アスチュート級原子力潜水艦

アスチュート級原子力潜水艦
海上公試中の2番艦「アンブッシュ」
海上公試中の2番艦「アンブッシュ
基本情報
種別 攻撃型原子力潜水艦
前級 トラファルガー級
次級 最新
要目
水中排水量 7,800t[1]
全長 97m[1]
最大幅 10.7m
機関方式
最大速力 水中:30kt[1]
潜航深度 300m以上
乗員 110名
兵装 弾庫容量:38基
レーダー タイプ1007 レーダー
ソナー タイプ2076 統合ソナー
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アスチュート級原子力潜水艦(アスチュートきゅうげんしりょくせんすいかん、Astute class submarine)は、イギリス海軍が運用する攻撃型原子力潜水艦である。

1番艦は2010年に就役した。

概要

本艦級は、当初スウィフトシュア級を代替するために建造されたものであったが、予算超過などで建造が遅れたため[1]、スウィフトシュア級は先に退役してしまった。就役後はトラファルガー級を代替する予定である。

また、建造の遅延だけにとどまらない多くの建造上・性能上の問題が発覚している。2010年8月に就役した1番艦アスチュートについて、2010年12月の英『ガーディアン』紙の報道によれば、通常航行中の浸水、船体の腐食、安全基準を満たさないコンピューター基盤の設置、原子炉への誤った品質の鉛の使用などが発生していたと報じた。報道によれば、浸水は設計と異なる材料で製造された弁の使用に起因しており、原子炉への誤った品質の鉛の使用は原子炉の状態把握に問題を生じさせる可能性があるものであって、建造上の深刻な問題だった[2]

また、計画上アスチュート級の最高速力は32ノットとなっていたが、英国防省はアスチュート級の最高速力を29ノット以上と公表しているのは、実は32ノットを発揮できないためだ、とする内部情報に基づく報道が相次ぎ、2番艦アンブッシュが進水すると、最高速力は秘密事項であるとして国防省は公表を拒否したが、これには計画値未達の隠蔽の疑惑がもたれている[2]

特徴

本級は潜水艦戦闘システム(SMCS,submarine combat system)を発展させたアステュート戦闘管理システム(ACMS,astute combat management system)を搭載してセンサーからの情報を複合的に活用できる。また、各種ミサイル魚雷を有し、対潜任務、対艦任務、対地任務のいずれにも対応できる能力を有するとされる。

本級は動力源となる原子炉としてPWR2型原子炉を搭載している。これは本来ヴァンガード級弾道ミサイル原子力潜水艦向けに開発されたものであり、本級のような攻撃型原子力潜水艦用としては過大なものであるため、船体後部が大きく膨らんだ形状をしており、最高速力未達の問題に関係している可能性がある[2]

戦略ミサイル潜水艦のヴァンガード級の支援任務にも利用される予定。

同艦の制御系統には商用オフザシェルフが多用され、市販品と同じ光ファイバーCPUが使われている。

同型艦

オーディシャスの建設
番号 艦名 起工 進水 就役 現状
S119 アスチュート
HMS Astute
2001年
1月31日
2007年
6月8日[3]
2010年
8月27日
S120 アンブッシュ
HMS Ambush
2003年
10月22日
2011年
1月6日
2013年
3月1日
S121 アートフル
HMS Artful
2005年
3月11日
2014年
5月17日[4]
2016年
3月18日[5]
S122 オーディシャス
HMS Audacious
2009年
3月24日
2017年
4月28日
2020年
4月3日
S123 アンソン
HMS Anson
2011年
10月13日
2021年
4月20日
2022年
8月31日[1]
S124 アガメムノン
HMS Agamemnon
2013年
7月18日
2024年
10月3日
2025年予定 艤装中
S125 アキリーズ
HMS Achilles
2018年
5月
2026年予定[1] 建造中

7番艦の艦名は、当初エジンコート(Agincourt)とされていたが、イギリス海軍は2025年1月26日にアキリーズ(Achilles)へ改名すると発表した[6]。イギリス海軍は改名理由を明示していないが[6]BBCは、1415年のアジャンクールの戦いに由来するエジンコートは、フランスへの不必要な挑発につながることが懸念されたためと報じている[7]

登場作品

ザ・ラストシップ
シーズン2第5話より、架空のアスチュート級原子力潜水艦「アキレス」が登場。主人公たちが乗る架空のアーレイ・バーク級駆逐艦ネイサン・ジェームズ」と戦闘を繰り広げる。

脚注

  1. ^ a b c d e f g h i 「ニュースフラッシュ 英攻撃原潜「アンソン」Anson就役」『世界の艦船』第983集(2022年11月号)海人社 P.127
  2. ^ a b c 小林正男 (2019-05). “世界各国の潜水艦”. 世界の艦船2019年5月号増刊「現代の潜水艦」 (海人社) (通巻900): 174-175. 
  3. ^ New UK nuclear submarine launched”. BBC (2007年6月8日). 2007年6月8日閲覧。
  4. ^ Britain's Astute class submarines finally takes to the water”. Daily Mail (2014年5月18日). 2014年5月26日閲覧。
  5. ^ HMS Artful becomes a commissioned warship”. Royal Navy (2016年3月18日). 2016年5月8日閲覧。
  6. ^ a b 英アスチュート級SSN7番艦の艦名を変更”. 世界の艦船 (2025年2月22日). 2025年3月9日閲覧。
  7. ^ Jonathan Beale (2025年1月30日). “King involved in 'woke' name change of Agincourt submarine”. BBC. 2025年3月9日閲覧。

関連項目

外部リンク

 

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