黒色矮星[1](こくしょくわいせい、英語: black dwarf[1])とは、仮説上の天体の一種で、白色矮星が冷えて電磁波による観測が不可能となった天体である。質量が太陽の8倍程度以下の恒星が最終的に行き着く先として想定されている。白色矮星が冷えて黒色矮星になるために必要な時間は、宇宙年齢よりも長いと考えられており[2]、現在の宇宙に黒色矮星は存在しないと考えられている。また同様の理由で、最も低温な白色矮星の温度が、宇宙の年齢を推定する際の基準のひとつとされる。[3]。
太陽質量の8倍以下の恒星は、何段階かの変遷を経て白色矮星に至ると考えられている。白色矮星は放射によって冷却し、次第に温度は低下して放射量も減少してゆく。そのため低温な白色矮星ほど年老いた天体である。2012年にはアリゾナ州のMDM天文台(英語版)の 2.4 m 望遠鏡を用いて、表面温度が 3900 K (スペクトル分類での M0 の温度に相当する) を下回るほどに冷却した様々な白色矮星が発見された[8]。これらの白色矮星の年齢は110億から120億歳だと推定されている[8]。
天体の遠い将来の進化は、ダークマターの性質や陽子崩壊の可能性とその割合など、あまり理解が進んでいない分野の物理的な問題に依存するため、白色矮星が黒色矮星の状態になるために、一体どれほどの時間が必要かは詳しくは分かっていない[9]。ジョン・D・バロウとフランク・ティプラーは、白色矮星が 5 K にまで冷えるのには約 1015 年が必要だと推定している[10]。しかし、もしWIMP (冷たい暗黒物質の候補である仮説上の重い粒子) が存在した場合には、これらの粒子との相互作用によって天体が温められ、5 K を下回るには約 1025 年の時間を要すると考えられている[9]。また、もし陽子が安定な粒子ではない場合には、白色矮星が陽子崩壊によって解放されるエネルギーによっても温められ得る。Fred C. Adams と Gregory Laughlin による推定では、仮説上の陽子の寿命を 1037 年とすると、太陽と同じ質量の年老いた白色矮星の有効温度はおよそ 0.06 K とされている[9]。これは低温ではあるが、1037 年後の宇宙マイクロ波背景放射の温度よりも高いと考えられる[9]。
^R. F. Jameson; M. R. Sherrington; A. R. Giles (1983-10). “A failed search for black dwarfs as companions to nearby stars”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society205: 39–41. Bibcode: 1983MNRAS.205P..39J. doi:10.1093/mnras/205.1.39P.
^Charles Alcock; Robyn A. Allsman; David Alves; Tim S. Axelrod; Andrew C. Becker; David Bennett; Kem H. Cook; Andrew J. Drake et al. (1999). “Baryonic Dark Matter: The Results from Microlensing Surveys”. In the Third Stromlo Symposium: The Galactic Halo165: 362. Bibcode: 1999ASPC..165..362A.