レーダー(古希: Λήδα, Lēdā)は、ギリシア神話の女性である。長母音を省略してレダとも表記される。アイトーリア王テスティオスの娘で、スパルタ王テュンダレオースの妻。
本来は大地の女神でレートーと同一の存在だったと考えられている[1]。
木星の第10衛星レダや小惑星帯の小惑星レダのエポニムである。
物語
ゼウスはレーダーを愛し、白鳥の姿に化けて彼女を誘惑した。鷹から逃れるために、白鳥の姿のゼウスはレーダーの腕の中に隠れた。密通によってレーダーは卵を産み、卵からヘレネーが生まれた。ヘレネーは後に「トローイアのヘレネー(トロイのヘレン)」として知られる美女になる。
同じ卵から、または別の卵からカストールとポリュデウケースが生まれた。2人はディオスクーロイ(ゼウスの子の意)とも呼ばれる。また、クリュタイムネーストラーが生まれた。
伝承によっては誰が誰の父親だったかは異なるが、一般的にはヘレネーとポリュデウケースはゼウスの子であり不死で、カストルとクリュタイムネーストラーはテュンダレオースの子であり死の運命があるとされる。
レーダーはテュンダレオースの子であるほかの娘も産んでいる。ティーマンドラー、ポイベー、ピューロノエーである。
ほかの伝承では、ネメシスがヘレネーの母であり、やはり白鳥の姿のゼウスによって孕まされたとされる[2]。羊飼いがその卵を見つけてレーダーにあずけ、卵がかえるまでレーダーは注意深く胸に収めたという。卵がかえると、レーダーはヘレネーを娘として育てた[3]。ゼウスはヘレネーの誕生を記念して、天空にはくちょう座を創造した。
芸術に描かれたレダ
レーダーと白鳥、あるいはレーダーと卵は、西洋古代美術において人気のあるテーマであった。近代美術でも、有力なインスピレーションの源になった。美術作品やイェイツの詩における「レダと白鳥」のモチーフについては、レダと白鳥を参照。
系図
出典
- ^ ホメーロス著、呉茂一訳 『イーリアス 上』 平凡社 2003年、513頁。
- ^ Hygin, L'Astronomie, II. 8, texte établi et traduit par André Le Boeuffle. Paris, Société d'edition <Les Belles Lettres>, pp.36-37
- ^ アポロードロス(高津春繁訳)『ギリシア神話』、第3巻10.7(岩波書店、昭和28年)
参考文献
- March, J., Cassell's Dictionary Of Classical Mythology, London, 1999. ISBN 0-304-35161-X
- Peck, H., Harper's Dictionary of Classical Antiquities, 1898.