北大阪急行電鉄9000形電車
北大阪急行電鉄9000形電車(きたおおさかきゅうこうでんてつ9000けいでんしゃ)は、北大阪急行電鉄の通勤形電車である。ポールスター II (POLESTAR II) の愛称がある。 概要「お客様への静かなやすらぎ空間の提供とさらなる環境性能の向上」[3]を開発コンセプトとして導入され、第1編成が2014年4月28日に[4]営業運転を開始した。 本形式の導入は、一部の書籍において2023年度末開業予定で計画されている箕面萱野駅への路線延長に備えて車両の増備が必要となったためと記されていたが[5]、第4編成までは本形式導入に合わせて8000形の未更新車が順次廃車となっている[6][7][8]。 外観2000形以来のステンレス車体が採用された。レーザー溶接工法の導入によって、外板と補強材が連続溶接可能となり、従来のスポット溶接より強度向上が図られた。車体は無塗装であるが、側窓下にマルーン・アイボリー・レッドの3色帯を配しており、前面窓下にも同様の帯が配されている。 前照灯にはLEDを搭載して長寿命化を図っており[9]、前照灯の位置を8000形よりも上部に設置することで、従来よりも照射距離が伸びている。 行先表示器は前面・側面ともに512色が表示可能なセレクトカラーLEDを搭載している[10]。ただし、直通先のOsaka Metro御堂筋線30000系、21系更新車で行っている側面の号車表示は省略されている。なお、2024年1月から側面表示が8000形更新車と同様、日本語と英語(駅ナンバリングとの2段表示)の交互表示に更新されている。 3次車はデザインが大幅に変更され、車体全般をラッピングしたものとなった。外観は、緑地公園以北の沿線風景として馴染みがある「竹林」をテーマとし、色彩は沿線の文化的なイメージを重視し、側面上部に「菊炭色」、側面窓周りには濃いマルーン系の地色に竹柄のグラフィックとグラデーションをアレンジしており、車体上下はアイボリーで覆われている[11]。先頭部はマルーンの面積が大幅に拡大されている。 車内内装車内は8000形と同様にロングシートが採用され、木目調の化粧板やゴールデンオリーブ色のシートも踏襲されている[2]。従来の車内照明には通勤車両として初めて調色・調光可能なLED照明を導入し、季節や時間帯によるシチュエーションに応じたやすらぎ空間を演出する[12]。8000形からの改良点として、座席の仕切り板の大型化と縦握り棒(スタンションポール)の増設、側扉への開閉予告ランプの設置、ドアチャイムの自動化、車椅子スペースの大型化が行われている。第3編成からは混雑対策として座席幅を狭くし、その関係で座席中央の握り棒は廃止されたが、代わりに荷棚の先端をつかみやすい形状とするなど、設備が一部変更された[11]。また、第3編成からドアの窓は複層ガラスとなり、押さえ金具の形状などが第2編成以前と若干異なっている。 車両間の貫通扉には自動扉を採用しているが、8000形とは異なり扉の外側にある押ボタンを押すことで扉が開く仕組みとなっている。 8000形では8006FにLED式車内案内表示装置が千鳥配列で搭載されているが、9000形では各ドア上にはLCD型車内案内表示装置を搭載しており、15インチのLCD2画面と横長19.2インチのLCD1画面(いずれもコイト電工の「パッとビジョン」[13])を交互に配置することで全てのドア上に車内案内表示装置を設けている。15インチのLCDは、IPコア「Sesamicro(セサミクロ)」を採用した大阪メトロ30000系とは異なり、横長19.2インチLCDに準じた表示内容となっている[13]。 空調装置は薄型の集約分散式(セミ集中式)で、1台あたり25.58 kW ≒ 22,000kcal/h容量の機器を各車2台搭載しており、1車両あたりでは51.16 kW ≒ 44,000kcal/hとして能力向上を図った[2]。 運転台本形式では親会社の阪急電鉄と同様、T字ワンハンドルマスコンが採用された[1]。T字ワンハンドルマスコンは御堂筋線を走行する車両においても、順次採用されている。 速度計は8000形の大型7セグメントディスプレイから、一般的な指針式速度計となった[1]。 従来個別に設置していた機器モニタリングシステムと運行情報記録システムを車両モニタ装置として1つに統合することで、機器のスリム化を図った。
機器主回路機器は東芝→東芝インフラシステムズ(2017年7月1日から東芝の鉄道事業を含む社会インフラ事業は、東芝インフラシステムズに分社化された)が担当している[14][15]。 制御装置は主回路に2レベルのIGBT素子VVVFインバータ制御を採用し、保守性の向上を図っている[2]。主電動機には定格出力170 kWの永久磁石同期電動機(PMSM)を使用しており、定格効率は一般的なかご形三相誘導電動機(IM)の約91 %からPMSMでは97 %まで向上させている[15]。 電動機制御はPMSMを採用したことにより、モーターの回転子の回転に同期した制御が必要となるため、インバータ1基で1基の主電動機を制御する1軸個別制御方式の1C1M制御を1群とし、インバータ装置は2群分の制御回路を1台のインバータユニットに集約した「2in1形」インバータ装置を採用することで装置の小形化を実現している[15]。 台車は新日鉄住金→日本製鉄製のモノリンク式ボルスタレス台車 SS178M(動力)・SS178(付随)である[2][16]。基礎ブレーキはユニット式の片押し式踏面ブレーキ(ユニットブレーキ)を使用している[2]。 起動加速度は8000形より落とされ、2.8km/h/sだが、定加速度領域を上げているため、8000形とほぼ同等の所要時分での運転が可能である。また、8000形と異なり、設計最高速度は95km/hになっている。 運用2023年12月現在、10両編成×7本の70両が在籍し、北大阪急行電鉄南北線および相互乗り入れ先の大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)御堂筋線の江坂駅 - 中百舌鳥駅間で運用されている。 2020年2月24日には、北大阪急行開業50周年を記念して9001Fがラッピングされ同日から運行開始した。両先頭車両には50周年を迎えた1970年大阪万博当時の写真や、北急公式キャラクターの「北鳩家族」が描かれ、同年9月30日まで運行された[17]。 2023年度末に箕面萱野 - 千里中央間が延伸開業することに伴って3編成が増備されている[18]。 なお、これらの増備車には箕面市のラッピングが施され、2023年8月1日より9005Fのみ営業運転が開始された[19]。 9005Fは箕面市のPRキャラクター「滝ノ道ゆずる」と「モミジーヌ」とあしらったデザインであり、愛称は「ゆずるとモミジーヌ仲良しトレイン号」[20]。9006F,9007Fは明治の森箕面国定公園や日本の滝百選に選ばれた箕面大滝などの紅葉、箕面の美しい四季の移ろいを鮮やかなグラデーションで表したデザインであり、愛称は「箕面四季彩もみじ号」[20]。
脚注出典
参考文献
外部リンク
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