複層ガラス複層ガラス(ふくそうガラス)は、複数枚の板ガラスを重ね、その間に乾燥空気やアルゴンガス等が封入された(または真空状態にした)中間層を設ける形で1ユニットを構成するガラスを指す[1]。中間層は密閉されているため、基本的に中間層の厚さが増すほど断熱性能が高まるが、封入された気体に対流が発生する程厚くなると断熱性能が頭打ちになる[1]。ただし、中間層にガラスを追加することでこの問題は解消できる。 多くの先進国では、エネルギー消費量を抑えるために複層ガラスの利用が義務化されているが、日本では特に規定されていない。2018年現在、日本では、新築一戸建での戸数普及率は98.6%、新築共同住宅は65.5%[2]。 特徴複数枚のガラスと密閉された中間層により、光の透過性を保ちつつ、断熱効果を得られる。
以下の特徴はケースバイケースである。
Low-E複層ガラスLow-Eとは、Low Emissivity(低放射)の略。Low-Eガラス(Low-E複層ガラス)とは、特殊な金属膜のコーティングを施し、可視光線はよく通しつつ、紫外線や赤外線の透過を防ぐガラスのこと[5]。 外側ガラスの内面側に特殊金属膜を設けたものを遮熱高断熱複層ガラス、内側ガラスの外面に設けたものを高断熱ガラスとする場合が多い。施工地域の寒暖や建物開口部(採光する窓)の向きによって使い分ける。金属膜が放射による熱の伝達を抑えるため、従来の複層ガラスに比べ断熱性能が高い。また冷暖房負荷を大きく削減することができ、数年で初期投資が回収できる。 リフォーム日本では、省エネルギー性や居住性の向上のために、単板ガラスから複層ガラスに切り替える需要が高まっている。単板ガラス用サッシを複層ガラス用サッシに交換し複層ガラスを利用するには多額の費用がかかるが、既存の単板ガラス用サッシを利用してアタッチメント付き複層ガラスを使用することにより、サッシ交換に比べ低価格で大規模な工事を必要とせず手軽に複層ガラスを利用することが出来る。 通常の複層ガラスユニットの厚みは18mm(中間層12mm)以上だが、既存の単板ガラスのサッシを利用したままアタッチメント付き複層ガラスに交換する場合は網戸や雨戸との干渉を考慮してユニット全体の厚さを12mm(中間層6mm)以下にした断熱性能が低い商品が主流である。しかし日本板硝子製の複層ガラスで既存単板ガラス用サッシにLow-E複層ガラスを取り付けることを前提に製造されたアタッチメント付き複層ガラス「あんみつガラス(ガラスユニットの厚み16mm(中間層(アルゴンガス層)10mm))」や中間層を真空にして厚みを薄くした「真空ガラス」を利用すれば、網戸や雨戸との干渉を避け断熱性の高い複層ガラスを設置することもできる。 普及状況多くの先進国では1997年京都議定書の締結により、法的強制力のある断熱化基準を改正したり建造物の断熱化を新たに義務付けた。しかし、日本の断熱化基準には強制力が一切なく、複層ガラス普及率は先進国の中でも最低レベルである[6]。 1999年に建設省から日本の断熱化基準である次世代省エネルギー基準が改定された。しかし、法的拘束力がない上に、断熱化基準が欧米と比べてゆるく設定されている。2000年(平成12年)における日本の複層ガラスの普及率は5.1%となっており、欧州やその他の先進国と比較すると低い普及率となっている[6]。また、特殊な金属膜を設けた高断熱複層ガラスの普及率に関しては、米国が48.0%なのに対し、日本は0.3%と非常に低い数値となっている[7]。 その後も、世界各地での熱波や寒波の発生により、複層ガラスの世界的な需要は年ごとに高まっていったが、日本の普及率は低いままだった。背景として、市場でアルミサッシ(断熱性能は低い)が圧倒的に強く、複層ガラス向きの樹脂サッシ(断熱性能は高い)は北海道などの寒冷地を除いてほとんど普及していなかったことがある。 しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故以降の電力不足を背景に、「アルミサッシ+単板ガラス」を「樹脂サッシ+複層ガラス」へ置き換える施策がにわかに活発化し、新たなビジネスチャンスとなっている[8]。 名称複層ガラスのことをペアガラスと呼ぶ場合もあるが、これはAGC(旧:旭硝子)の登録商標である。(例えば日本板硝子では「ペアマルチ」という商品名を使用している。) AGCは旭硝子時代に以下の名称を商標登録しており、うち「ペヤグラス」を商品化している。
脚注
関連項目 |