二つの流体領域があり、それらの界面に表面張力が働くとする。界面は時間平均すると水平面をなす。二流体の密度は異なっており、下側と上側の密度をそれぞれ および とする。流体は非粘性(英語版)かつ非圧縮性であり、流れは渦なしだと仮定する。このような流れはポテンシャル流であり、下側と上側の流速はそれぞれ および で与えられる。 と は速度ポテンシャル である。
エネルギーには重力のポテンシャル 、表面張力のポテンシャル 、運動エネルギー の三つの寄与がある。重力の項 はもっとも単純であり、重力のポテンシャル密度 () を基準点から界面の鉛直座標 まで積分することで[6]
を得る。ただし界面の平均高さを とした。
変位 によって界面の面積が増えると、表面張力エネルギーはそれに比例して増加する[7]。
上の最初の等式ではモンジュによる表現を用いた面積の計算が行われている。第二の等式は の導関数が小さいとき(界面があまり波打っていないとき)に成立する。
最後に流体の運動エネルギーからの寄与は以下で与えられる[8]。
ここで流体が非圧縮性であり、流れが渦なしであること(多くの場合、妥当な仮定である)を用いる。その結果 と はいずれもラプラス方程式
- ,
に従う[9]。
これらを解くために適切な境界条件を与える。すなわち、界面から十分に遠方では と はいずれも消失しなければならない(ここで想定されている「深水」の状況が当てはまる)。
グリーンの恒等式を用い、さらに界面の鉛直方向変位が小さい(そのため までの積分を までで近似することができる)と仮定すると、運動エネルギーは以下のように表せる[8]。
分散関係を得るには、界面を 方向に伝播する正弦波
を考えれば十分である[7]。振幅を 、波の位相を とした。速度ポテンシャルを界面の運動と結び付ける運動学的境界条件として、界面において両方の流体の鉛直速度成分は波の運動と一致しなければならない[7]。
- ()
各領域の速度ポテンシャルを求めるにあたって変数分離を試みると、それぞれのポテンシャル場は以下のように書かれる[7]。
以上より、波のエネルギーに対する三つの寄与を水平面内で 方向に一波長分、 方向に単位幅にわたって積分すると以下のようになる[7][10]。
分散関係は以下のラグランジアン から求められる (ここで ) [11]。
線形波動理論のもとで正弦波の平均ラグランジアン(英語版)は常に の形を取る。したがって、唯一の自由なパラメータである についての変分条件から分散関係 が導かれる[11]。ここで は上式の角かっこ内にあたり、分散関係は
となって前掲式と一致する。
結果として、水平面の単位面積当たり波の平均エネルギー は
である。また、線形波で一般的なようにポテンシャルと運動エネルギーは等しい(エネルギー等分配の法則は保たれている)[12]。
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