アドリア海の復讐
『アドリア海の復讐』(アドリアかいのふくしゅう、原題 仏: Mathias Sandorf )は、1885年11月19日に刊行されたジュール・ヴェルヌの海洋冒険小説。 概要A.デュマ『モンテ・クリスト伯』の翻案小説[1]で、オーストリア帝国に舞台を移している。1885年6月16日から9月20日にかけて "Le Temps" 紙に連載された。同年11月に出版された。 1994年1月『青春アドベンチャー』でラジオドラマ[2]が放送された。 あらすじ1867年、トリエステ(当時はオーストリア領)で伝書鳩から謎の暗号文が見つかる。鳩の向かう先がマジャル人富豪のサンドルフ伯爵であることから怪しんだ発見者のサルカニーとツィローネは、サンドルフ伯爵には何かやましいことがあると察する。そこで、密告で大金を手に入れるため、仲間のシーラシュ・トロンタルと組んでこれを調べ上げ、証拠を押さえるべく真面目そうな使用人になってサンドルフ伯爵の屋敷に潜入し、暗号解読に使う紙を見つけて写し、さっそくオーストリア警察に密告する。 サンドルフ伯爵はハンガリーの独立運動に関わっており、もう計画はあと少しで流血沙汰を避けてハンガリーが自治権を手に入れられる流れになるところまで進行していた。しかしこの密告が元で、サンドルフ伯爵・バートリ教授・ザトマール伯爵は逮捕され、反逆罪で死刑が決まる。3人ともに死は覚悟していたものの、自分たちが「最近雇われただけの使用人」として巻き込まないように庇ったサルカニーらが自分たちを陥れたと知って激怒し、復讐のために脱走を決意する。しかし脱走はうまくいかず、ザトマールは牢屋から出られず、逃げられたバートリも彼とサンドルフを庇った漁師アンドレア・フェラートと共に別の密告者カルペナによって逮捕されてしまう。ザトマールとバートリは銃殺され、フェラートは終身刑の末獄死、ただ一人サンドルフ伯爵だけは嵐の海に消えて生死不明となる。彼らの遺族も家族の死に目に会えなかったり、働き手を亡くし路頭に迷うなど、悲惨な運命をたどる(以上第1部)。 それから15年後、ラグサ(現在のドゥブロヴニク)にアンテキルト博士と名乗る医者が現れる。彼こそは、嵐の海から生還してオスマン帝国に逃げのびたサンドルフ伯爵だった。ハンガリーの自治獲得は、生き残った他の同志によって平和的に行われていた(アウスグライヒ)。一方、父親の失踪後に残されていたサンドルフ伯爵家の一人娘は事故で亡くなったと知った彼は、自分たちを密告したサルカニーたちへの復讐をするために戻って来たのである。しかし運命とは皮肉なもので、かつての同志バートリの息子は復讐対象のトロンタルの娘(彼女やトロンタル夫人は善人であった)に惚れている。そしてサルカニーは、またもや金目当てで過去の悪行の片棒を種にトロンタルを脅して、彼の娘を妻にしようともくろむ。 アンテキルト博士(=サンドルフ伯爵)には医学知識や、それで手に入れた資金を元に作った科学技術の粋を集めた船といった道具、そして彼を慕う仲間もいるが、対するサルカニーも北アフリカの過激派などに顔が利くので一筋縄ではいかない。こうして当初は個人同士の復讐だった対決は次第に激しくなり、ついには紛争レベルにまでなっていく。 登場人物
日本語訳
脚注 |
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