エウリュステウス![]() エウリュステウス(古希: Εὐρυσθεύς, Eurystheus)は、ギリシア神話に登場するミュケーナイ及びティーリュンスの王である。カール・ケレーニイによればエウリュステウスとは「あまねく強者」の意である[1]。性格は執念深く卑劣。彼に仕えたヘーラクレースに「12の功業」を課した。 父はペルセウスの息子ステネロス、母はペロプスの娘ニーキッペー、姉妹にメドゥーサ、アルキュオネーがいる[2]。ヘーラクレースの母アルクメーネーはエウリュステウスの従姉妹に当たる。アムピダマースの娘アンティマケーを妻とし[3]、2人の間に娘アドメーテー[4]、息子アレクサンドロス、イーピメドーン、エウリュピオス、メントール、ペリメーデースがある[5]。 神話出生アルクメーネーが産気づいたとき、ゼウスはやがて生まれるわが子(ヘーラクレース)をミュケーナイの王位につけようと思い、「今日生まれる最初のペルセウスの後裔が全アルゴスの支配者となる」と誓言した。ゼウスの妻ヘーラーはこれに嫉妬し、出産を司る女神エイレイテュイアを遣わしてアルクメーネーの出産を遅らせ、もう1人のペルセウスの子孫でまだ7か月だったエウリュステウスを先に世に出した。 ゼウスは怒ったが、自分の誓言を覆すことはできず、誓言をすすめた女神アーテーの頭を腹立ち紛れにつかむと、天空から放り投げて追放にしたという。 ヘーラクレースの功業とエウリュステウスヘーラーに狂気を吹き込まれたヘーラクレースはメガラーとの間にもうけたわが子を炎に投げ込んで殺してしまった。正気に戻ったヘーラクレースは、罪を償うためにデルポイに赴き、アポローンの神託を伺った。神託は、「ミュケーナイ王エウリュステウスに仕え、十の勤めを果たせ」というものだった。その詳細はヘーラクレース#ヘーラクレースの12の功業を参照のこと。 ヘーラクレースが最初の功業でネメアーの獅子の死骸を持ち帰ったのを見て度肝を抜かれたエウリュステウスは、ヘーラクレースに命じて以後は獲物を城門の外で展示させることにした。さらにエウリュステウスは真鍮の大きな甕(かめ)を作らせ、ヘーラクレースが戻ってくるとこの甕のなかに逃げ込んだ[注釈 1]。ヘーラクレースに新しい課題を告げるときには、コプレウスを伝令として面と向かって話さないようにした。 10の課題のうち、「レルネーのヒュドラー退治」ではヘーラクレースがイオラーオスの助力を得たこと、「アウゲイアースの家畜小屋」ではヘーラクレースが罪滅ぼしの報酬を得ようとしたことを理由として、エウリュステウスは勘定に入れなかったため、功業は12に増えた。また、「アマゾーンの女王の腰帯」は、エウリュステウスの娘アドメーテーがアマゾーン族の女王ヒッポリュテーが持つ帯を欲しがったために命じたという。 「アウゲイアースの家畜小屋」の功業で、報酬の約束を果たさなかったアウゲイアースへの報復のため、ヘーラクレースがエーリスを征服してティーリュンスに帰還すると、エウリュステウスはヘーラクレースが大王の位を狙っていると非難し、アルゴスから追放した。 アテーナイとの戦い、死ヘーラクレースの死後、その子供たち(ヘーラクレイダイ)がミュケーナイの王位を望むことを恐れたエウリュステウスは、彼らを殺そうとして追い回した。ヘーラクレースの母アルクメーネーと息子のヒュロスらは、はじめトラーキースのケーユクスのもとにいたが、ケーユクスはエウリュステウスに脅されて彼らを保護しきれなくなった。放浪の末、アルクメーネーたちはアテーナイのテーセウスに助けられた[注釈 2]。 エウリュステウスはヒュロスらの身の受け渡しを要求してアテーナイと戦いとなった。ヘーラクレースの子供の一人が死ななければアテーナイは敗れるという神託のため、ヘーラクレースの娘マカリアーはマラトーンで自殺した[注釈 3]。この戦いはアテーナイの勝利となり、エウリュステウスの息子たちはみな討ち取られた。エウリュステウス自身は戦車に乗って逃げたが、ヒュロスに捕えられて殺された[注釈 4]。ヒュロスはエウリュステウスの首を斬ってアルクメーネーに渡し、アルクメーネーはその両目を機織りの針でえぐり出した。 一説にはエウリュステウスは殺される前にアルクメーネーの前に引き出され、これまでの自身の行為を「ヘーラーに命じられただけで、自分の責任ではない」と告げて命乞いをするも、彼女に「息子の味わった労苦を思えば、あなたを許すことはできない」と拒否されている[6]。 エウリュステウスの死後、ミュケーナイの王位はアトレウスが継いだ。 系図
脚注注釈
脚注参考図書
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