鉱質コルチコイド受容体鉱質コルチコイド受容体(Mineralocorticoid Receptor; MR)またはアルドステロン受容体(Aldosterone receptor)あるいはNR3C2(nuclear receptor subfamily 3, group C, member 2)は、ヒトでは染色体4q31.1-31.2に位置するNR3C2 遺伝子によってコードされるタンパク質である[5]。 MRは、鉱質コルチコイドと糖質コルチコイドに等しく親和性を持つ受容体である。MRは核内受容体ファミリーに属し、リガンドが細胞内に拡散し、受容体と相互作用することで、核内での特定の遺伝子発現に影響を与えるシグナル伝達が行われる。ある組織や臓器が糖質コルチコイドよりも鉱質コルチコイドに選択的に反応するのは、鉱質コルチコイドに反応する細胞がコルチコステロイド11-β-デヒドロゲナーゼアイソザイム2を発現しているからである。 機能MRは、腎臓、大腸、心臓、中枢神経系(海馬)、褐色脂肪組織、汗腺など、多くの組織で発現している。上皮組織では、MRの活性化により、イオンと水の輸送を制御するタンパク質(主に上皮性ナトリウムチャネル(ENaC)、Na+/K+ポンプ、血清糖質コルチコイド誘導性キナーゼ(SGK1))が発現し、ナトリウムが再吸収され、その結果、細胞外容積が増加し、血圧が上昇し、体内の塩分濃度を正常に保つためにカリウムが排泄される。 この受容体は、アルドステロンやその前駆体であるデオキシコルチコステロン等の鉱質コルチコイド、およびコルチゾール等の糖質コルチコイドによって活性化される。遺伝子操作されていない動物では、コルチゾールを不活性なコルチゾンに変換するコルチコステロイド11-β-デヒドロゲナーゼアイソザイム2(別名:11β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ2、11β-HSD2)という酵素が共在する事で、鉱質コルチコイド受容体は糖質コルチコイドから「保護」されている[6]。 鉱質コルチコイド受容体は、そのリガンドであるアルドステロンの結合により活性化されると、細胞核に移動し、ホモ二量体化して、遺伝子のプロモーターに存在するホルモン応答要素に結合する。その結果、転写機構が複雑に絡み合い、活性化された遺伝子のDNA配列がmRNAに転写される事になる[7]。 NR3C2遺伝子の活性化変異(S810L)は、鉱質コルチコイド受容体の構成的な活性を齎し、妊娠によって悪化する重度の早期発症型高血圧を引き起こす。S810Lの変異を持つ事が知られている家族では、この変異を持つ3人が50歳前に慢性心不全で死亡した[8]。更に、この活性化されたMRは、プロゲステロンなどの内因性ホルモンや、利尿薬であるスピロノラクトンやエプレレノンなど、従来は拮抗薬であったリガンドにも積極的に反応する事が判明している[8]。 リガンドアルドステロン、11-デオキシコルチコステロン、コルチゾールは、内因性のMR作動薬である。フルドロコルチゾンはMRの合成作動薬であり、臨床的に使用されている。プロゲステロンはMRの強力な内因性阻害薬である[9]。MRの合成阻害薬には、ステロイド化合物のスピロノラクトン、カンレノン、エプレレノン、ドロスピレノンや、非ステロイド化合物のアパラレノン、エサキセレノン、フィネレノン等がある。 相互作用鉱質コルチコイド受容体は、以下と相互作用する。 関連項目出典
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