ナイトウィザード
ナイトウィザード(英:Night Wizard!)は、エンターブレインから出版されている日本のテーブルトークRPG(TRPG)。著者は菊池たけし、F.E.A.R.。表紙イラストは石田ヒロユキが担当。2002年3月にルール第一版が発行され、2007年10月には第二版が発行され、2014年7月30日には第三版『ナイトウィザード The 3rd Edition』が発売されている。 現代を舞台として、影で世界を守る魔法使いたちの活躍を描くライトノベル調のロー・ファンタジーに属する作品で、「ガンナーズブルーム」や「ウィッチブレード」といった機械式の魔法の箒(ほうき)が登場し、この作品のシンボル的なガジェットとなっている。 F.E.A.R.作品としては最も幅広いメディアミックス展開を行っており、小説、漫画、テレビアニメ、コンピュータゲームなどがリリースされている。本記事ではこれらに付いても概略的に触れる。 概要ゲームの舞台は「ファー・ジ・アース」と呼ばれる、地球のパラレルワールドである。(「ファー・ジ・アース」とは異世界の住人がこの世界を呼称するときの呼び名であり、ファー・ジ・アースに住む者たちはわれわれと同じく、この星を地球という名前で読んでいる) ファー・ジ・アースは表面的には我々の住む地球とそっくりだが、大きく違う部分がいくつかある。その最たるものが、町を異界に変貌させる「赤い月の夜」の存在である。 世界設定の雰囲気などはアリスソフトのゲーム『夜が来る!』の影響を強く受けていると長らく言われてきたが、実際はただの被りである(アリスソフトへの話は通っており問題なしとなっている)[1]。 『E-LOGIN』や『マジキュー』など、テーブルトークRPGとは直接関係ないジャンルの雑誌にリプレイを連載し、声優を使ったネットラジオで情報発信を行うなど、ファン層開拓に積極的な展開を図っているのも特徴である。その結果、パソコンゲーム(『ナイトウィザード 魔法大戦 〜The Peace Plan to Save the World〜』)、CDドラマ、コミカライズ(『ヴァリアブルウィッチ』)、テレビアニメ、コンシューマーゲーム(PS2用『ナイトウィザード The VIDEO GAME 〜Denial of the World〜』)と国産TRPG作品としては、『ロードス島戦記』『ソードワールド』に続く、豊富なマルチメディア展開を行う作品となった。 ルールシステム面では、同じ作者の『セブン=フォートレス』シリーズと基本的に同じ体系になっており、データは互換性を持つ。また、世界設定も『セブン=フォートレス』の世界ラース=フェリアと平行世界であるとして関連を持たせてある。この点を発展させ、『セブン=フォートレス V3』(以下『V3』)のリプレイ『フレイスの炎砦』はこの2つの世界を行き来する異世界クロスオーバー作品となっていた。この時点では、『ナイトウィザード』のプレイヤーキャラクター(PC)を『V3』に持ち込むためには、工夫してデータを変更してやる必要があった。しかしその後、『V3』のサプリメント『セブン=フォートレス パワード』により、『ナイトウィザード』から『セブン=フォートレス』への変換が正式にサポートされ、2つのゲームを統合してプレイすることが可能となった。 ルール第二版である『ナイトウィザード The 2nd Edition』では、セブン=フォートレスシリーズのルール第四版である『セブン=フォートレス メビウス』と同時に開発された。この二つのゲームは完全に同一のゲームシステムを持ち、サプリメントなどの導入なしに完全な互換性を持つようになっている。 他の「現代アクションもの」のTRPGにはない大きな特徴として、ダンジョンアタックがメインに添えられていることがある。これはダンジョンゲームを意識していた『セブン=フォートレス Advanced』とシステムが同じ体系であることからの必然的な帰結であったのだが、世界設定などにおいて現代ものでダンジョンを作り出すことに無理のない配慮がされており、ナイトウィザードの独自性として今でも注目されている。しかし、ナイトウィザードのいくつかのリプレイにおいてストーリー性をつけにくいダンジョンシーンを縮小した結果、リプレイから興味を持ったユーザーにとってダンジョン要素が逆に煩雑に映りダンジョンシーンをほとんど扱わずに『ナイトウィザード』のゲームを行うというファンも増えてきた。 ルール第二版である『ナイトウィザード The 2nd Edition』ではこのような新しいファン層に配慮して、基本ルールからはダンジョンの要素がとりのぞかれ、ダンジョンシーンなしでもゲームの楽しさを十分満喫することができるようにルールが作り直されている。なお、ダンジョン探索の要素はサプリメント『スクールメイズ』で追加ルールとして記載された。 システム細かいルールのバージョンは『ナイトウィザード』の版によって違うため、現行ルールである『The 2nd Edition』を基本にしつつ、どの版でも共通する構造を中心に解説する。なお便宜上、特記なき限りルール第一版を「1st」、『The 2nd Edition』を「2nd」と表記する。 キャラクターメイキングプレイヤーキャラクター(PC)の作成はクラス制に属する。 PCは「属性」を2つと、「キャラクタークラス」を2つ選択する。その組み合わせによりキャラクターの能力値、特殊能力、魔法などが決定される。「クラス」は「ウィザードクラス」と「スタイルクラス」の2つに分かれ、それぞれ1つ選択する。これにより、同じウィザードクラス(例えば魔術師)でも戦闘スタイルに差異(前衛攻撃型なのか後方支援型なのかなど)をつけることができる。 なお、スタイルクラスは2ndで設けられたものである。1stでは、クラスは2ndでいうウィザードクラスのみであり、キャラクター作成時に選択できるクラスは1つだけであった。 属性とクラスの具体的なリストはナイトウィザード#属性一覧、およびナイトウィザード#クラス一覧を参照。属性は一度決めると変更はきかないが、クラスはキャラクターの成長時に転職することが可能である。 行為判定行為判定は上方判定に属する。使用されるランダマイザーは六面体ダイス2個である。 六面体ダイス2個の出目の合計(以後、2d6と表記)に行為判定に使用する能力値を足したものを「行為判定の達成値」と呼び、それがゲームマスターの設定した「行為判定の目標値」以上ならば行為判定は成功したとみなされる。 全てのキャラクターは固有の「クリティカル値」と「ファンブル値」を持つ。2d6の出目が「クリティカル値」と等しい場合はクリティカルが発生し、達成値に+10を加えたうえでもう一度ダイスを振ることができる。このときの追加の2d6の出目が再び「クリティカル値」と等しい場合はさらに+10の修正を受けられる。これはクリティカル値が出続ける限り続く無限ロールである。一方、振ったサイコロの出目が「ファンブル値」に等しかった場合は判定値-10が達成値となる。ただし、クリティカル発生中にはファンブルは発生せず、普通の出目として扱う。 この「クリティカル値」と「ファンブル値」は毎セッションの開始ごとに決定しなおすというのが『ナイトウィザード』というゲームの大きな特徴でもある。プレイヤーはセッションの開始時に2d6を二回振り、それぞれの値が「クリティカル値」と「ファンブル値」になるので、確率論的には7(2d6の最頻値)という出やすい値が「クリティカル値」もしくは「ファンブル値」に決定されやすいという、非常にピーキーなゲームバランスが現出されやすい。(なお、「クリティカル値」と「ファンブル値」が同じになる場合は決定しなおしになる)。ただし、「クリティカル値」もしくは「ファンブル値」の決定時にプレイヤーキャラクターが持つCF修正値(【幸運】÷3)と同じ数だけ数値を上下できるという特典もある。そのため、あまりにもバランスの悪い値(7がファンブル値など)になった場合でも、ある程度は対処できるようになっている。 プラーナプラーナとは、消費することで行為判定の際に達成値を上昇させることができる一種のヒーローポイントである。また、一部の特技がこのプラーナを使用することで発動するようになっている。 クリティカルによる無限ロールとプラーナの存在により達成値を飛躍的に上昇させることが可能になっており、ヒロイックな活躍を演出するためのシステム的手法であるともいえる。つまり、能力値が弱いキャラクターでも、能力値の強いキャラクターに対して幸運(クリティカル)と奇跡の力(プラーナ)で立ち向かえるというわけである[2]。 2ndでは達成値に消費したプラーナの数だけダイスを振り足すという形をとるが、1stでは消費したプラーナが直接達成値に足されていた。消費されたプラーナは特定のアイテムやオブジェクト、プリプレイ、その他GMが特別に許可した場合にのみ回復する。 プラーナにはそのキャラクターが持つ総量である「内包値」と、1回当たりの使用限度量である「解放力」が設定されている。キャラクター作成時のプラーナ内包値/解放力は、2ndではCF修正値(「行為判定」を参照)から自動的に算出される。すなわちキャラクター作成時の解放力はCF修正値と同値であり、内包値は10から解放力を引いた数値である[3]。1stでは「9/1」、「8/2」、「7/3」の三択であった。 内包値と解放力はGMの許可のもとで、キャラクターの成長に応じて増加させることができる。 シナリオの進行シナリオの進行にはシーン制が採用されている。 現行ルールである2ndでは、1回のセッションは「オープニング」「ミドル」「クライマックス」「エンディング」に分けられ、1回のセッションで1本のシナリオを確実に消化することを目指す仕組みになっている。これにオプショナルルールとしてダンジョン探索のフェイズ「ダイブ」を設けることができる(サプリメント『スクールメイズ』にてサポート)。 1stでは、1回のセッションは「オープニング」「リサーチ」「ダイブ」「クライマックス」「エンディング」の5フェイズで構成されていた。ただし、ダイブは省略されることもあった。 戦闘ルール『ナイトウィザード』の戦闘はスクエア(四角マス)を使用したバトルマップを使用する。このマップはダンジョン探索にも使われ、戦闘とダンジョン探索はシームレスに進行させることができる。 1マスの中にはキャラクターが14体まで入ることができ、範囲攻撃や乱戦などが理解しやすいようになっている。(これは後のF.E.A.R.のゲームに多用される「エンゲージ」の概念の原型となっている) 特徴的なのが行動カウントのルールで、キャラクターは戦闘ラウンドの開始時に「行動カウント値」を決定し、行動カウントが高いものから戦闘行動を行っていく。そして、行動が終了すると「行動カウント値」を一定値だけ減らす(2ndでは-10、1stでは-20)。そうやって、行動カウント値が0以下になるまでは行動が可能となるのである。 また、魔法には準備時間という概念がある。魔法は自分の行動カウントでは発動せず、魔法準備しかできない。自分の行動カウントから魔法ごとに設定されている「消費カウント」を引いたカウント値に魔法は発動する。自分の行動カウントから魔法の発動カウントまでの間にダメージを受けると魔法発動に失敗する恐れがある。 2nd では、事前に自らの肉体や精神に特定の魔法の詠唱回路を刻み付けておく「装備魔法」が設けられた。これは詠唱時間をもたずにその場で発動できる魔法である。 箒『ナイトウィザード』シリーズにおいて特徴的にアイテムに「箒(ウィッチブルーム)」といわれるものがある。これはいわゆる魔女の箒をモチーフに、魔法と科学を融合させて作られた万能兵器であり、魔女の箒のような「空を飛ぶ乗り物」としての機能と銃や剣のような「武器」としての性能を同時に持つ道具である。 箒はその用途ごとに様々な種類が用意されており、プレイヤーキャラクターは所持金を使って自由に箒を購入でき、また車やバイクのノリでパーツを購入してカスタマイズをすることも可能である 代表的な箒には、大型ライフルの用途に使える「ガンナーズブルーム」、白兵戦用の大剣として使える「ウィッチブレード」、格闘戦に使用できるトンファー型箒「ドラゴンブルーム」、魔力の集中体となる“魔法の杖”として使える「ウィザーズワンド」、攻撃能力を排除し高速飛行能力のみに特化した「テンペスト」、大人数を輸送するための大型箒「ブロンズスター」などがある。 2ndでは、ソースブック『ソウルアーツ』にて、箒を用いた戦闘のスペシャリストであるウィザードクラス「箒騎士」が設けられた。またソースブック『ファー・ジ・アース』で箒に関するデータが改訂された他、オリジナル箒の作成ルールが追加されている。 属性一覧選んだ属性により能力値が決まるほか、使用できる魔法の種類が決定される。
クラス一覧選んだクラスによりプレイヤーキャラクターの使用できる特殊能力が決まる。2ndで設けられた「スタイルクラス」もこの節で扱う。 2nd移行に当たり、1stにおけるクラスは全てウィザードクラスとなっている。2ndでのプレイヤーキャラクターは、ウィザードクラスとスタイルクラスの組み合わせで表現される。 『ナイトウィザード』シリーズ共通のクラス
『ナイトウィザード The 2nd Edition』で追加されたクラス
The 2nd Editionサプリメント『スクールメイズ』で追加されたウィザードクラス
The 2nd Editionサプリメント『ソウルアーツ』で追加されたウィザードクラス
世界設定『ナイトウィザード』は現代の地球を舞台とした現代もののTRPGである。PCたちはこの世界で超人的な力を持つ「魔法使い」となり世界を守るために戦うことになる。しかし魔法や魔法使いの存在は一般の人々には秘せられており、PCたちの戦いは人々に知られることなく行われるものとなっている。 『ナイトウィザード』の世界は他の菊池たけしの諸作品と共通する多元宇宙観「主八界」に存在し、数多くの設定が裏設定としてクロスオーバーしている。菊池たけしの多元宇宙観については「主八界」の項目を参考のこと。特に「第八世界ファー・ジ・アース」と「裏界」の節を参照されたい。 魔法とウィザード『ナイトウィザード』の世界では魔法が確実に存在する。しかし、魔法に危険を感じた太古の超越者たちにより魔法は隠蔽され、代わりに科学が台頭した。魔法使いたちは人々の社会の影でひっそりと暮らしている。しかし、魔法でしか対抗できないような世界の危機がおとずれたとき、彼らは魔法の力を使ってそれに立ち向かうことになる。 この世界では、「常識ではありえない超人的な能力」は全て魔法の一種として扱われる。つまりこのゲームでは、気を使う格闘家(ゲーム上では「龍使い(KUNG-FU MASTER)」と呼ばれる)も、オーバーテクノロジーで改造されたサイボーグも、「魔法使い=ウィザード」と呼称されるのである。 夜闇の魔法使い(NIGHT WIZARD)の一種である強化人間(KILLING MACHINE)は、幼少時にウィザードの才能を見いだされ、優秀な兵器になるべく鍛え上げられる。近年の対エミュレイター戦闘の激化に比例して強化人間の人数は増加し、強力な決戦兵器として認知されて来ている。強化人間の育成機関としては傭兵斡旋会社・絶滅社などがある。もっとも有名な強化人間の一人である緋室灯(ひむろ・あかり)もこの絶滅社に属する。ゲーム的には物理攻撃に特化したウィザードクラス。特に射撃戦向けの数値を誇り、取得可能な特殊能力もそれに準じたものが多い。戦闘値ジャッジ(除く行動値)を強制的にクリティカルに変える≪幻想舞踏≫は、強力な切り札であると共に、強化人間の背景をよく表した特殊能力である。 エミュレイターPCたちが戦うことになる敵対存在のこと。日本語表記では『侵魔』と書かれる。 不定形の精神寄生生命体で、ヒトやモノにとりつき、その者の心の中にある生命エネルギー「プラーナ」を吸い取る。プラーナは夢や欲望といったものと深いかかわりがあり、エミュレイターは寄生した者の心にささやきかけ、心の奥の欲望を暴走させることが多い。 エミュレイターには通常の科学兵器は効果をもたない。世界の『常識』ではありえない超人的な力、すなわち「魔法」だけがエミュレイターを倒せる。 世界結界エミュレイターたちの侵略から身を守るために、太古より地球全体に世界結界と言われる不可視の結界が張られている。この結界は簡単に出入りできないだけでなく、世界を修復する力が備わっている。世界結界にプログラムされている「地球のあるべき姿」(これを『常識』と呼ぶ)が壊されると、世界結界は地球の現実を「あるべき姿」に戻す。 例えば、ウィザードとエミュレイターの戦いに巻き込まれてヒトが死んだとしても、世界結界は作用すれば人々の記録や記憶、現場の痕跡などが書き換えられて、その被害者は事故死などの「常識的な原因で死んだ」と処理されてしまう。場合によってはその被害者がはじめからいなかったことになったり、死という結果そのものまでキャンセルされることもある。 世界結界はウィザードにとっては敵にも味方にもなる存在である。世界結界は魔法やエミュレイターの存在を否定する。世界結界は世界にエミュレイターが入り込むのを防いでいる(エミュレイターの存在を世界が認めないため)。また、魔法的な事件を自動的に隠蔽してくれるため、魔法を使っているシーンが一般人に目撃されても、ある程度までならば容易に隠蔽されるという安心感もある。しかしその一方で、世界結界はウィザードが魔法を使うことそのものを禁止しているのである。 月匣(げっこう)と月衣(かぐや)力あるエミュレイターやウィザードたちは地球上で魔法的な能力を使うために、自らの周囲に別の結界を張るこという方法を編み出した。こうすることでエミュレイターやウィザードたちは世界結界の影響を受けずに活動できるようになる。エミュレイターが張る結界を『月匣(げっこう)』、ウィザードが張る結界を『月衣(かぐや)』と呼ぶ。現在の地球で魔法的な能力を使えるエミュレーターやウィザードという者は、これらの結界を張ることができる「選ばれたエリート」と言える。全てのPCは月衣を無条件で常に展開できるくらいの実力者とされるため、ゲーム的には世界結界のせいでPCが魔法を使えなくなるということは一切ない。また、月衣に物を収納して持ち運ぶことも出来る。自分の周囲の空間に直接収納するので重量を感じることは無い。 月匣と月衣は似たものであるが、相違点が一つだけある。それは月匣は自分の周囲に対して張るだけでなく広大な空間を覆うように拡大させて張ることが可能で、そして月匣の中にあるヒトやモノからプラーナを吸収することができるということである。プラーナを吸収すればするほど月匣はより強固により大きくなっていき、最終的には世界結界に干渉するくらいの力を持つようになる。そうなると、エミュレイターが寄生している対象の欲望が『常識』として具現化された世界に地球が生まれ変わってしまう。 PCたちウィザードはそうなる前に、敵の月匣の中に突入してエミュレイターを倒すことになる。この月匣の中はダンジョンとして表現され、現代ものでダンジョンアタックを行うというナイトウィザードの特徴的なギミックになっている。(ただし近年のリプレイやシナリオでは月匣の中はダンジョンではなく単純なバトルフィールドとして表現されるものが多い) 月匣の中は世界結界の影響を受けないのでPCたちは気兼ねなく魔法が使えるのも大きな特徴である。 月匣が展開された空間には「赤色の月」が昇る。それゆえにこの異空間に「月の匣(はこ)」の名がつけられている。赤の月は本作の重要なキー・ビジュアルとして関連作品の多くに使われている。 裁定者世界結界に「世界のあるべき姿」(常識)をプログラムする能力を有した人物のこと。裁定者はその能力を自覚していることは少なく、彼らが人生の中で"世界はこういう姿になっているのだ”と強く信じることで世界はその通りに姿を変える。 『ナイトウィザード』の世界では、歴史上の大きな発見をした科学者たちの多くは実は裁定者ということになっており、彼らは世界の真実を発見したのではなく、彼らが唱えた自説に合わせて世界が変革したのである。 裁定者の素質を持つ者が発見されると、たいていの場合はエミュレイターとウィザードの両勢力の間で奪い合いが起こる。これは世界結界を自分たちに都合よく変革させるためである。ルール第一版時代のリプレイ「幼年期の終わり」は、この裁定者を巡るストーリーである。 第三天使の喇叭事件1986年、黒海沿岸部の七徳の宝玉の一つ正義の宝玉を炉心とする魔導発電所が暴走、金色の魔王ルー・サイファー(正確にはその現し身の一つ)の顕現を許してしまう。ウィザード達の決死の戦いにより、顕現は数秒間に抑えられたものの、ルー・サイファーは魔導炉の無限ともいえるエネルギーを奪い逃走。この事件は世界結界に癒えることのない傷を残し、魔王を始めとするエミュレイターの介入を容易なものとしてしまう。また、世界結界が弱まったことにより、ウィザードの出生数も大幅に増加する結果となった。 魔王と裏界帝国魔王とはエミュレイターの上位に位置する者たちである。『セブン=フォートレス』の世界設定と深く関わる存在であり、『セブン=フォートレス』と『ナイトウィザード』をクロスオーバーするときの接着剤のような役割を持つ敵キャラでもある。 魔王たちは裏界と呼ばれる異世界に国を作っている。主要な魔王の多くはソロモン72柱がモチーフとなっている(ただし、それに当てはまらない魔王も多く存在する)。 魔王たちは人間を魅了し操る為に萌え属性をもった美少女の姿をとっている。より多くの「信者」を獲得するために、強い力を持つ魔王ほどメジャーな(一般受けし易い)萌え属性を備えており、弱い魔王ほどマニアックな(一般受けし辛い)残り物の萌え属性で我慢することとなる。実際にサプリメント『ロンギヌス』(ルール第一版)および『スクールメイズ』(『The 2nd Edition』)では萌え美少女化された魔王のパーソナリティデータが掲載されている。このコアな設定が、『ナイトウィザード』が、美少女が登場する読者参加型ゲームも長年手がけてきた菊池たけしの作品である事実をもっとも思い出させる部分になっている。 なお、魔王は事実上、不死であるとされる強大な生命力を持っている上、現世に出現する際は本体の影と言うべき存在のため、何度倒しても時間をかけていずれ復活するとされている。この設定により、GMは「公式NPCを殺してはならない」という暗黙の了解を無視できるようになっている。主八界#裏界および主八界の神々#裏界の魔王の節も参考。 冥魔冥魔は『ナイトウィザード The 2nd Edition』で現れた新たな敵である。冥魔とははるか古代において「闇界」という牢獄世界に封印された混沌の魔物なのだが、近年になってその闇界の封印がゆらぎ、その中に封じられていた冥魔たちが世界結界を越え地球にやってくるようになった。 冥魔は地上では黒い闇そのものが実体をもったような異形の生物として現れる。多くの冥魔は破壊本能だけの存在でありコミュニケーションをとることができない。裏界の侵魔とは違いこの世界の完全なる消滅を目的としている。冥魔は侵魔よりもはるかに強大な戦闘力を持つことも多く、いわば「暴れまわる大怪獣」のノリといえる(実際、裏界の魔王の一人が一瞬で冥魔に「食われた」という事例がある)。地球の破壊ではなく「侵略」を目的とする裏界帝国にとっては冥魔もまた厄介な敵である。冥魔の出現に際してはウィザードと裏界勢力が協力することさえ珍しくない。 冥魔はこの地球を含むあらゆる多元宇宙にとっての共通した敵でもある。更なる詳細は「主八界」を参照。 マジカル・ウォーフェア『ナイトウィザード』のルール第一版では、いくつかのリプレイやシナリオで語られる物語が、実は裏で一本につながっていたという設定がされている。この連作ストーリーを「マジカル・ウォーフェア」と呼ぶ。 200X年[4]4月、魔王ベール=ゼファーが世界結界を強引にこじあけたことにより、他の魔王たちも表の世界に「現し身」を送り込むことが可能になった。この時から魔王たちのかねてよりの「悲願」を叶えるために魔王たちは動き出したのである。マジカル・ウォーフェアに属するとされる物語とは、この「悲願」を叶えるために魔王たちが起こした事件を語るリプレイやシナリオを指す。 魔王たちの悲願とは、表の世界のどこかにある「七つ集めるとあらゆる願いが叶うといわれる宝玉」の奪取である。宝玉を巡る争乱はTVアニメ『ナイトウィザード The ANIMATION』及び同作のノベライズ『柊蓮司と宝玉の少女』(リプレイでは後者の設定が正史となっている)で終結し、アニメに先行して発売された『ナイトウィザード The 2nd Edition』は第二次古代神戦争(後述)を舞台としている。 『ナイトウィザード』ルール第一版初期の頃で魔王が出てくる物語は、「久方ぶりに地上にでた魔王たちが好き勝手に自分の欲望のために世界を破滅させようとするのを、ウィザードたちがなんとか止める」というものばかりであるが、これらも現在では「魔王たちは、宝玉を手に入れるためにまず世界結界の破壊を行おうとしていた」とされている。第一版のサプリメント『オーバーナイト』では裏界帝国や宝玉の設定がまだ纏まっていなかった時期に発表された作品がどのような形でマジカル・ウォーフェアに関わっていたのかが詳細に解説されている。 第二次古代神戦争マジカル・ウォーフェアの進行中、第八世界ファー・ジ・アースと同じ主八界の一つである第一世界ラース=フェリアにおいて、ラ・アルメイア地方の指導者「幻導王」フィルナ=メイの側近エレナの策謀により、冥界に堕ちた古代ラース=フェリアの守護者エルオースが不完全ながら復活。冥界に封じられていた古代神やその眷属である冥魔がエルオースの力によって解放され、ラース=フェリア全体が冥界に堕ちかかる事態が発生した(『セブン=フォートレス V3』リプレイ『ラ・アルメイアの幻砦』)。これに対し、ファー・ジ・アースを管理する幻夢神の2つの現し身の一方ザ・ゲイザーは幻夢神を覚醒させて対処しようとしたが、もう一方の現し身TISと対立し、ファー・ジ・アース表界の存続を望むウィザードたちによって滅ぼされた(TVアニメ『ナイトウィザード The Animation』及び小説『柊蓮司と宝玉の少女』)。この結果、その力を弱めながらも人間界と冥界の壁となっていた幻夢界は完全に機能を停止し[5]、古代神や冥魔はラース=フェリア以外の世界にも侵略を開始した。これが「第二次古代神戦争」である。 第二次古代神戦争勃発後のファー・ジ・アースは、守護者アンゼロットが出身世界である第三世界エル=ネイシアを古代神の侵攻から守るべく遠征に出、柊蓮司もラース=フェリア救済に赴くなどその余波を受けていた(『セブン=フォートレス メビウス』リプレイ『シェローティアの空砦』第1巻)が、古代神の一柱である冥刻王メイオルティスが裏界の魔王アスモデートを利用してファー・ジ・アースに現出を果たした事(ファンブック『オペレーション・ケイオス』)で、否応なく第二次古代神戦争に巻き込まれる事になる。『ナイトウィザード』において幻夢神や冥魔が絡むリプレイやシナリオは、すなわち(ファー・ジ・アースにおける)第二次古代神戦争に属するとされる物語群である。 『ナイトウィザード The 2nd Edition』は、主八界の他の世界における第二次古代神戦争を扱う『セブン=フォートレス メビウス』とルールを共通させており、両者を連携させることで異世界を舞台にした冒険も可能になっている。 ウィザードたちの組織以下の組織はルールブック、ソースブック、リプレイに登場する組織である。
関連製品一覧TRPGルール・サプリメントナイトウィザード(ルール第一版)
ナイトウィザード The 2nd Edition
ナイトウィザード The 3rd Edition
クロスオーバー作品
リプレイナイトウィザード
クロスオーバー作品
小説
ファンブックCDドラマつきリプレイ。シナリオも収録されている。
コンピュータゲームナイトウィザード 魔法大戦 〜The Peace Plan to Save the World〜ナイトウィザード The VIDEO GAME 〜Denial of the World〜5pb.Games制作。PlayStation 2用。2008年2月28日発売。ジャンルは選択肢型のアドベンチャーゲーム。アニメ版の登場人物と設定を基本として製作されている。よって、主な登場人物はアニメ版と同様。主人公は柊蓮司となる。OP・EDの曲はゲームオリジナルだが、歌手はアニメ版と同じである。シナリオは山北篤、細江ひろみ。ヒロイン毎のストーリーが存在するためギャルゲーの一種とも言えるが、恋愛ゲームではない。選択によって変化するボイスドラマと捉えるのがいいだろう。 The VIDEO GAME オリジナルキャラクター
The VIDEO GAME ゲームシステム『The VIDEO GAME』では、テーブルトークRPGの雰囲気を出すためにいくつかの独自システムが搭載されている。
コミック版『ナイトウィザード』の公式漫画化として発表された漫画作品が複数存在する。TRPGというジャンルの性質上、他媒体で発表されたストーリーをそのまま漫画化するのではなく、背景世界や設定を活かしたオリジナルストーリーを展開する形式が取られている。 ヴァリアブルウィッチ作者は猫猫猫(ねこびょうねこ)。『ファミ通PLAYSTATION+』2007年6月号から2008年5月号にかけて掲載された。「心臓がドキドキすると女性化する」特殊体質の少年・竜之介を主人公にした、TSF要素も含む作品となっている。これまであまりスポットが当たらなかった、気を操る格闘家的クラスの「龍使い」を主人公[9]としている点も目新しい。 本編のストーリーは、学園七不思議の謎を通じて「賢明の宝玉」といわれるアーティファクトに迫るというもので、これは「マジカル・ウォーフェア」の展開にも直結している。 登場人物
単行本
柊蓮司第一の事件作者は猫猫猫。「ヴァリアブルウィッチ」完結の翌号に当たる『ファミ通PLAYSTATION+』2008年6月号から『ファミ通PSP+PS3』(連載中に誌名改題)2008年8月号まで連載された。全三話。後に発売されたファンブック『スターダスト・ティアーズ』にも掲載されている。『ナイトウィザード』の名物キャラクター・柊蓮司について、初出であるリプレイ『星を継ぐ者』で裏設定としてほのめかされていた「ウィザードとして覚醒した直後の事件」に関するストーリーである。PS2版のヒロインである望月チハヤが登場し、彼女が柊から当時の話を聞きだす、という形式を取っている。 不幸の在処〜柊蓮司の一週間〜作者はみかきみかこ。『ゲーマーズ・フィールド別冊』Vol.10「菊池たけしがまたまいりました」に収録された読切短編。柊蓮司がアンゼロットから与えられた任務の一つを描いたもので、このエピソードで彼は中等部三年生に「下がって」いる。後にこの作品も、マジカル・ウォーフェアの一端であったとする設定が公開された。 はわっと☆ウィザード!作者はみかきみかこ。『ゲーマーズ・フィールド』15th Season Vol.5(2011年6月刊)より18th Season Vol.5(2014年6月刊)まで連載。「星を継ぐ者」以来のロングランキャラクターにして「第八世界の守護者代行」赤羽くれはを中心としたギャグ4コマ漫画となっている。『セブン=フォートレス えとせとら!』等と共に『はわっと☆ナイトウィザード!』の題名で単行本化されている。 単行本ファンブる☆うぃざーど!作者はみかきみかこ。『ゲーマーズ・フィールド』18th Season Vol.6(2014年8月刊)より20th Season Vol.6(2016年8月刊)まで連載。『NW3』リプレイPCたちが活躍する4コマ。 テレビアニメ2007年10月より『ナイトウィザード The ANIMATION』のタイトルで独立UHF局、同年11月よりキッズステーションにて放送された。 ストーリーはオリジナルだが、雑誌に連載されたリプレイからのキャラクター・エピソード・設定を含んでおり、それらの後に起きた物語という設定になっている。また、主に前述されている『マジカル・ウォーフェア』の完結編として制作されているため、『ナイトウィザード The 2nd Edition』においては本作品を踏襲したシナリオが存在、登場人物の幾らかはNPC登録されている。そのため、リプレイと『ナイトウィザード The 2nd Edition』をあわせるとキャラクターの繋がりや話の構成の全貌が見え、より一層楽しめるようになっている。 なお、放送時間帯に流れたTRPG・書籍などのCMは、アニメ本編の1シーンの台詞を入れ替えたパロディになっていた。 登場人物(アニメ)
スタッフ
主題歌
地上波での第1話のオープニング映像は一部本編の映像を使用していた(キッズステーションの第1話のオープニング映像は地上波での第2話以降のオープニング映像と同じ物を使用)。 各話リスト
放送局
備考
インターネットラジオ
ノベライズ→書誌情報については「§ 小説」を参照
CD5pb.RecordsからキャラクターCD(キャラクターソングとミニドラマと声優のフリートークが収録)とオリジナルサウンドトラックが2007年12月に発売。2008年4月にゲームオリジナルキャラクターのキャラクターソングの新曲と共に、アニメのOPとED、PS2ゲームのOPとED、キャラクターCDのキャラクターソングを収録したベスト盤が発売。
DVDジェネオンエンタテインメントから『ナイトウィザード The ANIMATION』のDVDが全7巻にて発売。通常版と初回生産限定版があり、限定版には「月刊ナイトウィザード The ANIMATION」という冊子が毎巻付属している。これはアニメの設定資料の他、TRPG『ナイトウィザード The 2nd Edition』の追加データやリプレイ『ベル・ゲーム 〜虚像のエコー〜』が掲載されており、TRPG版ナイトウィザードのサプリメントとしての形態も持っている。 DVD各巻にはオーディオコメンタリーが2種類収録されている。1つは監督の山本裕介と原作者の菊池たけしにアニメ版の声優を加えての副音声解説だが、もう1つは菊池たけしとF.E.A.R社員の矢野俊策(TRPGリプレイでの柊蓮司の担当プレイヤー)にTRPG側の関係者を加えての副音声解説で、アニメで描写されたシーンをTRPGのルールにおきかえるなど、TRPG識者向けの解説が成されている。
※田中天がプレイヤーとして演じたキャラクター(『星を継ぐ者』のグイード=ボルジアと『白き陽の御子』の要いのり)は、アニメ版には登場していない。また井上純弌は『ナイトウィザード』ではイラストのみ担当している。 脚注
関連項目外部リンク
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