少女椿
『少女椿』(しょうじょつばき)は、丸尾末広による日本の漫画作品、またはこれを原作としたアニメ映画。 『漫画ピラニア』1981年8月号に掲載された同名の読切作品『哀切秘話 少女椿』(短編集『薔薇色ノ怪物』収録)を経て司書房の官能劇画誌『漫画エロス』で1983年8月号から1984年7月号まで全8話が連載された[1]。番外編に前日譚を描いた『少女椿 水子編』(白夜書房『ヘイ!バディー』1984年2月号掲載、短編集『キンランドンス』収録)と『少女椿 予告編』(ビデオ出版『メロンCOMIC』1984年8月号掲載、単行本未収録)がある。 本作品は『月刊漫画ガロ』を発行する青林堂から1984年9月に単行本化されて以来、女子高生をはじめとする10代後半の多感な年代層を中心に密かな支持を得て読み継がれており、「ガロ系」と呼ばれる日本のオルタナティヴ・コミックの中でも評価や知名度がずば抜けて高い作品のひとつになっている[2]。 これまで大手出版社から単行本化、文庫化、電子書籍化されたことはなく、現在も入手出来る単行本は青林工藝舎による改訂版のみである。 作品概要本作品は浪花清雲作の街頭紙芝居『少女椿』に脚色を加えたものである。「貧しい家の少女が両親と生き別れ苦難を経て幸せを得る」という、戦後昭和の時代に流行した母子不幸ものによくある筋書きを根底とし、「生き別れた母親と失踪した父親と再会し両親そろって幸せに暮らす」という幸せな結末を迎える紙芝居版に対し、漫画版では作者ならではのエログロ・怪奇性を押し出した作風で終始暗い雰囲気が漂い、結末も後味の悪いものになっている。 あらすじ昭和13年貧しい家に生まれ、病身の母と2人暮らしの生活を送る少女みどりは、母の世話のために夜ごと花売りにでかけていた先で、山高帽を被った親切なおじさんに出会う。 「困ったときは、いつでも私を訪ねておいで…。」 家に帰ったみどりが目にしたのは、性器から入り込んだ何匹もの鼠に内臓を食い破られた母親の姿だった。孤児になったみどりは、山高帽のおじさんを訪ねる。彼女が連れて行かれたのは異形の芸人たちが働く見世物小屋・『赤猫座』であり、山高帽のおじさんはそこの主人であった。見世物小屋の下働きとして使われるはめになってしまったみどりを小屋の芸人たちは事ある毎に虐め抜き、みどりもまた障害を負っている芸人たちを化け物呼ばわりし、嫌悪感を露にして罵る。 狂気にまみれた異常な日々が続く中、小人症の男、手品使いと称する謎の芸人ワンダー正光が小屋の売り上げのテコ入れのために雇われてから、みどりを巡る状況も一変していく。手品と称して不思議な幻術を操る正光はみどりを気に入って何かと世話を焼き、みどりも自分に優しく接してくれる正光に好意を抱くようになる。ワンダー正光のアシスタントとなり、一座の売り上げに献身することで一座での発言力を強めた正光のおかげで、みどりの立場も向上していくのだった。 ほどなくして赤猫座の座長が一座の金を持ち逃げして行方をくらまし、芸人たちにそれぞれの旅立ちの時が訪れた。みどりはワンダー正光と共に旅に出ることになり、辛く当たっていた芸人たちもみどりと正光の門出を祝福してくれた。 ようやく訪れる幸せへの喜びに胸を躍らせていたのも束の間。バスの停留所でみどりを待たせ、お弁当を買いに行った正光は泥棒に殺されてしまった。いつまでも帰ってこない正光を探しに行くがようとして見つからず、疲れ果てて休んでいた神社の並木道で、みどりはワンダー正光を含む見世物小屋の芸人たちが楽しそうに宴会を行っている光景を目撃する。芸人たちの朗らかな笑い声が響く中、みどりはショックのあまり半狂乱に陥り、泣き叫びながら芸人たちを追い払った途端に、その光景は消え失せてしまった。 ただ独り取り残されたみどりが号泣するところで物語は幕を下ろす。 登場人物※ 声は劇場映画、アニメ版の声優も併記する。演は映画キャスト。
単行本
アニメ映画「地下幻燈劇画 少女椿」
概要青林堂版『少女椿』を原作にした1992年公開のアニメーション映画。演出・台本・作画・監督の4役を絵津久秋(原田浩)がほぼ一人で手掛けた自主制作作品である。制作にあたって邦画の独立プロダクションからアダルトビデオメーカーまで打診するも過激な内容から製作母体やスポンサーが見つからず、監督が貯金・借金・退職金をかき集めて全予算を注ぎ込み、実に4年もの歳月をかけて制作した[5]。上映にあたっては紙吹雪や発煙筒、スモークなどの仕掛けによる特殊な演出が施され、神社境内や地下室でゲリラ興行された[5]。なお通常の映画館で本作品の上映を行う際には映倫指定の約26ヶ所を削除した上でぼかしを加えた「映倫通過版」のフィルムを用いる必要があり、これにR指定(R15+)をつけるよう定められている[5][6]。 上映禁止1999年、サン・セバスチャン・ホラー&ファンタジー映画祭終了後に成田税関でマスターフィルムが没収後破棄され、国内輸入および日本国内で上映禁止となる(破棄・禁止理由は非公開だが一説には同年成立した児童ポルノ法に対する過剰な配慮があったとされる)[7]。その後、東京国際ファンタスティック映画祭2004でファン投票1位を獲得し特別上映されるが、警察の要請で以降8年間上映が禁止されていた[7]。なお解禁後は倉庫から再発見されたオリジナルネガから作成した16ミリフィルムのニュープリント版がカナザワ映画祭で上映されている[8]。 スタッフ
主題歌
挿入歌
映像ソフト化日本国内における本編の映像ソフトは、VHSビデオが少数流通頒布されたのみである。ちなみに2006年には「MIDORI」というタイトルでDVDがフランスで発売されている。このDVD化のためマスターテープをフランスに送付したところ、成田税関が「要注意貨物・要チェック」という書類を添付したためドゴール空港で「わいせつ物」として没収された。その後、DVD会社社長の交渉でようやくフランスでのDVD化が実現した経緯がある[7]。 廻天百眼十発目劇場公演「少女椿」2011年10月には虚飾集団廻天百眼により舞台化され、ザムザ阿佐谷にて、10月13日から17日まで5日間7ステージ上演された。公演はDVD化されており、ダウンロード版が公式サイトで販売されている。 出演者
スタッフ
主題歌
実写映画
同名タイトルの映画が、2016年5月公開された。監督・脚本はTORICO、主演は中村里砂で、本作品が映画初出演で初主演となる[3]。R15+作品[9]。 キャスト(実写映画)
スタッフ(実写映画)
参考文献
脚注
外部リンク |
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