高次脳機能障害

定義

学術的に定義される高次脳機能(こうじのうきのう)とは、言語、行為、認知、記憶、判断など、主にの連合野皮質によって営まれている機能である。[1]一方、厚生労働省による「高次脳機能障害支援モデル事業」による行政上の定義では記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害を高次脳機能障害として定義している。[2]学術的な定義の上では脳血管障害や変性疾患、頭部外傷による様々な障害を指す。[3]本項では特に断りなく「高次脳機能障害」という場合、学術的な高次脳機能障害を指す。

概要

損傷される脳の部位によって、失行、失認、失語、記憶障害、注意障害などの病態を現す。

障害部位

・左前頭葉ブローカ野の損傷による運動性失語:ブローカ失語

・左側頭葉ウェルニッケ野の損傷による感覚性失語:ウェルニッケ失語

・右側頭葉:着衣失行

後頭葉:物体失認

治療

治療・支援上の留意点

高次脳機能障害の治療や患者支援を行う際には、患者の持つ認知機能への個別の配慮が必須である[4]。また、以下の留意点が挙げられる[4]

  • 認知機能障害のアセスメントから得意・不得意を明らかにすること
  • 注意や集中の継続が難しい場合、セッション中の休憩を確保すること、1セッションの時間を短く設定してセッションの頻度を増やすこと
  • コミュニケーションに関しては、明確な質問を行うこと、セッション内容を視覚的にも示し理解を促すこと
  • 記憶に関しては、ノートやファイルなどを用意し重要なポイントをそこに落とし込んでいくこと、ポイントを繰り返し伝えること、治療過程に家族や介護者を巻き込むこと
  • 遂行機能に関しては、情報をゆっくりと提示し応答時間を多くとること、より具体的な事象に焦点を当てていくこと

引用

  1. ^ 『病気がみえる vol.7 脳・神経』大日本印刷株式会社、2011年3月2日発行、138-143頁。ISBN 978-4-89632-358-0 
  2. ^ 厚生労働省 (2002年4月10日). “高次脳機能障害支援モデル事業 中間報告書について”. 2015年3月14日閲覧。
  3. ^ 『病気がみえる vol.7 脳・神経』大日本印刷株式会社、2011年3月2日発行、138-143頁。ISBN 978-4-89632-358-0 
  4. ^ a b 日本認知・行動療法学会 編『認知行動療法事典』丸善出版、2019年、376-377頁。 

参考文献

  • 山口研一郎『高次脳機能障害-医療現場から社会をみる』岩波書店、2017年。ISBN 978-4-00-022958-6 

関連人物

  • 柳浩太郎 - 俳優。2003年12月に帰宅途中での交通事故で頭部を強打して発症。
  • 常石勝義 - 元JRA騎手。2004年8月のレース中の落馬事故により発症。
  • 石山繁 - 元JRA騎手。2007年2月のレース中の落馬事故により発症。
  • GOMA - 2009年11月に首都高での事故に遭った時に発症。
  • 石井雅史 - 元競輪選手。練習中の事故により発症。その後、北京パラリンピック1kTTで優勝。
  • ケンタロウ - 料理研究家。2012年2月に首都高でオートバイ事故を起こし6メートル下に転落して発症。

関連項目

外部リンク

 

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