Pentium II
Pentium II(ペンティアム ツー)は、インテルが1997年5月に発売したx86アーキテクチャのマイクロプロセッサ(CPU)である。日本での略称は「ペンツー」 概要Pentium IIという名称が付けられているが、内部構造はPentiumではなくPentium Proがベースである。Pentium Proで初めて採用されたP6マイクロアーキテクチャを引き続き採用したが、L1キャッシュを倍増(L1命令キャッシュ8 KB→16 KB、L1データキャッシュ8 KB→16 KB)し、Pentium Proの弱点であった16ビットコードの処理速度を20%改善し[2]、さらにPentiumでは拡張されたがPentium Proには無かったMMX演算器を追加したものである。 Pentium ProではCPUパッケージ内にCPUコアと2次キャッシュメモリがそれぞれ1枚ずつ封入されていた。この2次キャッシュに用いられていたSRAMは、リフレッシュが不要、且つDRAMのような高速動作が可能であったが、高クロック対応品は主に汎用機やスーパーコンピュータでのキャッシュメモリとしての使用を前提として開発、販売されていたため、消費電力、価格共々非常に高く、また、歩留まりも非常に悪かったため、常識的な価格帯においてPentium Proのクロックを向上させる事は困難とされた。 そこでこのPentium IIからはCPU基板の上にCPUコアチップとコアチップの1/2の速度で動作する2次キャッシュメモリチップが実装され、S.E.C.C. (Single Edge Contact Cartridge) ならびにS.E.C.C.2 (Single Edge Contact Cartridge 2) と呼ばれるファミコンなどに代表される家庭用ビデオゲーム用のROMカートリッジ風のパッケージに封入した。これにより2次キャッシュ性能の大幅低下と引き替えに製造不良率が低下、製造原価、販売価格の低下に寄与し、また後のコアクロック向上による性能向上を容易にした。低価格PC向けとしてPentium IIの外付け2次キャッシュメモリを削減(あるいは削除)した製品がCeleronとして投入され、サーバ用途にはキャッシュメモリを増量したPentium II Xeonが発売された。 第一世代"クラマス" (Klamath)0.35µmプロセスで製造され、バス速度は66 MHzであった。これはP6アークテクチャの本領を発揮するには不十分な速度であり、またこのチップは非常に消費電力が大きく高熱を発した。特に300 MHz動作品は最大44.4 Wの電力を消費し、Xeonを除いてはP6系プロセッサ第一位の消費電力であった。ちなみに、第二位はPentium III 1.13 GHz (S.E.C.C.2 / Coppermine) で41.4 W、第三位がPentium III 600 MHz (Katmai) で41.3 Wである。 なお、この世代のカートリッジは4枚のSRAMチップがCPU基板に実装されており、2枚1組でインターリーブ動作することで2次キャッシュ速度の低下を極力隠蔽する設計となっていた。 第二世代 "デシューツ" (Deschutes)1998年に登場し、0.25µmプロセスで製造された。課題であった発熱は抑えられ、処理速度は大幅に向上した。333 MHz版まではFSB66 MHzのままだったが、350 MHz版以降でFSB速度が100 MHzへ高められた。なおFSB100 MHz版は、初期の一部ロット(およびES版)を除き、CPU倍率が固定されるようになった。 また、この世代以降のP6系コンシューマー向けCPUではPentium Proと同様に2次キャッシュの有効レンジが従来の512 MBから4 GBに拡大されたため、大量にメモリを搭載したワークステーションやPCで512 MB以上の実メモリ空間へアクセスした際にメモリアクセスに巨大なペナルティが発生することが無くなったのも、重要な改良点であった。 モバイル版 第一世代 "トンガ" (Tonga)1998年登場。0.25µmプロセスで製造され、コア電圧を1.6 Vに抑えたもの。L2キャッシュは512 KBで、コアに統合されていないため動作速度はコアクロックの2分の1である。 ミニカートリッジ、モバイルモジュール(MMC1及びMMC2)といった小型の外付けパッケージで提供されるため、交換が容易であった。
モバイル版 第二世代 "ディクソン" (Dixon)1999年に登場。0.25µmプロセスで製造されL2キャッシュはコアに統合された。この為キャッシュ容量は256 KBと半減したものの、動作スピードはCPUコアの等速と2倍になり、結果処理速度が向上している。FSB100 MHz版が出たDeschutesと異なり、最後までFSB66 MHz据え置きとなった。 ミニカートリッジやモバイルモジュールタイプの他、コアの微細化により従来の8分の1サイズのBGAタイプのものが用意された。 なお、L2キャッシュをさらに半分の128 KBとしたものがモバイルCeleron(Dixon-128K)として製造された。
Pentium II Xeon→詳細は「Intel Xeon」を参照
サーバ向けのバリエーションとして新たにXeonブランドが設けられ、その最初の製品群となる「Pentium II Xeon」が登場した。4CPUまでのマルチプロセッサに対応し、L2キャッシュはコアと等速で動作する。CPUスロットとして従来のSlot 1よりも大型化したSlot 2が使われた。
Pentium II ODP→「Pentium Pro § アップグレード」も参照
1998年8月に、0.25μm版のPentium IIのコアを流用したSocket 8向けのオーバードライブプロセッサも登場した。Pentium IIであることからMMX命令にも対応しているほか、Pentium Proよりも16ビットコードの処理能力が改善している。逓倍率は5.0倍に固定で、FSB 66 MHzにおいて333MHz動作。FSB 60 MHzの環境では300 MHzの動作となる。キャッシュ容量はL1が32 KBで、L2が512 KB。Pentium Proと同様にL2キャッシュがCPUコアと等速で動作する。マルチプロセッサは2基までにしか対応しない。[3] 日本では公式には発売されず、直輸入品が細々と出回った程度だった。内部構造はいわゆる「CPU下駄」に近く、CPUコアとL2キャッシュメモリのチップはモバイル版Dixonのように統合されてはおらず分離しており、それでいてL2はCPUコアと同期して等速で動作することから、むしろPentium II Xeonに近いと考えることもできる。[4] のちにサードパーティから発売されたSocket 8用の「CPU下駄」ではIntel 440FXチップセットにしか対応していなかったが、Pentium II ODPであればそのような制限は無かったため、一部のPentium Pro搭載機ではほぼ唯一のアップグレードパスとなった。
脚注
関連項目 |