標葉郡(しねはぐん、しめはぐん)は、福島県浜通り(陸奥国・磐城国)にあった郡。
郡域
1878年(明治12年)に行政区画として発足した当時の郡域は、双葉郡大熊町・浪江町・双葉町・葛尾村にあたる。
歴史
- 古代
- 『先代旧事本紀』国造本紀によると成務天皇期に足彦命を染羽国造(しめはのくにのみやつこ)に任じたとされる。
- 『和名抄』には「志波(しは)郡」とある。
- 標葉氏による統治
- 戦国時代前期までは、標葉郡は標葉氏の領土だったが、北隣の相馬氏に滅ぼされた。
- 相馬氏による統治
- 戦国時代後期から明治維新までは、標葉郡は相馬氏の領土に入れられた。
- 浜街道が「岩城相馬街道」と呼ばれたのは、この戦国時代後半である。そして、標葉郡(相馬氏の領土)と楢葉郡(岩城氏の領土)の境が、夜ノ森である。戦国時代後半の標葉郡は、相馬氏が岩城氏と田村氏を牽制する為の前線地帯となっていた。
- 江戸時代も、引き続き相馬氏が治める中村藩の領土となり、二宮尊徳の農政指導によって越中国(現在の富山県)から標葉郡に移住する人々が多く現れた。
- 江戸時代になると、江戸以南の東海道と同じく、江戸以北の浜街道にも宿場町が整備された。
- 戊辰戦争と廃藩置県
- 戦後社会
- 高度経済成長期になると、旧標葉郡も旧岩城領と同じように東京の電力供給源となった。これを象徴する出来事が、旧標葉郡の一角だった大熊に、東京電力の福島第一原子力発電所が建設されたことである。
- 平成以後の旧標葉郡では、旧岩城領と同じく、発電所を背景にした地域振興(大熊の「原子力もなか」など)や、話題作りによる地域振興(浪江の「DASH村」や「なみえ焼きそば」など)といった多様で独自性の濃い地域振興策が実施された。
- 福島第一原子力発電所事故
- 平成23年(2011年)3月11日の東日本大震災に誘発された福島第一原子力発電所事故により、旧標葉郡は、ほぼ全域が警戒区域となり、住民は退去を強制されていたが、徐々に警戒区域が解除され住民の帰還が始まっている。
近代以降の沿革
- 小野田村、井手村、室原村、幾世橋村、北幾世橋村、高瀬村、牛渡村、酒井村、谷津田村、苅宿村、酒田村、権現堂村、樋渡村、藤橋村、立野村、請戸村、舛倉村、棚塩村、末森村、大堀村、西台村、小丸村、川添村、加倉村、田尻村、熊川村、前田村、山田村、熊村、佐山村、上羽鳥村、新山村、下羽鳥村、渋川村、松倉村、目迫村、水沢村、郡山村、細谷村、小入野村、鴻草村、野上村、下野上村、長塚村、両竹村、中野村、中田村、寺沢村、松迫村、夫沢村、小良浜村、中浜村、大川原村、石熊村、野川村、上野川村、津島村(現・浪江町津島)、下津島村、赤宇木村、昼曽根村、落合村、羽付村、水境村、芹沢村
- 明治元年
- 明治4年
- 明治8年(1875年) - 田村郡葛尾村、津島村(現・浪江町南津島)の所属郡が本郡に変更。(66村)
- 明治9年(1876年)8月21日 - 第2次府県統合により福島県の管轄となる。
- 明治12年(1879年)
- 1月27日 - 郡区町村編制法の福島県での施行により、行政区画としての標葉郡が発足。「楢葉標葉郡役所」が楢葉郡小浜村に設置され、同郡とともに管轄。
- 舛倉村が請戸村に合併。(65村)
- 津島村(現・双葉郡南津島)が南津島村に改称。
- 明治13年(1880年)(62村)
- 佐山村が熊村に合併。
- 水境村・芹沢村が津島村(現・浪江町津島)に合併。
町村制以降の沿革
- 明治22年(1889年)4月1日 - 町村制の施行により、以下の各村が発足。(11村)
- 浪江村 ← 権現堂村、川添村、牛渡村、樋渡村、高瀬村(現・浪江町)
- 熊町村 ← 熊村、熊川村、夫沢村、小良浜村、小入野村(現・大熊町)
- 大野村 ← 大川原村、野上村、下野上村(現・大熊町)
- 新山村 ← 新山村、前田村、水沢村、目迫村、山田村、石熊村、郡山村、細谷村、松迫村(現・双葉町)
- 長塚村 ← 長塚村、上羽鳥村、下羽鳥村、寺沢村、松倉村、鴻草村、渋川村、中田村(現・双葉町)
- 請戸村 ← 請戸村(現・浪江町)、両竹村、中浜村(現・浪江町、双葉町)、中野村(現・双葉町)
- 幾世橋村 ← 幾世橋村、北幾世橋村、棚塩村(現・浪江町)
- 大堀村 ← 小野田村、大堀村、小丸村、田尻村、末森村、井手村、谷津田村、酒井村(現・浪江町)
- 苅野村 ← 苅宿村、加倉村、室原村、立野村、酒田村、藤橋村、西台村(現・浪江町)
- 津島村 ← 下津島村、津島村、羽付村、南津島村、赤宇木村、昼曽根村、行方郡川房村[大柿](現・浪江町)
- 葛尾村 ← 上野川村、野川村、落合村、葛尾村(現存)
- 明治29年(1896年)4月1日 - 標葉郡および楢葉郡の一部(川前村を除く)の区域をもって双葉郡が発足。同日標葉郡廃止。
変遷表
自治体の変遷
藩政期
|
明治22年以前
|
明治22年4月1日
|
明治22年 - 明治28年
|
明治29年4月1日
|
現在
|
津島村
|
津島村
|
津島村
|
津島村
|
双葉郡 津島村
|
双葉郡 浪江町
|
芹沢村
|
水境村
|
下津島村
|
下津島村
|
赤宇木村
|
赤宇木村
|
羽附村
|
羽附村
|
昼曽根村
|
昼曽根村
|
〔田〕津島村
|
南津島村
|
苅宿村
|
苅宿村
|
苅野村
|
苅野村
|
双葉郡 苅野村
|
加倉村
|
加倉村
|
酒田村
|
酒田村
|
立野村
|
立野村
|
西台村
|
西台村
|
藤橋村
|
藤橋村
|
室原村
|
室原村
|
権現堂村
|
権現堂村
|
浪江村
|
浪江村
|
双葉郡 浪江村
|
牛渡村
|
牛渡村
|
川添村
|
川添村
|
高瀬村
|
高瀬村
|
樋渡村
|
樋渡村
|
大堀村
|
大堀村
|
大堀村
|
大堀村
|
双葉郡 大堀村
|
井手村
|
井手村
|
小野田村
|
小野田村
|
小丸村
|
小丸村
|
酒井村
|
酒井村
|
末森村
|
末森村
|
田尻村
|
田尻村
|
谷津田村
|
谷津田村
|
幾世橋村
|
幾世橋村
|
幾世橋村
|
幾世橋村
|
双葉郡 幾世橋村
|
北幾世橋村
|
北幾世橋村
|
棚塩村
|
棚塩村
|
請戸村
|
請戸村
|
請戸村
|
請戸村
|
双葉郡 請戸村
|
中浜村
|
中浜村
|
両竹村
|
両竹村
|
中野村
|
中野村
|
双葉郡 双葉町
|
新山村
|
新山村
|
新山村
|
新山村
|
双葉郡 新山村
|
石熊村
|
石熊村
|
郡山村
|
郡山村
|
細谷村
|
細谷村
|
前田村
|
前田村
|
松迫村
|
松迫村
|
水沢村
|
水沢村
|
目迫村
|
目迫村
|
山田村
|
山田村
|
長塚村
|
長塚村
|
長塚村
|
長塚村
|
双葉郡 長塚村
|
鴻草村
|
鴻草村
|
渋川村
|
渋川村
|
寺沢村
|
寺沢村
|
中田村
|
中田村
|
上羽鳥村
|
上羽鳥村
|
下羽鳥村
|
下羽鳥村
|
松倉村
|
松倉村
|
大川原村
|
大川原村
|
大野村
|
大野村
|
双葉郡 大野村
|
双葉郡 大熊町
|
野上村
|
野上村
|
下野上村
|
下野上村
|
熊村
|
熊村
|
熊町村
|
熊町村
|
双葉郡 熊町村
|
佐山村
|
熊川村
|
熊川村
|
夫沢村
|
夫沢村
|
小良浜村
|
小良浜村
|
小入野村
|
小入野村
|
〔田〕葛尾村
|
葛尾村
|
葛尾村
|
葛尾村
|
双葉郡 葛尾村
|
双葉郡 葛尾村
|
落合村
|
落合村
|
野川村
|
野川村
|
上野川村
|
上野川村
|
- 〔田〕-田村郡所属
行政
- 楢葉・標葉郡長
代 |
氏名 |
就任年月日 |
退任年月日 |
備考
|
1 |
荒至重 |
明治12年(1879年)1月27日 |
明治15年(1882年)5月17日 |
|
2 |
長久保猷 |
明治15年(1882年)5月17日 |
明治16年(1883年)1月29日 |
|
3 |
宮川正治 |
明治16年(1883年)2月1日 |
明治16年(1883年)7月14日 |
|
4 |
沼沢七郎 |
明治16年(1883年)11月22日 |
明治17年(1884年)7月14日 |
|
5 |
三淵隆衡 |
明治17年(1884年)7月14日 |
明治18年(1885年)8月15日 |
|
6 |
荒賀直哉 |
明治18年(1885年)9月4日 |
明治19年(1886年)月日不詳 |
|
7 |
岡貞一 |
明治19年(1886年)5月3日 |
明治19年(1886年)6月3日 |
|
8 |
遠藤常師 |
明治19年(1886年)6月3日 |
明治19年(1886年)7月 |
|
9 |
長井高明 |
明治19年(1886年)10月4日 |
明治24年(1891年)10月9日 |
|
10 |
坂口実行 |
明治24年(1891年)10月9日 |
明治26年(1893年)12月5日 |
|
11 |
高山喜英 |
明治26年(1893年)12月5日 |
明治28年(1895年)11月26日 |
|
12 |
三田勝俊 |
明治28年(1895年)11月26日 |
明治29年(1896年)3月31日 |
標葉郡との合併により楢葉郡廃止
|
参考文献
関連項目