HAT-P-1b は、とかげ座 の方向に453光年の位置にある太陽に似た恒星ADS 16402 B の周りを回る太陽系外惑星 である。ADS 16402 B はADS 16402 と呼ばれる連星 系に属する暗い方の恒星である。現在発見されている惑星の中でもかなり密度が小さい方である。
発見
HAT-P-1bは、惑星のトランジット の観測により発見された。惑星が地球から見て恒星の前面を通過すると、恒星から地球に届く光は減光する。HAT-P-1bは、恒星ADS 16402 Bからの光の0.6%を定期的に遮っていたのが発見され、半径や公転周期 が計算により求められた。HATネット というプロジェクトでアメリカ合衆国 アリゾナ州 にあるホイップル天文台 (英語版 ) の望遠鏡とハワイ州 にあるサブミリ波干渉計 を用いて発見された。その後、ドップラー分光法 で8.2mすばる望遠鏡 と10mケック望遠鏡 で軌道要素が決定され、2006年9月14日に公表された[ 1] [ 6] 。
軌道と質量
HAT-P-1bは、恒星から非常に近い軌道をわずか4.47日で公転しており[ 1] ホットジュピター に分類される。恒星からの距離はわずか827万kmで、他の天体からの摂動 がないとすると潮汐力 で軌道は円に近いと考えられる[ 7] 。軌道離心率 は詳しく分かっていないが、0.067を超えないと計算されている。
惑星の質量を求めるために、N2Kコンソーシアム (英語版 ) により惑星の視線速度 の変化が測定された。恒星のスペクトルのドップラー効果 が観測され、その結果をトランジットの観測で測定された惑星の軌道傾斜角と組み合わせることで、質量は0.53 ± 0.04 M J であることが分かった[ 1] 。
HAT-P-1bのロシター・マクローリン効果 より恒星の赤道面と惑星の軌道面の傾きは3.7 ± 2.1度と計算されている[ 8] 。
特徴
HAT-P-1bは、質量と半径から主に水素 とヘリウム から構成される木星型惑星 だと考えられている。現在の理論では、このような惑星は恒星系の外側で形成され、現在の軌道まで移動してきたと考えられている。
HAT-P-1bの半径は、理論的な予想よりかなり大きい[ 6] 。これは惑星の内側に熱源があることを示唆している。楕円軌道による潮汐熱が可能性の一つとして挙げられ、現在の観測結果からは否定できない[ 9] 。大きな半径を持つHD 209458 b も円に近い軌道である。
別の可能性としては、HAT-P-1bが太陽系 の天王星 のように赤道傾斜角 が大きい可能性がある。この説明の問題点は、惑星がこの状態になることが難しいことであり、結局まだ合理的な説明は得られていない[要出典 ] 。
衛星の可能性
エクソ・イオ であるHAT-P-1b I が存在する可能性が示されている[ 10] 。
脚注
^ a b c d e f Bakos, G. A. et al. (2007). “HAT‐P‐1b: A Large‐Radius, Low‐Density Exoplanet Transiting One Member of a Stellar Binary”. The Astrophysical Journal 656 (1): 552–559. arXiv :astro-ph/0609369。 . Bibcode : 2007ApJ...656..552B . doi :10.1086/509874 . ISSN 0004-637X .
^ a b c d Nikolov, N. et al. (2014). “Hubble Space Telescope hot Jupiter transmission spectral survey: a detection of Na and strong optical absorption in HAT-P-1b”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 437 (1): 46–66. arXiv :1310.0083 . Bibcode : 2014MNRAS.437...46N . doi :10.1093/mnras/stt1859 . ISSN 0035-8711 .
^ a b c Johnson, John Asher et al. (2008). “Measurement of the Spin‐Orbit Angle of Exoplanet HAT‐P‐1b”. The Astrophysical Journal 686 (1): 649–657. arXiv :0806.1734 . Bibcode : 2008ApJ...686..649J . doi :10.1086/591078 . ISSN 0004-637X .
^ a b Turner, Jake D. et al. (2016). “Ground-based near-UV observations of 15 transiting exoplanets: constraints on their atmospheres and no evidence for asymmetrical transits”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 459 (1): 789–819. arXiv :1603.02587 . Bibcode : 2016MNRAS.459..789T . doi :10.1093/mnras/stw574 . ISSN 0035-8711 .
^ a b c d e “HAT-P-1 b ”. NASA Exoplanet Archive . NASA Exoplanet Science Institute. 2020年9月27日 閲覧。
^ a b Aguilar, David A.; Pulliam, Christine (14 September 2006). "Strange New Planet Baffles Astronomers" (Press release). Cambridge, Massachusetts: Harvard–Smithsonian Center for Astrophysics . 2020年9月27日閲覧 。
^ greg (2006年9月15日). “A HAT trick ”. 2020年9月27日 閲覧。
^ Albrecht, Simon et al. (2012). “Obliquities of Hot Jupiter Host Stars: Evidence for Tidal Interactions and Primordial Misalignments”. The Astrophysical Journal 757 (1): 18. Bibcode : 2012ApJ...757...18A . doi :10.1088/0004-637X/757/1/18 . ISSN 0004-637X .
^ Jackson, Brian; Greenberg, Richard; Barnes, Rory (2008). “Tidal Heating of Extrasolar Planets”. The Astrophysical Journal 681 (2): 1631–1638. Bibcode : 2008ApJ...681.1631J . doi :10.1086/587641 . ISSN 0004-637X .
^ “Sodium and Potassium Signatures of Volcanic Satellites Orbiting Close-in Gas Giant Exoplanets ”. THE ASTROPHYSICAL JOURNAL (2019年11月12日). 2020年12月11日 閲覧。
外部リンク
座標 : 22h 57m 46.83s , +38° 40′ 29.8″