの指標比較
地域ブロック1
面積 (km2 )
人口
GDP (PPP) ($US)
加盟国1
(×100万)
人口1人 あたり
アガディール協定
1,703,910
126,066,286
513,674
4,075
4
AU
29,797,500
897,548,804
1,515,000
1,896
53
ASEAN
4,400,000
553,900,000
2,172,000
4,044
10
CACM
422,614
37,816,598
159,536
4,219
5
CARICOM
462,344
14,565,083
64,219
4,409
(14+1)3
CCASG / GCC
2,285,844
35,869,438
536,223
14,949
6
CEFTA
298,148
28,929,682
222,041
7,675
(7+1)3
EU
4,325,675
496,198,605
12,025,415
24,235
27
EurAsEC
20,789,100
208,067,618
1,689,137
8,118
6
EFTA
529,600
12,233,467
471,547
38,546
4
GUAM
810,506
63,764,600
456,173
7,154
4
NAFTA
21,588,638
430,495,039
15,279,000
35,491
3
PARTA
528,151
7,810,905
23,074
2,954
(14+2)3
SAARC
5,136,740
1,467,255,669
4,074,031
2,777
8
Unasur / Unasul
17,339,153
370,158,470
2,868,430
7,749
12
国連加盟国・ 比較参考例2
面積 (km2 )
人口
GDP (PPP) ($US)
地域区分4
(×100万)
人口1人あたり
UN
133,178,011
6,411,682,270
55,167,630
8,604
192
ブラジル
8,514,877
188,078,261
1,594,482
9,108
27
カナダ
9,984,670
32,507,874
1,165,000
35,200
13
インド
3,287,590
1,102,600,000
4,042,000
3,700
35
日本
377,873
128,085,000
4,220,000
33,100
47
中華人民共和国 5
9,596,960
1,306,847,624
10,000,000
7,600
33
ロシア
17,075,200
143,782,338
1,723,000
12,100
89
アメリカ合衆国
9,631,418
300,000,000
12,980,000
43,500
50
出典 CIA World Factbook 2005 , IMF WEO Database.
凡例
脚注
1 完全な加盟国資格を有するかそれに準ずる国などを対象とする
2 面積 、 人口 、GDP (PPP) 上位5か国を対象とした。ただし、人口第4位のインドネシア と、GDP (PPP) 第5位のドイツ を除く。
3 主権を持たない地域 、自治領 など
4 加盟国、あるいは広域行政区分の数
5 中華人民共和国のデータには香港 、マカオ 、中華民国 が支配する領域を含んでいない。
このデータは 2004年 時点での数値である。
その他
欧州連合は世界各地でEUSCBB (英語版 ) 計画を進めており、その一環として「IncoNet CA」を打ち出している。
この計画は2013年9月から開始されたプロジェクトの一部で、中央アジア 諸国への研究計画参加を奨励することを目的としたものである。「IncoNet CA」は、東ヨーロッパ、南コーカサス、西バルカンなどの地域が関与する以前の協力計画の経験に基づいて打ち立てられており、中央アジアとヨーロッパの研究施設の連携に重点を置いている[ 11] 。
脚注
注釈
^ イギリスはその経済規模により欧州連合の財源のひとつである各国拠出金の額も大きなものになっている。ところが 1984年に当時のイギリスの首相 マーガレット・サッチャー は、欧州連合(当時は 欧州経済共同体 )の歳出の7割が共通農業政策にあてられており、農家の少ないイギリスには恩恵がほとんどないと主張し、欧州経済共同体はイギリスに対する優遇措置として毎年払い戻すことを決めた。
^ Nomenclature of Territorial Units for Statistics - 直訳は地域統計分類単位。欧州連合における統計で地域を分類するときに用いられる。NUTS-1 と NUTS-2 の2つの分類がある。
出典
参考資料
当項目内の GDP 成長率と GDP のデータは以下の IMF のリンク先のものを使用した。
関連項目