伝染性紅斑伝染性紅斑(でんせんせいこうはん、英: erythema infectiosum)とは、ヒトパルボウイルスB19による感染症である。リンゴ病という通称がよく知られる。 麻疹(第1病)、猩紅熱(第2病)、風疹(第3病)、デューク病(第4病)、突発性発疹(第6病)に対して第5病(fifth disease)とも呼ばれる。また海外では、強く打たれたように頬が赤くなることから「slapped cheek disease(平手打ちされた頬病)」という別名も使われる[1][2]。 原因単鎖DNAウイルスのヒトパルボウイルスB19の初感染による(ウイルスについての詳細はパルボウイルス#パルボウイルスB19を参照のこと)。 感染経路は経気道的な飛沫感染である。ただし、ウイルスが排泄されるのは(免疫が正常の患者では)特徴的な発疹が出現するよりも1週間程度前までなので、伝染性紅斑の患者を隔離しても他者への感染予防にはならない。 歴史1799年Robert Willanにより「非カタル性風疹」として初めて記述され、1889年、Anton Tachamerにより変異型風疹と報告された。しかし、1896年にTheodor Escherichによって風疹とは全く別の病態であると報告された後、1899年に伝染性紅斑と名付けられた。日本では1912年に大多和與四郎らにより初めて報告された。1983年にはじめて原因ウイルスが提唱され、後に確定した。 症状
鑑別診断顔面の蝶形紅斑、四肢の発疹に関節炎を伴うため、全身性エリテマトーデスや関節リウマチなどの膠原病・膠原病類縁疾患との鑑別を要する。 診断非特異的症状期に本症を診断することはほぼ不可能である。血中のウイルスDNAをPCRで検出できる可能性はあるが、そもそも非特異的症状期に本症を疑うこと自体が不可能なため、実用的でない。 発疹出現後は、特徴的な発疹が診断の決め手となる。経過によっては上記のような疾患を鑑別するための検査が必要になる。免疫正常者ではヒトパルボウイルスB19特異的抗体の測定を行い、IgM陽性では現在あるいは最近の感染が示唆される。一方IgG陽性は、かつてヒトパルボウイルスB19に感染し、免疫があることを意味している。 抗体産生不全を伴う免疫不全者では、抗体価測定が診断に役立たない。血中のウイルスDNAを検出する(PCRなど)必要がある。 合併症一過性骨髄無形成発作この症状は遺伝性球状赤血球症やサラセミアなどの溶血性貧血の患者にみられ、赤血球の産生が停止するために急激に貧血を来たす。約1週間程度で、赤血球の産生は再開され、ヘモグロビン値もその患者にとっての正常値に戻る。 持続性感染先天性・後天性の免疫不全症や白血病患者など、免疫不全患者では慢性の貧血の原因となることがある。発疹が出ないことが多いため、診断には血中のウイルスの証明が必要である。 胎児水腫ヒトパルボウイルスB19に免疫のない妊婦が初感染を受けた場合、胎盤を介して胎児も感染する。胎児はB19ウイルスを駆除できずに持続感染となり、非免疫性胎児水腫、心不全などの症状を来たす場合がある。時には胎児死亡に至る。特に妊娠初期・中期の感染が危険である。妊婦のB19感染が即胎児の異常に結びつくものではなく、B19感染が確認された新生児でも妊娠分娩の経過が正常・出生後の発育も正常であることが多い。さらに、生存児での先天異常は知られていない[4]。 治療・予防
関連法規
出典脚注
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