この項目では、動物の分類群について説明しています。その他の脱皮する動物については「脱皮 」をご覧ください。
脱皮動物 (だっぴどうぶつ、Ecdysozoa )は螺旋卵割動物 と共に前口動物 を二分する動物 の大分類群で、節足動物 、線形動物 などの動物門を含む。
Aguinaldoらにより1997年に設定された[ 1] が、これは主として18SリボソームRNA 遺伝子 の系統樹 に基づいている。
形態的にはクチクラ 由来の外骨格 を持ち脱皮 を行うという共通点を持っており、古く形態学的特徴から設定された Ecdysozoa(Perrier 1897、および Seurat 1920)にほぼ相当する。
最も重要な共通点は体表の上皮を覆う3重のクチクラで、これが成長 にともなう定期的な脱皮によって新生する。運動のための繊毛 は持たず、精子 はアメーバ 状で、胚 は一般の前口動物の特徴とされる螺旋卵割 を行わない。そのほかにもいくつかの共通の性質が見られる。
脱皮動物は以下の動物門から構成される。
Echinoderes hwiizaa (
動吻動物 )
Paragordius tricuspidatus (
類線形動物 )
腹毛動物 門などもこれに含まれる可能性があるが、共通の性質を欠いており、別の群とされている。
節足動物・有爪動物・緩歩動物(あわせて汎節足動物 となる)は体が体節 から構成されている点から、かつては環形動物 に近いと考えられていた(あわせて体節動物 と呼ばれた)。これらは前口動物であり、螺旋卵割や裂体腔、はしご形神経系 などを共有するまとまった群であると考えられていたが、現在ではそれらの共通点である体節制 は別個の系統でそれぞれ独立に獲得されたと考えられている。
内部系統
脱皮動物の内部系統構成については、節足動物 ・有爪動物 ・緩歩動物 からなる汎節足動物 (Panarthropoda )、動吻動物 ・鰓曳動物 ・胴甲動物 からなる有棘動物 (Scalidophora )、および線形動物 と類線形動物 からなる糸形動物 (Nematoida )という3群で区分する体系があり[ 2] 、更に有棘動物と糸形動物を環神経動物 (Cycloneuralia )としてまとめる見解もある。なお、その一部の単系統性は分子系統学 に疑問視されており、例えば胴甲動物の位置は不安定で[ 2] 、糸形動物 や汎節足動物 と密接に関係しているという結果もある。[ 3] 。
Telford et al., 2008に基づいた脱皮動物の内部系統は次の通り[ 2] 。
古生物学 的見解については、Markuelia は基盤的な有棘動物と思われ[ 4] 、葉足動物 は汎節足動物で、そこに含まれる動物門の初期系統に至る側系統群 であると考えられる[ 5] 。
出典
^ Aguinaldo, A. M. A.; J. M. Turbeville, L. S. Linford, M. C. Rivera, J. R. Garey, R. A. Raff, & J. A. Lake (1997). “Evidence for a clade of nematodes, arthropods and other moulting animals”. Nature 387 : 489–493. doi :10.1038/387489a0 .
^ a b c Telford, Maximilian J; Bourlat, Sarah J; Economou, Andrew; Papillon, Daniel; Rota-Stabelli, Omar (2008-04-27). “The evolution of the Ecdysozoa” (英語). Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences 363 (1496): 1529–1537. doi :10.1098/rstb.2007.2243 . ISSN 0962-8436 . PMC 2614232 . PMID 18192181 . https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rstb.2007.2243 .
^ Yamasaki, Hiroshi; Fujimoto, Shinta; Miyazaki, Katsumi (2015-06-30). “Phylogenetic position of Loricifera inferred from nearly complete 18S and 28S rRNA gene sequences” . Zoological letters 1 . doi :10.1186/s40851-015-0017-0 . ISSN 2056-306X . PMC 4657359 . PMID 26605063 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4657359/ .
^ DONG, XI-PING; BENGTSON, STEFAN; GOSTLING, NEIL J.; CUNNINGHAM, JOHN A.; HARVEY, THOMAS H. P.; KOUCHINSKY, ARTEM; VAL’KOV, ANATOLY K.; REPETSKI, JOHN E. et al. (2010-11). “The anatomy, taphonomy, taxonomy and systematic affinity of Markuelia: Early Cambrian to Early Ordovician scalidophorans” (英語). Palaeontology 53 (6): 1291–1314. doi :10.1111/j.1475-4983.2010.01006.x . ISSN 0031-0239 . https://www.researchgate.net/publication/280046620_The_anatomy_taphonomy_taxonomy_and_systematic_affinity_of_Markuelia_Early_Cambrian_to_Early_Ordovician_scalidophorans .
^ Ortega-Hernández, Javier (2015-10-05). “Lobopodians” (English). Current Biology 25 (19): R873–R875. doi :10.1016/j.cub.2015.07.028 . ISSN 0960-9822 . PMID 26439350 . https://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(15)00831-3 .