Bi b Te X のロゴ
Bi b Te X [ 1] とは参考文献 の一覧の整形に使われるツールである。
概要
Bi b Te X はオーレン・パタシュニク (Oren Patashnik) とレスリー・ランポート (Leslie Lamport) が1985年 に開発した。Bi b Te X では文献書誌情報とその情報の表記方法とを分離して記述できるため、文献の参照形式を一貫した形式で書くことが可能である。コンテンツと表記・スタイルの分離 という同様の方式は、La Te X や XHTML 、HTML と CSS といったマークアップ言語 にも見てとることができる。
なお、Bi b Te X を基にして日本語処理に対応させたものが J Bi b Te X である。そのため、日本語文字を含む .bib ファイルを処理する場合には、Bi b Te X ではなく J Bi b Te X を使用する必要がある。
書誌情報ファイル
Bi b Te X は参考文献の一覧用に、出力形式とは独立したテキストベースのファイル形式を用いる。各書誌情報は論文・書籍・学位論文といった書誌項目の種別を持つ。Bi b Te X 書誌情報ファイルは通常 「.bib 」 の拡張子を持つ。
書誌情報には以下のような標準的なデータ項目がある。
データ項目
説明
address
出版社の住所。出版地として通常は都市名が記載されるが、あまり知られていない出版社等については正式な住所が記載される。
annote
注釈附きの書誌スタイル用の注釈(あまり使われない)。
author
著者名。著者が複数である場合には、「and
」 でつなげる。
booktitle
(書籍中の一部のみを参照している場合に)書籍タイトル。
crossref
相互参照用のキー。
chapter
章番号。
edition
書籍の版(「第一版」・「改訂版」などの形式で表記される)。
editor
編著者名。
eprint
電子出版時の指定。プレプリントもしくはテクニカルレポート。
howpublished
出版形態(出版形態が特殊な場合)。
institution
出版社とは別に出版に関わった機関。
journal
雑誌名。
key
エントリのアルファベット順での並びを指定する際に使われる隠れ項目。引用参照や相互参照時に使われるキーとは異なる。
month
出版月。出版されていない場合は制作月。
note
注記。
number
雑誌・テクニカルレポートの号数。大半の雑誌には 「volume 」(巻数)が付与されているが、「number 」(号数)は付与されていない場合がある。
organization
会議の主催者。
pages
ページ数。
publisher
出版社名。
school
学位論文の場合に、学位の提出大学名。
series
書籍のシリーズ名。
title
タイトル。
type
報告種別。(例:「research note 」)
url
WWW 上の URI (URL を含む)。
volume
雑誌または書籍の巻数。
year
出版年(出版されていない場合は制作年)。
さらに各書誌項目には、その書誌を引用参照もしくは相互参照する際に用いられるキーが付与される。このキーは各書誌項目の先頭で与えられ、データ項目の一部とはならない。
エントリ種別
書誌情報ファイルに含まれる各エントリは、いくつかの種類に分けられる。以下の種類は全て Bi b Te X スタイルが解釈する。
article
雑誌に掲載された論文。 必須項目:author
, title
, journal
, year
オプション項目:volume
, number
, pages
, month
, note
, key
book
出版社が刊行した書籍。 必須項目:author
/editor
, title
, publisher
, year
オプション項目:volume
, series
, address
, edition
, month
, note
, key
booklet
出版社や機関名が明示的されていない印刷物や製本済の作品。 必須項目:title
オプション項目:author
, howpublished
, address
, month
, year
, note
, key
conference
inproceedings
と同一。Scribe との互換性のために残されている。 必須項目:author
, title
, booktitle
, year
オプション項目:editor
, pages
, organization
, publisher
, address
, month
, note
, key
inbook
書籍中の一部。一章もしくは一節など。範囲ページの指定による。 必須項目:author
/editor
, title
, chapter
/pages
, publisher
, year
オプション項目:volume
, series
, address
, edition
, month
, note
, key
incollection
それ自体がタイトルを持っている書籍中の一部。 必須項目:author
, title
, booktitle
, year
オプション項目:editor
, pages
, organization
, publisher
, address
, month
, note
, key
inproceedings
会議論文集中の一論文。 必須項目:author
, title
, booktitle
, year
オプション項目:editor
, pages
, organization
, publisher
, address
, month
, note
, key
manual
マニュアル。技術文書。 必須項目:title
オプション項目:author
, organization
, address
, edition
, month
, year
, note
, key
mastersthesis
修士 学位論文。 必須項目:author
, title
, school
, year
オプション項目:address
, month
, note
, key
misc
その他該当種別が無いもの。 必須項目:無し オプション項目:author
, title
, howpublished
, month
, year
, note
, key
phdthesis
博士 学位論文。 必須項目:author
, title
, school
, year
オプション項目:address
, month
, note
, key
proceedings
会議論文集。 必須項目:title
, year
オプション項目:editor
, publisher
, organization
, address
, month
, note
, key
techreport
大学、研究機関などから出版された報告書。通常シリーズ化され、番号付けされる。 必須項目:author
, title
, institution
, year
オプション項目:type
, number
, address
, month
, note
, key
unpublished
著者とタイトルがある文書であるが、公式に刊行されていないもの。 必須項目:author
, title
, note
オプション項目:month
, year
, key
書誌スタイルファイル
La Te X 文書中では \bibliographystyle
コマンドにより書誌スタイルを指定する必要がある。一般的な指定値として、「\bibliographystyle{plain}
」や 「\bibliographystyle{abbrv}
」 といった指定がある。
Bi b Te X の書誌スタイルファイルは 「.bst 」という拡張子を持ち、書誌項目をどのように整形するかを記述するのに、単純なスタックベースのプログラミング言語を用いる。Bi b Te X プログラム bibtex
はこのスタイルファイルに従って書誌事項を整形し、Te X または La Te X の整形コマンドに変換する。なお、HTML を出力するようなスタイルファイルも存在する。固有の Bi b Te X スタイルファイルは latex makebst
コマンドにより生成することができる。
Bi b Te X コマンドの動作
参考文献一覧の情報を出力するには Bi b Te X ツールを動作させる必要がある。
まず latex
コマンドを起動し、元の論文ファイルを整形し、参照情報を取り出す。この時点では、La Te X ツールからは参考文献情報が未定義であるとの警告メッセージが出力される。
Bi b Te X ツールを動作させる。
再度 La Te X ツールを動作させる。この時点でも再び参考文献情報が未定義であるとの警告メッセージが出力される。
3回目の La Te X ツールの動作。参考文献情報が整形され、出力される。
参照情報を加えるもしくは削除するたびに、上記手順を繰り返す。
例
.bib
ファイルに以下のような数学ハンドブックのエントリが含まれているとする。
@Book { abramowitz+stegun ,
author = "Milton Abramowitz and Irene A. Stegun" ,
title = "Handbook of Mathematical Functions with
Formulas, Graphs, and Mathematical Tables" ,
publisher = "Dover" ,
year = 1964 ,
address = "New York" ,
edition = "ninth Dover printing, tenth GPO printing"
}
本文中でこのハンドブックを参照する場合に、書誌情報は参照スタイル(APA 、MLA、Chicago など)に応じて様々な形式で表記される。La Te X は \cite
コマンドおよび書誌参照スタイルの指定に従って、これを扱う。La Te X 文書中に \cite{abramowitz+stegun}
というコマンドが現れた場合に、bibtex
プログラムはこれを参考文献リストに追加し、La Te X の整形用コードを出力する。La Te X 文書を組版した結果としては、以下のような見栄えになることが多い。
Abramowitz, Milton and Irene A. Stegun (1964), Handbook of mathematical functions with formulas, graphs, and mathematical tables. New York: Dover.
スタイルファイルに応じて Bi b Te X は著者名の姓名の順を入れ替えたり、タイトルの大文字・小文字を変えたり、.bib ファイルにある情報のうちいくつかの項目については省略したり、テキストの一部を斜体に変更したり、約物 を加えたりなどの整形を行う。参考文献一覧の情報全体を同一のスタイルファイルで整形することによって、最小限の労力で全体の出力の一貫性を保ち、一定の整形結果を得ることができる。
著者名の整形
「von」、「van」、「der」のような姓に付与される接頭辞 は自動的に処理され、ミドルネームと区別するために小文字で整形される。複数語からなる姓を名・ミドルネームと区別する場合には、姓を先に書き、カンマを間に加えてから、名・ミドルネームを書く。「Jr.」、「Sr.」や 「III」などの、名に付与される接尾辞 は通常2つのカンマを間に加えることで自動的に処理できる。
@Book { hicks2001 ,
author = "von Hicks, III, Michael" ,
title = "Design of a Carbon Fiber Composite Grid Structure for the GLAST
Spacecraft Using a Novel Manufacturing Technique" ,
publisher = "Stanford Press" ,
year = 2001 ,
address = "Palo Alto" ,
edition = "1st," ,
isbn = "0-69-697269-4"
}
姓接頭辞を認識させるのにカンマを使わない場合、代わりに波括弧を用いる書き方(「{Hicks III}
」)もある。
相互参照
Bi b Te X では crossref
フィールドを用いて、他の書誌情報を参照することができる。以下の例では、文献「author:06
」 から文献 「conference:06
」を参照している。
@INPROCEEDINGS { author:06 ,
title = {Some publication title} ,
author = {First Author and Second Author} ,
crossref = {conference:06} ,
pages = {330--331} ,
}
@PROCEEDINGS { conference:06 ,
editor = {First Editor and Second Editor} ,
booktitle = {Proceedings of the Xth Conference on XYZ} ,
year = {2006} ,
month = {October} ,
}
上記入力を La Te X にかけると、以下のような出力が得られる。
Author, First and Author, Second (October 2006), Some publication title, in: Proceedings of the Xth Conference on XYZ, pp. 330–331.
用途別スタイルファイル
学術雑誌毎に多くの異なるスタイルファイルがいわば「お手製」で作られてきた。引用スタイルをカスタマイズする必要がある場合は、natbib
や jurabib
といった La Te X
マクロパッケージを使うか、makebst
といったツールを使える。
フリーソフトウェア
大半の参考文献管理ソフトウェア が Bi b Te X 形式の入出力に対応している。以下のパッケージはBi b Te X を内部形式として用いている。
書誌情報データベース
関連項目
脚注
^ 本来はこのように大文字を並べて表記すべきであるが、組版処理による表記ができないプレーンテキスト や電子メール などでは、大文字と小文字を組み合わせて「BibTeX」と表記する。通常 La Te X 文書とともに用いられる。
^ http://bib-it.sourceforge.net/
^ amazon.ca、amazon.co.jp、amazon.co.uk、amazon.com、amazon.de、amazon.fr
外部リンク
処理系 マクロパッケージ
ディストリビューション エディタ ユーティリティ Te X 関連 コミュニティ 人物