(コンピュータプログラミングの型システムでの)共変性と反変性(きょうへんせいとはんぺんせい、covariance and contravariance)とは、データコンテナのサブタイプ関係が、そのデータ要素のサブタイプ関係に連動して定義されるという概念を指す。また、関数の型のサブタイプ関係での、引数型と返り値型の汎化特化の制約を定義する概念でもある。ジェネリックなデータ構造、関数の型、クラスのメソッド、ジェネリックなクラス、ジェネリック関数などに適用されている。
この区分は、クラス階層におけるメソッドの引数および戻り値の型を検討するときに重要である。C++のようなオブジェクト指向言語においては、クラス B がクラス A のサブタイプであるとき、B のメンバー関数はいずれも、戻り値の型集合が A のものと同じかより小さくなければならない。すなわち戻り値の型は共変である。一方、B のメンバー関数のとりうる引数の型集合が、A のものと同じかより大きいとき、引数の型は反変である。B のインスタンスにとって問題なのは、どうすれば A のインスタンスを完全に置換可能かということである。型安全性と置換可能性を保証する唯一の方法は、入力に対しては A と同等かより寛容に、出力に対しては A と同等かより厳格に振る舞うことである。ただし、すべてのプログラミング言語があらゆる文脈でこの2つの性質を保証しているわけではなく、不必要に厳格なものもある。つまり、特定の文脈においては共変性や反変性をサポートしないことがある。
T 型の引数を持つ関数呼び出し (fun f (x : T) : Integer と定義) は、T ≤ S のとき、fun g(x: S) : Integer と定義される関数 g で置換可能である。言い換えると、g は、引数の型に関して f より寛容であり、f と同様に Integer を返すので、f をいつでも置換できる。このように、関数引数を許す言語においては、 g ≤ f と f の引数の型とは反変である。
サブタイプ関係を射として型の集まり C を圏と見ることができる。
プログラム上で例えば型 p の値を受け取って型 r の値を返す関数を定義したとすると、型システムにおいては関数の型「p →r 」を生成したことになる。このような関数の型の構文(型構築子)は、2つの型から新たな型を生成する写像F : C ×C → C と考えられる。
関数の型のルールとして静的型安全な[2]のルールに従うとすると、
この写像 F は、第1引数についてはサブタイプ関係を反転して写し(反変関手に相当)、第2引数についてはサブタイプ関係を同じ形のまま写す(共変関手に相当)[3]。
Castagna, Giuseppe (1995). “Covariance and contravariance: conflict without a cause”. ACM Transactions on Programming Languages and Systems17 (3): 431–447. doi:10.1145/203095.203096.
Castagna, Giuseppe (2020). “Covariance and Controvariance: a fresh look at an old issue (a primer in advanced type systems for learning functional programmers)”. Logical Methods in Computer Science16 (1). doi:10.23638/LMCS-16(1:15)2020.