マイノリティ・リポート
『マイノリティ・リポート』(Minority Report)は、2002年に公開されたアメリカの SF・アクション映画[3]。ドリームワークスによって製作され、20世紀フォックス映画によって配給された。フィリップ・K・ディックの1956年の短編小説『マイノリティ・リポート』(旧題:『少数報告』)を原作としてスティーヴン・スピルバーグが監督を務め、トム・クルーズが主演した。 2015年9月から、FOXチャンネルで映画に基づいた続編となるテレビドラマ作品が放送された(『マイノリティ・リポート (テレビドラマ)』)。 概要サイバーパンク映画の舞台は2054年のワシントンで、専門の警察署が「プリコグ」と呼ばれる3人の超能力者から予知 を得て犯罪者を逮捕する。キャストは他に、コリン・ファレル、サマンサ・モートン、マックス・フォン・シドーら。この映画は、テック・ノワール、ミステリー、スリラー、SFの要素を組み合わせたものであると同時に、主人公が犯してもいない罪で告発されて逃亡者となることから、伝統的な追跡映画でもある。 ストーリー「プリコグ」と呼ばれる3人の予知能力者たちを使った殺人予知システムが実用化された近未来。予知された殺人犯(未来犯罪者)を未然に逮捕、拘禁する犯罪予防局の設立から6年が経過した西暦2054年のワシントンD.C.の殺人発生率は0%になったと報告されていた。 ジョン・アンダートンは6年前、休暇中に息子のショーンを何者かに誘拐・殺害されたことがきっかけで予防局に入局し、犯罪予防活動にのめり込み、犯罪予防局の部隊長となった。妻のララとも離婚して疎遠になっていた。 ある日、プリコグの一人である女性のアガサが、湖畔の森の中で1人の初老女性が黒づくめの人間に襲われ、湖に沈められて溺死する予知映像をジョンに見せてきた。ジョンが調べてみると、アガサの予知映像は6年前の犯罪予防局発足時に発生した事件が該当した。しかし、予知されていた事件の記録映像を確認しようとすると他の2人のプリコグの映像はあるのに、何故かアガサのものだけが無かった。また、事件の被害者アン・ライブリーは事件が未然に防がれているにも関わらず、行方不明となっていた。ジョンは予防局長のラマー・バージェスに報告するが詳細は分からなかった。 翌日、新たに殺人事件が予知されたが、その予知には見ず知らずリオ・クロウという男を射殺するジョンの姿が映っていた。何者かの罠だと感じたジョンは逃亡する。殺人予知システムの考案者であるアイリス・ハイネマン博士から、システムが偶然の発見から生まれたものであること、時にブリコグ同士で予知が食い違うこともあり、少数の意見「マイノリティ・リポート」にあたる予知映像はシステムの完全性を疑われないために破棄され、プリコグ達の中でも特に能力の強いアガサの脳内にのみ保存されていることをジョンは知らされる。 自らの無実を証明すべく、ジョンはアガサを誘拐するが、アガサの脳内にはジョンのマイノリティ・リポートは存在しなかった。ジョンとアガサは予知された殺害現場であるリオ・クロウの部屋へと向かう。リオ・クロウから息子ショーンを誘拐して殺害した犯人であると聞かされたジョンは、予知通りに銃を突きつけてクロウを射殺しようとするが、アガサの説得に思いとどまる。ところがクロウは「知らない男から電話で頼まれて誘拐犯のふりをした。自分を殺してくれないと家族が金を得られない」と訴えて、無理矢理ジョンに発砲させ、予知を現実にする形で絶命した。 アガサを連れたジョンは元妻のララの家に向かうが、そこで駆けつけた予防局の部隊に逮捕される。しかし、ラマー局長がアン・ライブリー溺死事件についてジョンと犯人しか知り得ない情報を口にしたのを聞いたララは、ラマー局長こそが一連の事件の黒幕であることに気付くと、ジョンを脱獄させた。 殺人予知システムの全国導入を祝うパーティ会場に、緊急電話でジョンはラマーに突き止めた真実を語りかける。2人のプリコグに予知させたアン・ライブリー溺死事件を防止させ、その後に再びアン・ライブリーを溺死させる。後者がアガサの予知した映像であった。アン・ライブリーはアガサの母親であり、予防局に愛娘のアガサを返すよう迫っていたが、アガサ抜きでは予知システムが成り立たないため、ラマーが邪魔者であるアンの謀殺を実行したのであった。 パーティ会場で過去の犯行を映像で暴露され、さらにはプリコグ達にラマーがジョンを射殺するという予知までされた。ラマーは予知されていた殺害現場へと向かい、待っていたジョンに拳銃を向ける。しかしジョンから「自分の未来は自ら望む通りに変えられる。あんたにそのチャンスはまだ残っている」と諭されたことで、ラマーは自分自身の命を絶つという最期を遂げた。 犯罪予知システムは不完全と認められて廃止となり、収容所に投獄されていた未来犯罪者達にも特赦が与えられ全員が釈放された。ジョンとララは復縁し、プリコグの3人は予防局から解放された。 キャスト
吹替はオフィシャル版が先に製作されたものの、日本の配給会社によって独自にDVD版が製作され、DVDにはこちらのみを収録する予定だった。だが、スピルバーグとクルーズの連名によるクレーム[8]があったことでオフィシャル版がメインの吹替として収録されることとなり、DVD版は特典扱いでの収録となった。これに伴い、プロモーションのため開催予定だった須賀による公開アフレコイベントは中止となっている[9]。 スタッフ
日本語版制作スタッフテーマ→詳細は「マイノリティ・リポートのテーマ」を参照
『マイノリティ・リポート』の主なテーマは、自由意志と決定論という古典的な哲学的論争である。この映画で取り上げられている他のテーマには、強制的な拘禁、ハイテク社会[10]における政治・法制度の性質、メディアが支配する世界[11]におけるプライバシーの権利、自己認識[12]の性質[13]などがある。この映画はまた、崩壊した家族を描く[14]というスピルバーグの伝統を踏襲しており、彼によると、これは子供の頃の両親の離婚がきっかけだという[15]。 音楽→詳細は「マイノリティ・リポート (サウンドトラック)」を参照
作曲と指揮は、スピルバーグと定期的に仕事を共にしてきた[16]ジョン・ウィリアムズが担当した。ウィリアムズはバーナード・ハーマンの映画音楽に触発されており、SF要素に重点を置く代わり[17]に、いくつかのシーンで女性歌手を起用したり、感情的なテーマを取り入れるなどした。また、フランツ・シューベルトの交響曲第7番『未完成交響曲』、ハイドンの弦楽四重奏曲『作品64、第1番』[18]、チャイコフスキーの交響曲第6番『悲愴』など、いくつかの古典作品が取り入れられた。 サウンドトラック[19]は2002年6月18日にドリームワークス・レコードからリリース[20]された。 映画で描写されたガジェット本作で描写された様々なガジェット、触れることができるホログラムであったり、網膜認証システムなどは、本作の公開後、実際にその技術が実現されるようにもなり、本作は「近未来の代名詞」として「『マイノリティ・リポート』の時代が近づいている」「リアル『マイノリティ・リポート』」といったような使われ方もされている[21]。 スピルバーグは「最高のSFは事実や未来の事実に基づいている」と考えており、本作で劇中に描写される技術は、専門家や学者たちに検討されて生み出されており、「プリコグ(未来予知者)」以外の技術は、理論的に可能なものばかりとされる[21]。 劇中では未来的なガジェットとして用いられている網膜や虹彩などの瞳を使った生体認証は、スマートフォンのロックシステムにも取り入れられるほどの一般的な存在になり、個人に向けて展開される広告というのもインターネットでは一般的になっている[21]。過去の犯罪履歴などのデータを基に危険人物を予測するソフトウェアをロンドン警視庁やマイクロソフトが開発中との報道もある(2016年時点)[21]。 その他
関連項目
脚注
外部リンク |
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