重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律
重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律(じゅうようしせつしゅうへんおよびこっきょうりとうとうにおけるとちとうのりようじょうきょうのちょうさおよびりようのきせいとうにかんするほうりつ、令和3年法律第84号)は、国家安全保障上支障となるおそれのある重要な土地等の取引やその周辺における利用行為の規制等を可能とする日本の法律である(第1条)。 通称重要土地利用規制法[1]、土地規制法または重要土地等調査法[2]。2021年(令和3年)6月23日公布、2022年(令和4年)9月20日に施行となった[3][4]。 構成
背景と沿革2010年代に入り、安全保障上重要な施設(海上自衛隊対馬防備隊や航空自衛隊千歳基地など)の周辺の土地が中国や韓国などの外国資本によって取得されていることが相次いで報じられ、安全保障上の影響を懸念する主張が高まっていた。本法は、このような状況を前提として、外国資本による不透明な土地取得を防ぐことを目的としたものであるとされた。 →「外国人土地法」も参照
ただし、このような立法事実が現実に存在するか否かについては疑問視する意見もある。すなわち、地方公共団体から安全保障の観点から必要な法整備を求める意見書が提出されたというが、そのような意見書を提出した地方公共団体は極めて少数であり、千歳基地が所在する苫小牧市や対馬防備隊が所在する対馬市からも提出されていないこと、防衛省が行った調査でもこれまで具体的な防衛上の支障が生じたことはなかったと判明したこと、千歳基地や対馬の事例もリゾート開発等の目的であったことが明らかになったことなどから、政府が安全保障上のリスクを正確に把握していない疑いがあるというのである。国会審議の過程では、これらの問題点について問われた領土問題担当大臣の小此木八郎(当時)は、「それをしっかりと調査をするということでございます」などと答弁している[1]。 本法案と日本維新の会の浅田均らが提出した対案である「国家安全保障上重要な土地等に係る取引等の規制等に関する法律案」[5]が国会審議にかけられた後、本法が2021年6月16日、参院本会議において自民・公明両党に加え、日本維新の会と国民民主党などの賛成多数で可決・成立した。なお、立憲民主党や共産党は「私権の制限につながる内容が盛り込まれるなど、問題点が多い」として、反対した[6][7]。 内容本法は主として以下のような施策を内容としている[7]。
規制対象区域国会審議においては、規制対象区域としては、国境離島は484カ所、防衛関係施設は500カ所以上が想定されていると説明されている。ただし、特別注視区域については、経済活動への影響が大きくなる市街地は当面対象とされない見込みである[7]。 実際の指定土地等利用状況審議会の意見を聴取の上、2022年12月27日に第1回となる指定が内閣府告示により行われ、対馬や隠岐、五島列島等の離島や自衛隊基地・駐屯地周辺など計58カ所が注視区域に、そのうち35カ所が特別注視区域に指定された。[8] 2023年7月12日には第2回となる指定が内閣府告示により行われ、小笠原諸島や奄美諸島、先島諸島の一部や佐渡島をはじめとする離島、自衛隊基地・駐屯地周辺など計161カ所が注視区域に、そのうち40カ所が特別注視区域に指定された。 沖縄県の指定は今回が初であり、指定数は39カ所である(うち、特別注視区域指定は7カ所)[9]。在日米軍施設は含まれなかった[10]。 2023年12月11日には第3回となる指定が内閣府告示により行われ、新千歳空港や福岡空港をはじめとする空港や玄海原発、伊方原発、自衛隊施設(この中には、東京都千代田区及び新宿区にまたがる防衛省市ヶ谷庁舎も含まれる。)、在日米軍施設など計180カ所が注視区域に、そのうち46カ所が特別注視区域に指定された。 在日米軍施設の注視区域指定は今回が初であり、指定数は6カ所である[11][12]。 2024年4月12日には第4回となる指定が内閣府告示により行われ、柏崎刈羽原子力発電所をはじめとする原子力発電所、陸上自衛隊富士学校等の自衛隊施設、普天間飛行場、キャンプ・ハンセン等の在沖縄在日米軍施設など計184ヵ所が注視区域に、そのうち34ヵ所が特別注視区域に指定された[13]。 在沖縄在日米軍施設の注視区域・特別注視区域への指定は今回が初である。また、今回の指定をもって、予定されていた計583カ所の指定が一旦完了した[14]。 批判本法に対しては、基本的人権を過剰に制限するおそれなどが指摘され、これを批判する主張がある[1][2][7]。具体的には次のようなものがある。
これに対して、加藤勝信官房長官(当時)は、2021年6月16日、記者会見において、恣意性の徹底排除や説明責任を果たすことなどを表明した[7]。 脚注出典
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