PAX8PAX8(paired box 8)は、ヒトではPAX8遺伝子にコードされるタンパク質である[5]。 機能PAX8はPAX(paired box)ファミリーの転写因子である。一般的に、このファミリーのメンバーはpaired boxドメイン、オクタペプチドモチーフ、paired型ホメオドメインを持つ。PAXファミリーは胚発生時の組織と器官の形成や、出生後の一部の細胞の正常な機能の維持に重要な役割を果たしている。これらのタンパク質は、重要なDNA領域に結合し、特定の遺伝子の発現制御を補助する[6]。PAX8は甲状腺の濾胞細胞の発生と甲状腺特異的遺伝子の発現に関与している。PAX8は成長、脳の発生、代謝の調節に重要なホルモンの放出を誘導する。また、腎臓の器官形成の最初期の段階やミュラー管、胸腺でも機能する[7]。さらに、PAX8は腎臓の排出系、子宮頸部の上皮細胞、子宮内膜、卵巣、輸卵管、精嚢腺、精巣上体、膵島細胞、リンパ系細胞で発現している[8]。PAX8やその他の転写因子はDNAに結合して甲状腺ホルモン合成を駆動する遺伝子(Tg、TPO、Slc5a5、Tshr)を調節する役割を果たす。 PAX8(とPAX2)は泌尿生殖系の形態形成の重要な調節因子の1つである。これらは胚の最初の腎臓細胞の指定に関与しており、その発生過程を通じて重要な因子であり続ける[9]。 PAX8はTTF-1と相互作用することが示されている[10]。 臨床的意義PAX8は甲状腺の濾胞細胞の形成に必要不可欠であり、PAX8遺伝子の変異は先天性甲状腺機能低下症と関係している[11]。また、PAX遺伝子の調節異常は先天性腎尿路異常(CAKUT)と呼ばれる発生異常を引き起こす[9]。 がんPAX8の変異はさまざまな種類のがんと関係している。 機構PAX8は「マスターレギュレーター転写因子」であると考えられている[8]。マスターレギュレーターとして、甲状腺特異的遺伝子以外の遺伝子の発現調節も行っている可能性もある。TP53やWT1など既知のいくつかのがん抑制遺伝子が星細胞腫細胞におけるPAX8の転写標的として同定されている。甲状腺腫瘍の90%以上は濾胞細胞由来のものである[8]。一部の甲状腺濾胞癌や甲状腺濾胞型乳頭癌にはPAX8-PPARγ融合タンパク質の関与が示唆されている[12]。PAX8-PPARγによる形質転換の機構はあまり理解されていないが、いくつかの可能性が提唱されている[13][14][15]。
一部の全ゲノムシーケンシング研究では、PAX8はBRCA1(発がんと関係)、MAPK経路(甲状腺がんと関係)、CCNB1、CCNB2(細胞周期と関係)も標的としていることが示されている。PAX8は腫瘍細胞の増殖と分化、シグナル伝達、アポトーシス、細胞極性、輸送、運動性、接着に関与していることが示されている[8]。 関係するがんの種類PAX8/PPARγの組換えは典型的濾胞癌の30–40%を占めるのに対し、膨大細胞腫(Hürthle細胞腫瘍)では5%未満である[16]。 PAX8の発現は腎臓の腫瘍組織、ウィルムス腫瘍、卵巣がん、ミュラー管由来癌腫で上昇している。そのため、PAX8の免疫検出は原発性・転移性腎腫瘍の診断に広く利用されている。PAX8(またはPAX2)の発現の再活性化は小児のウィルムス腫瘍、ほぼすべての種類の腎細胞がん、腎性腺腫、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、子宮体がんで報告されている[9]。PAX8の発現は子宮頸がんの発生時にも誘導される[17]。 出典
関連文献
関連項目外部リンク
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