4rd4rd(IPv4 Residual Deployment)は、インターネットサービスプロバイダ(ISP)が顧客にIPv4接続環境を提供したままIPv6接続環境を整備するためのIPv6移行技術の1つ。プロトコルや実施例はRFC 7600 で規定されている。 特徴4rdの特徴は以下3点挙げられる。
同様の特徴を持つIETF策定の技術(MAP-EやMAP-T)と比較した場合、4rdは以下を同時に実現できる。
MAP-Eは前者のみ、MAP-Tは後者のみを実現できる。 ISPがIPv6ネットワークを介してIPv4サービスを提供するにあたり、全顧客にカスタマ構内設備(CPE)を提供するならば、ISPはMAP-E、MAP-T、4rdのいずれを選択することもできる。ただしMAP-EとMAP-Tが標準化過程にあるのに対し、4rdは少なくとも現状では「実験」段階にある点に留意が必要である。 原理フラグメント透過性とパケット検査を両立させる鍵は、IPv6ネットワークへの出入りにあたり「可逆的パケット変換」を利用することである[1]。これが実現可能なのは、IPv6パケットのヘッダが大きく、必要とあればFragmentヘッダを使うこともできるため、IPv4ヘッダの有用な情報を全て埋め込むことができるためである。なお4rdはIPv4のIP層オプションには対応していないが、現状ではセキュリティ上の問題からIP層オプションがルータで除去されることが多く[2]、システムがIP層オプションを利用しないことが多いため、深刻な問題にはなりにくい。 4rdの仕様がMAP-EとMAP-Tより進んでいるもう1つの点は、断片化したIPv4データグラムの取り扱いである。MAP-EとMAP-Tの仕様では、ネットワーク入り口でデータグラムを再構成してから転送するという挙動のみが記述されている[3][4] 。ユーザが感知する性能を向上させ、ネットワーク入り口での処理量を減らし、攻撃機会を減らすために、4rdの仕様では断片化したデータグラムを再構成せずそのまま転送する挙動を含めている[5]。 歴史4rdの初めの仕様では、現行のRFC 7600の仕様とは異なり、IPv4をIPv6パケットへカプセル化していた。これはIPv6ネットワークにIPv4通信を完全なまま通過させるための当時唯一知られていた方法である。これが、ステートレスなアドレスマッピングと、メッシュトポロジーと、A+Pモデルとを組み合わた初の提案であった。[6][7] この3つ組によるアプローチでは、dIVIという仕様が続いて提案された[8]。これはカプセル化の代わりに、IPv4からIPv6とその逆をステートレスIP/ICMP変換(SIIT; RFC 2765)で行うものである。カプセル化と違って、IPv6のパケット検査を変換されたIPv4パケットに対して適用できる利点があったが、SIITの仕様上、IPv4フラグメントとの互換性がなかった。 この2つの提案のどちらか一方だけを標準として承認することはできないと思われた。そこで2つの方針が示された。
長い議論の末、Softwireワーキンググループは2012年8月にMAP-Eのみを標準化過程とし、4rdとMAP-Tは実験として検討を続けることを決定した[11]。しかし2014年12月に、Softwireワーキンググループは決定を覆し、MAP-Eと並行してMAP-Tも標準化過程とすることとした。したがって4rdのみが実験カテゴリに残ることになった。 実用例フランスのISPであるFreeは2015年12月より人口密度が低い地域でのFTTH実験のために4rdを実用している。[12] 参考文献
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