バンゲリング ベイ
『バンゲリング ベイ』 (Raid on Bungeling Bay) は、アメリカ合衆国のブローダーバンドが制作したシューティングゲームであり、『チョップリフター』(1982年)、『ロードランナー』(1983年)とともに「バンゲリング帝国三部作」の一つである。 本作は、1984年にコモドール64用ゲームソフトとして発売された。日本においては1985年2月22日にハドソンがファミリーコンピュータ(以下、FC)用ソフト向けに移植し発売された。このFC版を元に操作方法など仕様を変更した移植作品が制作され、任天堂からアーケード版[注釈 1]、ソニー(HiTBiTブランド)からは1985年7月21日にMSX版がそれぞれ発売された。 ゲーム内容見下ろし視点の平面全方位任意スクロールシューティングゲームである。縦幅10画面×横幅10画面の100画面からなるマップで構成されている。プレイヤーは、自機のヘリコプターを操り、自軍の空母を防衛し敵機やレーダー・砲台などの防空網を破壊しながら、敵国「バンゲリング帝国」の戦略拠点(工場)を破壊するのがゲームクリアの目的となる[1]。 攻撃方法は、対空用のバルカン砲と対地用の爆弾(最大9発)の2種類。自機はヒットポイント制で、被弾するたびにダメージ値が蓄積され徐々に飛行速度が落ち、100を超えると操縦困難に陥り墜落しミスとなる。爆弾の補給やダメージ値の修理は空母か敵の駐機場に着陸することで行える。なお、自機の墜落地点が工場や戦艦などだった場合はそれらにダメージを与えることができる。 自軍の空母は敵の攻撃機から一定以上の攻撃を受けるか[注釈 2]、プレイヤーが故意に空母を爆撃した場合や敵戦艦が同じ画面に侵入すると自動的に撃沈され、その時点での残機は全て失われ、その後は一切復活しない。その場合でも敵の駐機場での補給と修理は可能なためゲーム続行は可能だが、受けたダメージは完全回復しない。このためゲーム後半は被弾によるダメージ増加やレーダー網と敵戦闘機の連携が増す事などにより、攻略が著しく困難になる。また、ゲームクリアの目的である敵拠点の工場は、時間の経過やステージにより工場の耐久力が向上し、周辺に高射砲や戦車などが徐々に配備されるため、破壊するのが困難になっていく。 FC版のオリジナルモードとして、2人対戦プレイが可能である。2人対戦プレイ時には、2P側は「バンゲリング帝国」を操作し、戦闘機やミサイルなどにより1P側を攻撃する。FCのIIコントローラで高射砲の向きを操作でき砲弾やミサイルを発砲できる。さらに内蔵されたマイクを使うことで戦闘機をスクランブルさせ、このときは攻撃機も戦闘機となってヘリ掃討任務にあてることができる。 ストーリー(ファミコン版)198X年、突如カリブ海に現れた謎の次元侵略者「バンゲリング帝国」は、カリブ海一帯を地球の空間から隔離した。内部から脱出する事も、外部から侵入することも不可能な異次元空間に取り残されたアメリカ第2艦隊は、謎の発光現象によりバンゲリング帝国の尖兵と化してしまう。 いまやカリブ海は地球侵略用兵器の生産拠点へと改造され、多数の航空機や陸上兵器、最新鋭のQ型戦艦などが人類に牙を剥こうとしていた。 司令官ジミー・ハーディーの迅速な判断により、唯一バンゲリング帝国の支配を逃れた最新鋭空母「R・レーガン」は、ただ一隻でバンゲリング帝国への反撃を開始。わずかに5機のみ残された新型攻撃ヘリがバンゲリング帝国の拠点を破壊する為に飛び立った。 登場兵器自軍
バンゲリング帝国軍装備兵器はすべて米軍の兵器をバンゲリング帝国が乗っ取ったものである。
移植版
開発本作は『シムシティ』(1989年)の作者であるウィル・ライトのデビュー作である[5]。ライトはこのゲームのマップエディッタでマップをエディットしているうちに、シムシティのゲームデザインとしての構想が生まれた[5]。また、このゲームの「敵の拠点破壊が敵の戦力に影響する」という見えない戦略性は、『シムシティ』の原形といえるものである。 ブローダーバンド版のストーリー再び世界征服計画に乗り出した悪のバンゲリング帝国(Bungeling Empire)は、全方位侵略プログラムを埋め込まれた戦争機械(War Machine)の開発に着手していた。幸いにもそれはまだバンゲリング湾(Bungeling Bay)に点在する六個の工場で製造途中の段階だった。戦争機械の完成を阻止するには全工場を速やかに破壊せねばならない。こうしてフォーセズオブグッド(Forces of Good)通称「FOG」が作戦を開始した。FOGは、即席空母「アディクエイト」に改造ヘリコプター「ワイルドファイア Z-39」五機を載せただけという、無いよりはマシな程度の装備でバンゲリング湾に向けて出動した。とは言え、世界の自由と民主主義の命運は実は彼らにかかっていた。 一説上の補足として、バンゲリング帝国はカリブ海のどこかにあるミニ国家であり、前作ロードランナーで多数の金塊を奪われて資金難に陥った事から世界征服計画を一度諦めている。「FOG」は環境保護のNGO団体で、バンゲリング帝国の監視を主な活動にするようになっていた。戦争機械の詳細は不明だが、プログラムといったワードは当時の映画ターミネーターを彷彿とさせるので、パッケージに謎の四行文と重ねて顔アップで描かれているそれを指していると思われる。ゲーム中には全く登場しない。
ファミコン版の開発ファミコン版はラジコンがうまくなりたいというハドソン社員が開発したとされている[6]。実際、主役メカであるヘリの操縦は十字ボタンの上下で加減速、左右で旋回方向の決定というラジコン的なものとなっており、上下左右方向のボタンを押すことで同方向に画面上の自キャラが移動するという当時の主流とは異なるものであった。 スタッフ
評価自機の操作が左右で旋回、上下でスピード調整というラジコン的な方法であったことから、慣れない人にとって非常に難しい操作性であった上、発射する弾は一発ずつで、航空機との格闘戦時に「見越し射撃」が必須で、敵機撃墜の難易度は高い[2]。ただし、アーケード版では操作方法は変更されており、レバーを操作した方向に向くように旋回し、そのままレバーを入れ続けると加速(背後方向にレバーを入れると減速・後退)するようになっている[注釈 5][1]。 発売当時、当たり前のように「ボーナスステージ」や「ボスキャラ」「隠れキャラ」構成が主流になっていたファミコン市場において、攻略順序が任意な上に展開がシビアな本作は、操作性もさることながら、地味な割に高度な攻撃戦略を求められるという言わばマニア向けのゲームシステムであった。その中で発売元であるハドソン社と小学館の『月刊コロコロコミック』と連携し小学生を対象にした過剰な広告戦略をしたため、プレイヤーの多くがマニアのような高度な戦略が立てられない小学生であったことなども実際にプレーヤーの嗜好とゲーム内容にギャップを生むことになった[1]。発売日当日に、ゲームの操作方法などが理解できなかった子供からのクレーム電話を、当時宣伝部所属の高橋名人が受けたというエピソードも残っている。 ゲーム誌『ファミリーコンピュータMagazine』の1991年5月10日号特別付録の「ファミコンロムカセット オールカタログ」では、「マニア向けシューティングだ」、「ヘリを操作して、空母を守りながらマップ上にある工場を爆撃してゆく。自機はダメージ制。非常に面倒くさい操作だ。マニア向けだろう」と紹介されている[7]。 脚注注釈
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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