ヒルスチア属
ヒルスチア属(ーぞく、Hirschia)は真正細菌のPseudomonadota門アルファプロテオバクテリア綱カウロバクター目ヒフォモナス科に属する属である。 概要Hirschiaは、出芽細菌と菌糸細菌の専門家であるドイツの微生物学者Peter Hirschを称賛して命名された。 グラム陰性且つ好気性で、胞子を形成しない。一方の、時に両方の細胞極に、菌糸が挿入されたプロステーカを有するプロステーカ細菌である。この菌糸の先端から出芽することによって増殖する。芽胞の先端には毛状の鞭毛がある[1]。運動性又は非運動性のいずれかである[2]。コロニーは黄色色素で着色されている。従属有機栄養性であり、C1化合物は炭素源として利用しない。ポリヒドロキシ酪酸を貯蔵しない。ユビキノン系はQ10系である。ヒドロキシ脂肪酸は3-OH型である[1]。主要な脂肪酸はC18:1ω7cとC16:0であり、主要な極性脂質はホスファチジルグリセロールと未知の脂質2種である[2]。23S rRNAにニックは無い[1]。GC含量は43.7~45.4mol%である[2]。 種ヒルスチア・バルティカ(Hirschia baltica)balticaは、ラテン語で「バルト海に関する」を意味する女性形容詞である。この命名は、タイプ株がバルト海で発見されたことに由来する。 タイプ株はIF AM 1418T(DSM 5838T)である。この株の16S rRNA遺伝子配列のGenBank/EMBL/DDBJアクセッション番号はAJ421782である。 菌糸の無い細胞は0.5~1.0×0.5~6.0 p-mで、桿状、楕円形状、又は卵形状である。菌糸の直径は約0.2μmである。コロニーは粘液状(IFAM 1408株)又は乾燥している。最適生育温度範囲は22~28℃である。培養には人工海水が要求される。汽水域に生息している。 セロビオース、グルコース、酢酸、酪酸、カプロン酸、乳酸、プロピオン酸、ピルビン酸、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、イソロイシン、プロリン、及びグルコン酸を炭素源として利用する。一方、ラクトース、キシロース、ラフィノース、リボース、トレハロース、アドニトール、エタノール、グリセロール、マンニトール、メタノール、塩化メチルアンモニウム、ホルムアミド、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、グリシン、ヒスチジン、リジン、及びバリンは利用しない。アルギン酸塩、ゼラチン、Tween 80を加水分解でき、カゼイン、セルロース、レシチンは加水分解しない。アンモニア、グルタミン酸、硝酸塩、及び尿素を窒素源として利用する。一方、アセトアミド、A'-アセチルグルコサミン、ホルムアミド、及びニコチン酸は利用しない。培地のペプトンからアンモニアを産生する。 タイプ株のGC含量は45.6mol%である。細胞脂肪酸は、主要な直鎖飽和脂肪酸C16:0及び直鎖不飽和脂肪酸C18:1 δ-11、並びに少量の直鎖不飽和脂肪酸C18:2 δ-5,11で構成されている。シクロプロパン脂肪酸も微量で存在する。リン脂質は唯一ホスファチジルグリセロールのみであり、糖脂質と分岐脂肪酸は存在しない。ペプチドグリカンのジアミノ酸としてwe.so-ジアミノピメリン酸が存在する[1]。 ヒルスチア・マリティマ(Hirschia maritima)maritimaは、ラテン語で「海の」を意味する女性形容詞である。 タイプ株はGSW-2T(DSM 19733T、JCM 14974T)である。この株の16S rRNA遺伝子配列のGenBank/EMBL/DDBJアクセッション番号はFM202386である。GC含量は44.5mol%である。 好気性且つグラム陰性であり、オキシダーゼ及びカタラーゼ陽性である。栄養細胞は直径0.06~0.1μmのプロステーカを有し、出芽によって増殖する。成熟細胞は球形、楕円形または桿状で、大きさは約0.6~1.1×1.2~1.3μmである。成熟すると、栄養細胞と芽胞の両方が1つ又は複数の鞭毛を形成する。コロニーは全体がオレンジ色の円形凸状であり、5日間のインキュベーション後で直径0.5~0.8mmになる。MA以外の、天然海水や人工海塩を添加した培地では生育しない。温度10~30℃(最適30℃)、pH6.1~10.1(最適pH8.1–9.1)且つ塩化ナトリウム濃度1%(w/v)のMA培地で培養できる。非拡散性カロテノイド色素(λmax=460nm)を産生するが、バクテリオクロロフィルaは持たない。DNAとデンプンを分解でき、カゼイン、キチン、カルボキシメチルセルロース、エラスチン、ゼラチン、ヒポキサンチン、DL-チロシン、キサンチンは分解しない。API 20NEによる、エスクリン分解及びβ-ガラクトシダーゼ活性試験では陽性だが、硝酸還元、インドール産生、グルコース発酵、アルギニンジヒドロラーゼ活性及びウレアーゼ活性試験では陰性を示す。ペプチドグリカンのジアミノ酸にはmeso-ジアミノピメリン酸が存在する。主なキノンはQ-10である。極性脂質としてはホスファチジルグリセロールのみが検出される[4]。 ヒルスチア・リトレア(Hirschia litorea)litoreaは、ラテン語で「海岸にいる」を意味する女性形容詞である。この命名は、この細菌が韓国の海岸の堆積物から発見されたことに由来する。 タイプ株はM-M23T(KCTC 32081T、CCUG 62793T)である。この株の16S rRNA遺伝子配列のGenBank/EMBL/DDBJアクセッション番号はJQ995780である。GC含量は45.4mol%である。 胞子を形成せず鞭毛を持たないグラム陰性菌である。栄養細胞はプロステーカを形成し、出芽によって増殖する。細胞は球状、楕円形状又は桿状で、幅約0.4~0.8μm、長さ0.4~4.5μmである。7日間MA培地で25℃で培養したコロニーは、光沢のある平滑な円形凸状の橙黄色であり、直径0.7~1.0mmである。生育温度範囲は4~37℃(最適25℃)であり、40℃以上では生育しない。最適生育pHは7.0~8.0であり、pH5.5でも生育するが、pH5.0では生育しない。塩化ナトリウム濃度0.5~7.0%で生育する(最適0.2%)。Mg2+イオンを要求する。 カタラーゼ及びオキシダーゼ陽性である。亜硝酸への硝酸還元能は無い。エスクリン、カルボキシメチルセルロース、及びL-チロシンを加水分解できるが、カゼイン、ゼラチン、ヒポキサンチン、デンプン、Tween 80、尿素、及びキサンチンを加水分解できない。セロビオース、D-ガラクトース、D-グルコース、マルトース、スクロース、トレハロース、D-キシロース、サリシンを利用できるが、L-アラビノース、D-フルクトース、D-マンノース、酢酸、安息香酸、クエン酸、ギ酸、L-リンゴ酸、ピルビン酸 、コハク酸及びL-グルタミン酸は利用できない。セロビオース、D-ガラクトース、D-グルコース、ラクトース、マルトース、メリビオース、スクロース、トレハロース、及びD-キシロースから酸を産生し、L-アラビノース、D-フルクトース、D-マンノース、メレジトース、ラフィノース、L-ラムノース、D-リボース、ミオイノシトール、D-マンニトール、及びD-ソルビトールからは産生しない。 API ZYMによる鑑別試験においては、アルカリホスファターゼ、ロイシンアリールアミダーゼ、及びα-グルコシダーゼの活性検査では陽性結果が、エステラーゼ(C4)活性検査では弱陽性結果が、エステラーゼリパーゼ(C8)、リパーゼ(C14)、バリンアリールアミダーゼ、シスチンアリールアミダーゼ、トリプシン、α-キモトリプシン、酸性ホスファターゼ 、ナフトール-AS-BI-ホスホヒドロラーゼ、α-ガラクトシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、β-グルコシダーゼ、N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ、α-マンノシダーゼ、α-フコシダーゼの活性検査では陰性結果が得られる。 優勢なユビキノンはQ-10である。主要な脂肪酸(全体の10%未満)はC18:1ω7cとC16:0であり、主要な極性脂質はホスファチジルグリセロールと未知の脂質2種である[2]。 系統樹16S rRNA遺伝子配列解析による近隣結合法で作成した、ヒルスチア属及びヒフォモナス科(Hyphomonadaceae)近縁属の系統樹を下記に示す[2]。
歴史
脚注
参考文献学術論文
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