中英語
中英語(ちゅうえいご、英語: Middle English)または中期英語(ちゅうきえいご)、中世英語(ちゅうせいえいご)は1066年のノルマン・コンクエスト以後15世紀後半頃までの英語の名称である。文章に方言による大きな揺れが見られる。印刷の普及によって古英語の時代に用いられたウェストサクソン方言にかわってロンドンの方言(東アングリア方言)をもとに文語が形成された。そして、ラテン系言語であるオイル語の系統のフランス・ノルマン語の語彙がノルマンディー公側近の貴族により大量に流入した。またこのころのスコットランド南東部のノーザンブリア方言がスコット人の話す英語いわゆるスコットランド語につながる。中英語以後1650年頃までを初期近代英語という。なお近代英語は中英語からの大母音推移を蒙ったため、両者の音韻組織は大幅に異なる。 発音現代英語で多用されるいわゆる黙字(Silent letter。発音されない文字)はなく、どの字も読む。knightはナイト[nait]でなくクニヒト[kniçt]と読む。
straungeは二音節 (straun-ge)、palmeresは三音節 (pal-me-res) である。 文法名詞格語尾は単純化したが古英語の強変化、弱変化の区別は保たれた。以下の表を初期近代英語の語形engel (angel)、nome (name) と比較されたい。
engel → englesに見られる強変化の複数-sが一般化して現代英語の複数形-s (-es) になり、nome → nomenに見られる弱変化の複数-nはoxen, children, brethrenなど限られた単語にのみ残った。 動詞概則では一人称単数現在形が-e (ich speke: I speak)、同じく二人称が-(e)st (þou spekest: you speak)、三人称が-eþ (he spekeþ: he speaks) になる(þは現代英語の"thanks"のthのような音である)。弱変化の過去形は語尾に-ed(e), -d(e), -t(e)のどれかをつけ、過去分詞ではこの過去形の前に古英語のge-に由来するi-、またはy-(ときおりbi-も用いられる)をつける。強変化動詞では現代英語の不規則動詞と同じく動詞の語幹の母音を変化させる(例:binden → bound (bind → bound))。 代名詞代名詞は古英語の形を引き継いだ。
一人称と二人称は綴りが多少変わっただけで古英語と大体同じである。三人称では単数男性対格がhimになった。女性形は後にsheに変わっていったが長い間hoも残存した。文語が安定していなかったので語形に揺れがある。 主な文献と文例中英語の文献で代表的なものは以下のものが挙げられる。
以下はジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』の序章の冒頭である。
関連項目
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