いなば (列車)
スーパーいなばは、西日本旅客鉄道(JR西日本)および智頭急行が岡山駅 - 鳥取駅間を山陽本線・智頭線・因美線経由で運行する特別急行列車である。いなばとして運行を開始し、2003年から全列車が現名称で運転されている。 なお本項では、岡山県と鳥取県中部を結んでいた優等列車の沿革についても記述する。 概要岡山駅と鳥取駅間は、急行「砂丘」が津山線・因美線経由で運転されていたが、1997年11月29日ダイヤ改正で「砂丘」を廃止し、山陽本線・智頭急行線経由で「いなば」として運行開始[2]。2003年10月1日ダイヤ改正で全列車をキハ187系に置き換え、列車名が「スーパーいなば」に変更された。 走行距離は、津山線・因美線経由の「砂丘」が132.1kmであるのに対し、山陽本線・智頭急行線経由の「いなば」は141.8kmと約10km長くなっているが、最高速度は「いなば」の方が速く、かつ線形の良い山陽本線・智頭急行線を経由するため、所要時間は約30分短縮された[注釈 2]。 走行区間で途中近畿地方である兵庫県(兵庫県内の停車駅は上郡駅と佐用駅)を経由するが、近畿地方を走行する昼行特急列車では唯一近畿圏内の駅において始発や終点を設定していない[注釈 3]。 列車名の由来鳥取県東部の旧国名である因幡国が由来となっていることと、大阪方面から智頭急行智頭線を経由して運転している特急「スーパーはくと」の由来である日本神話の「因幡の白兎」(いなばのしろうさぎ)と関連づけている。 運行概況2024年3月16日現在の運行概況は次の通り[3]。 全列車が岡山駅 - 鳥取駅間で、6往復が運転されており、この区間の所要時間は約1時間50分である[3]。1998年3月14日から2001年3月3日までは、1往復が鳥取駅 - 倉吉駅間で臨時列車として延長運転を行っていた。 運転開始当初から車内販売はなく、飲料の自動販売機も設置されていない。1号・12号は岡山駅で「サンライズ瀬戸」「サンライズ出雲」と接続を行う。 岡山駅 - 上郡駅間で交通系ICカード「ICOCA」が利用できる。 列車番号は区間により異なり、岡山駅 - 上郡駅間は、下りは号数+2071の偶数、上りは号数+2069の奇数、上郡駅 - 鳥取駅間は、下りは号数+70の奇数、上りは号数+70の偶数となり、山陽本線内は列車番号の上下が逆転する。 停車駅岡山駅 - 上郡駅 - 佐用駅 - 大原駅 - 智頭駅 - 郡家駅 - 鳥取駅 使用車両・編成
JR西日本の後藤総合車両所に所属するキハ187系のうち、ATS-Pが搭載されている500番台が充当される。これは智頭急行線がATS-Pを整備しており、搭載されていない車両は同線を自走できないためである。 キハ187系には、ほかに「スーパーまつかぜ」・「スーパーおき」で運用されている0番台・10番台があるが、ATS-Pが搭載されていないため、単独で「スーパーいなば」には運用できない。ただし、中間車としての使用は可能で、多客期に増結車として中間に組み込むことがある。 通常は2両編成でグリーン車は連結されていない。多客期は1両単位で増結されているが、専用車両は8両しかないため、2両編成3本と予備1本で運用され、最大4両編成での運用となる。ただ、過去に6両編成で運用されたことがあり、その時は、0番台・10番台を中間に組み込んでいた。 智頭急行線を通過するため、JR西日本は智頭急行から車両使用料を受け取っている。 担当運転士
担当車掌
臨時列車過去に臨時列車として「ビクトリーいなば」が鳥取大学2次試験の日に岡山駅 - 鳥取大学前駅間で運転されていた[5]。試験に勝つようにという意味を込めた愛称で、受験生向けとして全車指定席とし、試験前日の昼間に鳥取大学前行きが運行され、当日の試験終了後の夕方に岡山行きが運行されていたが、その後の定期列車の増発により臨時列車の運行が困難となったことから、現在は運転されていない。 岡山対鳥取中部優等列車概略砂丘1962年に陰陽連絡列車の1つとして宇野駅 - 鳥取駅間の準急列車として運転を開始した。運転開始当時は、瀬戸内海に面する岡山県と日本海側の山陰地方を結ぶ列車は、伯備線経由の「だいせん」と「しんじ」の鳥取県西部・島根県に至る列車が運転されているさなか、鳥取県東部に至る列車は「ひるぜん」の上り列車が1本運転されているのみであった。宇野駅 - 岡山駅間は「しんじ」と併結されて四国連絡の使命をも果たし、岡山市と鳥取市を結ぶ都市間輸送を担っていた。1966年に急行列車化され、1967年には鳥取駅 - 上井駅(現在の倉吉駅)間が毎日運転の臨時列車として延長運転されるようになった。 1972年に山陽新幹線新大阪駅 - 岡山駅間が開業すると陰陽連絡列車として3往復に増発され、岡山駅 - 鳥取駅・上井駅間で運転されるようになる。 国鉄分割民営化後も「みささ」の立て替えにより最大5往復にまで増発された。全国的な急行列車退潮の中で、岡山駅 - 鳥取駅間が2時間半程度で結び山陽新幹線と連絡する鳥取からの最短ルートだったこともあり、減便を免れてきた。 しかし1994年に高規格の智頭急行智頭線が開業し高速運転を開始すると山陽新幹線へ接続する最短ルートではなくなり、乗り継ぎ需要が激減した。津山線・因美線智頭以南の線形が悪く速度面でこれ以上の向上ができなかったこともあり、1997年に岡山駅 - 鳥取駅間(智頭線経由)で特急「いなば」(現在の「スーパーいなば」)が運転を開始したのにあわせて廃止された[2]。 停車駅 岡山駅 - (金川駅) - 福渡駅 - (弓削駅) - (亀甲駅) - 津山駅 - (東津山駅) - 美作加茂駅 - 智頭駅 - (用瀬駅) - 郡家駅 - 鳥取駅
使用車両 急行形気動車であるキハ58形・キハ65形および半室グリーン車であるキロハ28形を使用し、このうちキロハ28形(100番台)は「砂丘」にのみに連結されていた珍しい車両であった[注釈 4]。また、タブレットを通過中に受け取るためのタブレットキャッチャーを装備していた。 1992年には車両のリニューアルのため、JR四国からキハ185系気動車の購入を計画するが、実現しなかった。そのため、キハ58系気動車のキハ58形4両・キロハ28形4両とキハ65形気動車4両の計12両が専用車両として、0系新幹線からの流用であるリクライニングシートに交換するなどのリニューアル改造を施工された[6]。 ひるぜん津山線初の優等列車として、1960年に岡山駅 - 中国勝山駅・上井駅(現在の倉吉駅)間の準急列車として運転を開始したが、上井駅は岡山発の上り列車のみ運転され、津山駅で「みささ」「みまさか」と増解結が行われていた。1966年には上井行きのみ急行列車化されたが、1968年には上下ともに急行列車化され、上井行きも同年に「伯耆」に統合され、岡山駅 → 月田駅間と中国勝山駅 → 岡山駅間のそれぞれ1本の合計1往復が運転されるのみになり、1973年に快速列車に変更されて廃止された。 岡山対鳥取中部優等列車沿革「ひるぜん」「砂丘」「つやま」は宇野線・津山線・因美線が基準となるため、岡山駅・宇野駅方面=下り、津山駅・中国勝山駅・月田駅・智頭駅・鳥取駅・倉吉駅方面=上りだが、「いなば」「スーパーいなば」は智頭急行智頭線が基準となるため、鳥取駅方面=下り、岡山駅方面=上りとなる。 津山線経由の優等列車
智頭急行線開業以降
脚注注釈出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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