六フッ化物を形成する元素
六フッ化硫黄 の八面体構造
六フッ化物 (ろくフッかぶつ、Hexafluoride)は、化学式 が XF6 と表される、元素 の六フッ化物の総称である。17の元素が安定な六フッ化物を形成することが知られている。これらの内の9つは遷移金属 元素、3つはアクチノイド 元素、その他5つは非金属 元素である。
多くの六フッ化物は低い融点 と沸点 を持つ分子性化合物である。六フッ化物の内 S、Se、Te、W の4つは常温常圧で気体、Re、Mo の2つは液体であり、その他は不安定な固体である。Pブロック元素 と第6族元素 の六フッ化物は無色、その他は赤色、黄色、茶色、黒色などの有色である。
分子構造 は八面体形 であるが、六フッ化キセノン (XeF6 )は分子上を移動する孤立電子対 のため、八面体形からわずかに歪んでいる。XeF6 は固相では四量体と六量体を含む複雑な混合物になっている。量子化学 計算によると、ReF6 と RuF6 はヤーン・テラー効果 を受けるとされたが、実験では確かめられなかった。
ほとんどの六フッ化物は高い反応性を持つが、六フッ化硫黄 (SF6 )はほぼ不活性で無毒である。そのため、この安定性と誘電特性、高い密度を生かし様々な用途に利用されている。六フッ化セレン も SF6 と同じように不活性だが、六フッ化テルル は不安定で有毒であり、1日以内に水で加水分解 される。これらとは対照的に金属の六フッ化物は腐食性があり、水と激しく反応する。いくつかはフッ素化剤 として有用である。高い求電子性 を持つため、強力な酸化剤 として作用する。特に六フッ化白金 は、高いイオン化エネルギーを持つ酸素分子 を酸化することに注目され、ほぼ同じイオン化エネルギーを持つキセノン を酸化し、初めての希ガス化合物であるヘキサフルオロ白金酸キセノン を合成することに成功した。
金属の六フッ化物は、高い揮発性のためいくつかの用途がある。六フッ化ウラン は、核燃料 を作り出すウラン濃縮 に使用される。また、核燃料の再処理にも六フッ化物の揮発性を利用することができる。 六フッ化タングステン は半導体 回路や回路基板 を製造する化学蒸着 に使用されている。
以下の表は六フッ化物の主な化学特性である。
化合物名
融点 (℃)
沸点 (℃)
分子量
固体の密度 (g cm−1 )
結合長 (pm )
色
六フッ化硫黄
−50.54
−63.8 (sublimes)
146.06
1.88 (−50 ℃)
156.4
無色
六フッ化セレン
−35 (2 atm )
−46.6 (sublimes)
192.95
167–170
無色
六フッ化テルル
−38
−38.9 (sublimes)
241.59
184
無色
六フッ化ポロニウム
−40?
322.99
無色
六フッ化キセノン
49.5
75.6
245.28
3.56
無色
六フッ化モリブデン
17.5
34.0
209.94
3.50 (−140 ℃)
181.7
無色
六フッ化テクネチウム
37.4
55.3
(212)
3.58 (−140 ℃)
181.2
黄色
六フッ化ルテニウム
54
215.07
3.68 (−140 ℃)
181.8
暗褐色
六フッ化ロジウム
70
216.91
3.71 (−140 ℃)
182.4
黒色
六フッ化タングステン
2.3
17.1
297.85
4.86 (−140 ℃)
182.6
無色
六フッ化レニウム
18.5
33.7
300.2
4.94 (−140 ℃)
182.3
黄色
六フッ化オスミウム
33.4
47.5
304.2
5.09 (−140 ℃)
182.9
黄色
六フッ化イリジウム
44
53.6
306.2
5.11 (−140 ℃)
183.4
黄色
六フッ化白金
61.3
69.1
309.1
5.21 (−140 ℃)
184.8
暗赤色
六フッ化ウラン
64
352.0
5.09
199.6
白色
六フッ化ネプツニウム
54.4
55.18
(358)
198.1
橙色
六フッ化プルトニウム
52
62
(356)
5.08
197.1
褐色
参考文献
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